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スウェーデンの総合保険「Länsförsäkringar」、石炭火力事業企業への投資評価で「移行クライテリア」初導入。パリ協定への適合のための操業転換する場合に適用(RIEF)

2019-10-15 08:12:47

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   スウェーデンの総合保険会社のLänsförsäkringarは、投資先の化石燃料関連企業の除外規定を強化すると同時に、石炭火力発電事業については、パリ協定と適合する操業転換を目指す場合は投資を継続する「移行クライテリア」を設定した。石炭関連事業からの収入が5%~20%の企業が対象。投資基準に移行クライテリアを公式に導入した機関投資家は初めて。

 

 Länsförsäkringarはスウェーデンの相互会社で、傘下に23の地域保険会社を抱える。生損保両事業を行うほか、グループとして銀行も抱える総合金融業として知られる。

 

Länsförsäkringarのマーク
Länsförsäkringarのマーク

 

 同社はこれまで投資対象企業のうち、石炭関連事業については、収入に占める比率が20%までに限定し、それ以上の石炭関連事業収入のある企業は投資除外としてきた。今回、この規定を強化し、収入比率を5%までに厳格化した。

 

 その一方で、新規の5%基準と、従来の基準で適合していた収入20%までの間にある石炭火力発電企業のうち、パリ協定の「2℃目標」と自社の活動を整合化させるために、操業転換等を目指している企業については、投資を継続する「移行クライテリア」を新たに設定した。

 

 同社の責任投資部門の責任者であるKristofer Drieman氏は「 移行クライテリアの設定は、除外規定の強化よりも、ある意味で画期的なことだ」と強調している。

 

 設定したクライテリアは、同社自身の分析に加えて、国際的な移行評価のツールとして開発されている「Transition Pathway Initiative (TPI)」、「Science-Based Targets Initiative(SBTI)」なども活用して設定したという。

 

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 新クライテリアによる選別の対象は、同社が投資するすべての直接投資と、ファンドベースの投資に適用される。ただ、移行対象となる投資先の金融的インパクトがどれくらいになるかというデータの公表はしていない。

 

 同社の保有資産総額は25億ユーロ(約3000億円、今年初め時点)。このうちファンド投資の3億2690万ユーロを含む。

 

 Drieman氏は、同社の「現在の投資ポートフォリオはIPCCの1.5℃目標達成に適合する」と指摘している。一方で、「ポートフォリオ先の電力会社等、複数の高カーボン排出企業が、ポートフォリオ全体の最大の排出元であり、これらの排出量を最小化することが重要」と述べている。移行クライテリアは、こうした企業向けに、投資家としてのエンゲージメント行動の視点も加えて、設定することになる。

 

 今回の除外規定の強化で、現行の投資先企業171社が抵触し、投資引き揚げ対象となった。これ以外に、10社強がオイルサンド生産への関与で除外され、65社以上がたばこ事業と兵器事業、さらに国際条約違反等で除外された。

 

https://www.lansforsakringar.se/stockholm/other-languages/english/about-lansforsakringar/