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韓国公的金融機関、石炭火力向け投融資の一方で、グリーンボンド発行は「ダブルスタンダード」。韓国NGOが韓国輸出入銀行などを批判。日本の公的金融機関も似た構造では?(RIEF)

2018-02-02 07:00:41

Kepco3キャプチャ

 

   韓国の気候NGO「 Solutions for Our Climate (SFOC)」は、韓国輸出入銀行(KEXIM)などの同国の公的金融機関が、グリーンボンドを発行しながら、内外で石炭火力発電に投融資をする”ダブルスタンダード”を演じている、と批判するレポートを発行した。日本の日本政策投資銀行や国際協力銀行の石炭投融資も似た構造といえる。

 

 SFOCが批判の対象にあげたのは、KEXIMのほか、韓国開発銀行(KDB)、さらに近くグリーンボンド発行を予定している政府保有の韓国電力公社(KEPCO)など。KEXIMは2013年以来、合計約10億㌦のグリーンボンドを発行する一方で、海外で45億㌦分の石炭火力向け融資を積み上げている。

 

 KDBは2017年6月に3億㌦のグリーンボンドを発行した。一方で国内の石炭火力発電事業向けに16億6000万㌦を投融資している。KEPCOは17年11月にベトナムで Nghi-Son 2石炭火力発電事業への23億㌦の融資契約を締結した。同発電所は1.2GWの発電容量で2021年までに建設を完了する計画だ。同時に、KEPCOは既存の再エネ発電などのリファイナンス資金の調達のため、近く5億㌦のグリーンボンドの発行を計画している。

 

韓国公的金融機関の国内での石炭火力発電事業への融資状況
韓国公的金融機関の国内での石炭火力発電事業への融資状況

 

 SFOCの報告書によると、KEXIMなどの公的金融機関は2008年以降、内外の石炭火力発電事業向けに総額約170億㌦(約1兆8000億円)を投じてきた。これらのうち半分は海外への投資だ。国内では2017年に8つの石炭火力発電所が稼働され、さらに7件が建設途上にあるという。

 

 韓国国内で2008年以降に新規に建設が認められた石炭火力発電は20基にのぼっている。そのうち12基はKEPCOの子会社によって建設されてきた。

 

 SFOCは、石炭火力による温暖化加速と大気汚染への影響のほか、再生可能エネルギー発電のコスト低下の進展、世界的な石炭投資の減少などを踏まえ、公的金融機関は石炭火力への融資から距離を置くことが健全な金融的対応になる、と指摘している。

 

 現在、韓国の国会では、そうした温暖化対策に反する公的な投融資を規制するため、公的年金法改正のほか、韓国開発銀行法、韓国輸出入銀行法の改正案が審議されている。

 

2008 年以降、韓国で新規に建設された石炭火力発電所
2008 年以降、韓国で新規に建設された石炭火力発電所

 

 日本の公的金融機関である政策投資銀行、国際協力銀行も似た構造にある。政投銀は2014年に日本の金融機関として国内で最初にグリーンボンドを発行、その後も毎年、サステナビリティボンドを発行している。その一方で、福島県で石炭火力発電所建設へファイナンスを計画しているほか、東電を含む既存電力の原発融資も続けてきた。

 

 国際的なグリーンボンド基準であるグリーンボンド原則(GBP)では、石炭火力、原子力、大規模ダムは、グリーンボンドの資金使途としては認めていない。政投銀のグリーンボンドの資金使途はグリーンビルディング等へのファイナンスに使われたが、一方で同行は石炭火力や原子力向け融資にも力を入れており、「グリーン」と「ダーティー」を使い分けているとの批判もある。

 

 国際協力銀行は、グリーンボンドは発行してない。だが、インドネシアなどでの石炭火力発電所事業へのファイナンスで、日本の民間金融機関のリスクを補完する形で資金供給を続けている。海外のNGOらからは「日本は温暖化に逆行する石炭火力の輸出を国策にしている」との指摘を受けている。

http://www.forourclimate.org/ourwork/coal-finance