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EU欧州委員会。SFDRの金融商品分類で現行の開示による分類に代え、3種類のカテゴリー分類提示。このうち「移行カテゴリー」の「除外規定」に化石燃料企業を含めるかで意見対立(RIEF)

2026-04-20 15:42:41

EU0012キャプチャ

 

   EU欧州委員会が「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」の改定案で示している「移行カテゴリー」での除外規定の扱いをめぐり、EUの金融市場参加者、投資家やNGO等の意見対立が表面化している。現行のSFDRは、ファンドなどの金融商品の環境・社会的配慮の程度を、情報開示の特性に応じて分類する手法だが、金融機関、個人投資双方に不満が多いことから、欧州委は、投資先のサステナビリティ・ESG度に応じたカテゴリー方式に改める方針だ。このうち、移行カテゴリーに盛り込まれる化石燃料関連企業・事業を投資対象外とする除外規定が論議を呼んでいる。

 

 2021年3月から実施されている現行のSFDRは、ファンド等の投資対象先の企業等の選考に際して、環境・社会的配慮を加味している(8条:ライトグリーン)、あるいはサステナビリティ重視の投資先に集中(9条:ダークグリーン)などに分け、それらの投資方針を示す開示内容に応じて金融商品を分類している。

 

 しかし、金融機関からは開示負担への不満が多く、一方の投資家からは開示内容の理解・比較が困難等の指摘が出ている。SFDRは事実上のラベル制度となっているため、開示の十分性をどうみるかで投資家の間で混乱を招き、グリーンウォッシングや不適切な販売のリスクを高めているとの批判も出ている。

 

 こうしたことから、欧州委員会が2025年11月に、オムニバス法案の一環として示した改定案では、開示によって分類する現行方式に代えて、投資先をサステナブル、トランジション(移行)、ESGベーシックの3カテゴリーに分ける方式を示している。同委は先週まで、同案に対する関係機関等からのパブリックコメント期間を設けて、意見徴求を行った。

 

Eucommission 2026-04-19 001708

 

 SFDRのカテゴリー分類への変更によって、金融機関による金融商品開示については、投資先の企業がサステナビリティ要因に及ぼす主要な悪影響をどのように考慮しているかを詳細に開示する必要がなくなる。また個人投資家を対象とした開示も簡素化され、指標の数が減り、テンプレートも短縮される。

 

 新たなカテゴリー分類のうち、「サステナブル・カテゴリー」では、高いサステナビリティ基準をすでに満たしている企業や事業への投資など、サステナビリティ目標(例:気候、環境、または社会的目標)に貢献する金融商品となる。現行分類でいえば、9条の「ダークグリーン」に相当する。同カテゴリーの除外規定では「タバコや禁止兵器に関与する企業、人権侵害を行っている企業、化石燃料や高排出エネルギー活動に従事する企業、または化石燃料事業を拡大している企業への投資を排除する」としている。

 

 「トランジション・カテゴリー」は、まだサステナブルではないが、信頼できる移行プロセスにある企業やプロジェクトへ投資を誘導する商品、あるいは気候、環境、社会的分野などの改善に寄与する投資としている。もう一つの「ESGベーシックカテゴリー」は、多様なESG投資アプローチを取り入れているものの、上記の「サステナブル」「トランジション」の両方のカテゴリーの基準を満たさないその他の商品、としている。

 

 「トランジション」と「ESGベーシック」の両カテゴリーも、除外規定を設定しており、現行の分類比では、両カテゴリーは8条(ライトグリーン)を切り分けた格好ともいえる。いずれのカテゴリー商品も、投資の大部分(ポートフォリオの70%)が選択されたサステナビリティ戦略を支援し、かつ有害な産業や活動への投資を排除していることを確保する必要がある、としている。

 

 金融機関等が問題視しているのは、これらのカテゴリー化のうち、「トランジション」カテゴリーにおいて設けられる除外規定だ。同規定では「タバコや禁止兵器に関与している企業、人権侵害が認められた企業、石炭から多額の収益を上げている企業、または化石燃料事業を拡大している企業」の除外を明記している。「ESGベーシック」でも除外規定の適用を示し、「石炭から多額の収益を得ている企業の除外」をうたっている。

 

 ある金融機関は、この除外規定がそのまま適用されると、ブルームバーグ・グローバル・アグリゲート・コーポレート指数の約12%、JPモルガン・エマージング・マーケッツ・ベンチマーク指数の企業セグメントの32%の企業が、トランジションカテゴリーの金融商品から除外される可能性があると指摘している。

 

 また大手エネルギー企業のエネルやトタルエナジーズを含む化石燃料関連企業等は、同提案が欧州の「エネルギー安全保障」を脅かすとの批判意見を欧州委に送った。これに対して法律NGOのクライアントアース(ClientEarth)は、グリーンウォッシュを避けるためには、提案されている各カテゴリーに盛り込んだ化石燃料の除外規定を維持し、さらに「ESGベーシック」カテゴリーでの除外規定をさらに拡大するよう求めている。

 

 資産運用大手のアムンディは「トランジションカテゴリーにおいてEUベンチマークの一つの気候移行ベンチマーク(CTB)の要件を超える追加的な除外(新規の石油・ガス関連など)を体系的に適用することは、炭素集約度の高いセクターにおける企業の移行を支援する能力を低下させる」として、除外規定に反対する姿勢を示した。

 

 米プルデンシャル・ファイナンシャルのグローバル資産運用部門であるPGIMは、EUベンチマーク基準のCTBや、同じ基準のパリ協定整合ベンチマーク(PAB) 等の使用に反対を表明し、これらの基準について「信頼性に欠ける」と批判。「これらの要件の実施は金融市場参加者によって大きく異なり、混乱やグリーンウォッシングの非難を招く恐れがある」とした。

 

 同社によれば、現行の基準による除外対象企業にはBHPやパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー等が含まれるが、これらの企業はそれぞれ「気候変動への移行において優れた実績を示している」「信頼できる移行経路にある」と評価している。

 

 一方、仏資産運用会社ミロバ(Mirova)は、SFDRは「比例的なアプローチ」を採用すべきだと提案した。これは、一定の閾値を超えるすべての新規化石燃料プロジェクトを必ずしも除外するのではなく「科学的根拠や移行経路に沿って、エネルギー種別やバリューチェーン上の位置付けによって区別し、上流部門の活動にのみ(除外可否の)焦点を当てる」ものとしている。

 

 EUの金融界の多くが欧州委の改定案に異を唱えるのは、「トランジション(移行)」の概念・スコープについて、欧州委と金融界の間で違いがある可能性もある。EUのサステナブルファイナンス・タクソノミーで欧州委は「トランジションタクソノミー」を設けているが、同概念は、技術的な理由等で、サステナビリティのレベルには達していないが、社会的必要性があるもの、といった意味で「次善的」に分類する形としている。

 

 これに対して、日本のGX政策などでは、現行の化石燃料関連事業などが課題として抱える「技術的な理由」の要件をクリアするために、水素・アンモニア混焼やCCS等の技術開発を官民ファイナンスで促すことを「トランジションファイナンス」と位置付けている。EUでも化石燃料関連産業や金融界を中心に「日本型」のトランジションファイナンスを求める動きが出ている。

 

 ただし、GX等の日本型は、技術リスクが大きく、そのリスクを政策でカバーするとしているが、技術の発達は政策支援だけでは克服できない可能性があり、金融商品にそうした事業・企業を組み込むと、投資家や消費者に政策・技術リスクを転嫁することになりかねない。SFDRの改正作業の行方によっては、日本のGX政策の妥当性が問われる可能性もある。

 

 除外規定の取り扱い以外では、保険会社のアクサは、EUの発行体はEUの気候法に準拠する必要があるため、自動的に適格とみなされる可能性があるとしつつ、EU域外のソブリン債発行体(日本の国債など)を評価するための方法論を策定する必要があると指摘した。

 

 また金融機関に対し、事業体レベルでの「主要な悪影響」の報告を義務付けるべきか否かについても意見が分かれている。同要件についても、完全な削除を主張する意見が示される一方で、NGOのWWFや、仏保険会社MAIF、ミロバなどは、限定的な事業体レベルでの報告は維持すべきと主張している。

 

 MAIFとEurosifは、社会的に持続可能な投資に関する基準の策定を求めた。さらに、CSRD(企業持続可能性報告指令)などの他の規制との「整合性」を確保するよう求める声も示された。SFDRの3カテゴリー分類を選択しない金融商品に対する最低限の開示要件を求める意見も多く出た。Eurosifは、EU域外の管轄区域における投資に対して、SFDRの基準を適用する方法に関するガイダンスの設定を求める意見を出した。

                          (藤井良広)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52025PC0841

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/qanda_25_2737

https://www.europarl.europa.eu/legislative-train/package-simplification-business/file-revision-of-the-sustainable-finance-disclosure-regulation