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ドイツ証券取引所(Deutsche Börse)、米ISSを買収。ESG投資やインデックス部門の強化目指す。ライバルのMSCIやFTSE Russellに対抗(RIEF)

2020-11-19 17:49:42

DB00111キャプチャ

 

 ドイツ証券取引所(Deutsche Börse)は、米議決権行使助言会社ISSを買収すると発表した。同社株式の80%を現株主のジェンスター・キャピタル (Genstar Capital)から取得することで合意した。取得額は22億7500万㌦(約2370億円)とされる。 ISSは2018年にドイツのESG評価格付会社イーコム・リサーチ(oekom research AG)を傘下に収め、ISS ESGとしてESG評価業務を強化しているが、今回はISSを丸ごとドイツ証取が飲み込むことになる。

 

 ドイツ証取は、「今回のグローバル市場でのパートナーシップは、グローバルなESG投資の将来的な成長のための機会を現実化するために、コーポレートガバナンス、ESG評価、データ分析等でのリーダーとなる道を拓くもの」と強調している。ISSの買収で同証取は今後の投資市場でのメガトレンドの一つに積極的にコミットすることになると宣言した。

 

 ISSは4000以上の顧客をグローバルに抱える世界のリーディング議決権行使助言会社。また2000以上の資産運用機関との取引がある。ISS自体はこれまでも、過去10年で4回も所有権が変わっており、ドイツ証取の傘下に入ることで資本力を強化できる。業務や調査研究の独立性は引き続き維持する。ISSのCEOのGary Reteln氏は引き続き業務を担当するほか、今回の買収に際しても自ら投資に加わっているという。

 

 ジェンターキャピタルは残りの20%を引き続き保有する予定。ジェンターは2017年にISSを7億2000万㌦で米プライベートエクイティのべスター・キャピタル・パートナーズから買収した。今回の転売で3倍以上の利益を得ることになる。買収は規制当局の認可を前提に21年前半に完了する計画としている。

 

 ドイツ証取は傘下に、株価指数のDAXやストックス(STOXX)などを運営する情報サービス会社のコンティゴ( Qontigo)を抱えている。ISSをグループに迎えることでESG分野の株価指数等の開発にも力を入れる考えだ。

 

 株価指数やインデックス市場では米MSCIが最大のライバル。実は前所有者のベスター・キャピタルは、2014年にISSを米MSCIから買い取った経緯がある。つまり、その前の所有者はMSCIなのだ。今回のドイツ証取の戦略は、グローバルなESG市場において、MSCIを念頭に置いた側面もあるとみられている。

 

 ドイツ証取は今回の買収によって、米市場に強いISSを手に入れることで、欧州に強い同証取とのシナジー効果が高まり、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースで、2023年までに1500万ユーロ(約19億円)のプラス効果が期待できるとしている。欧州市場でのライバルであるロンドン証券取引所保有のFTSE Russellとの競合でも優位に立つ狙いがある。

 

 ドイツ証取CEOのTheodor Weimer氏は「ISSはグローバル市場において、ガバナンスサービスのほか、独自のデータ・分析・評価の提供で高い評判を世界中で得ている非常に成功した企業だ。ESGデータ評価業務でもリーダー企業の一つ。そのESG評価力とデータ分析力をドイツ証取のビジネスモデルとリンクすることで、補完的な連携となり、グローバルなESG分野のリーディング企業としての展開につながる」と買収の意義を強調している。

https://www.deutsche-boerse.com/dbg-en/media/press-releases/Deutsche-B-rse-acquires-leading-governance-ESG-data-and-analytics-provider-ISS-2343868