イラン戦争開始後2カ月間で、石油・ガス価格高騰で日本の国民・企業の追加負担額は約1兆3000億円。国民一人当たり1万円強。日本政府の化石燃料依存の補助金政策が要因。NGO分析(RIEF)
2026-05-01 00:44:40
(写真は、日本政府の化石燃料依存政策をアジアに拡大する計画に反対を表明する350.org Japanのメンバーたち=同団体サイトから引用)
米国とイスラエルによるイラン攻撃後の2カ月間(60日)で、世界的な石油・天然ガス価格の高騰によって、日本の一般市民や企業が合計で1兆3000億円前後の追加的コストを負担した、との推計結果が示された。環境NGOの350.orgが分析した。同コスト全体を国民一人当たりの負担としてみると、1万円強になる。同団体は「市民が生活費の高騰に苦しむ中、日本政府は、人々から集めた税金で化石燃料産業に巨額の補助金を出している。このことは、国際情勢が急変するたびにエネルギー危機に陥る、脆弱な社会経済システムを継続することにほかならない」と指摘。日本政府に対して、化石燃料や原子力への補助金を撤廃し、安価で早期導入が可能な省エネルギーと再生可能エネルギーの加速を求める、としている。
今回の350.orgの分析では、イラン戦争開始後の石油・ガス価格の加重平均値に、国ごとの消費水準と、価格上昇に伴う需要減少などの不確実性を考慮した調整を加味して、価格高騰による損失を算出。そのうちの日本の分析を示した。ただ、化石燃料価格の上昇に伴う肥料や食料価格の高騰、経済生産高や雇用の減少、さらに化石燃料価格の変動によって引き起こされる広範なインフレなどの、より大きく間接的な波及効果は推計に含まれていない。
このため同団体は、現実の経済的損失の総体は、石油・ガス価格の変化による直接的な損失よりもはるかに大きくなると考えられる、としている。推計では、イラン戦争による世界的な石油・ガス価格の高騰により、日本の市民や企業が、戦争開始後の60日間で負担した追加的な損失額は、少なくとも1兆2900億円~1兆3600億円になると推計している。
国際NGOの350.orgは、イラン紛争の世界的な影響については、石油・ガス価格の上昇によって、2026年末までに世界経済全体に対して6000億㌦(94兆円)から1兆㌦(157兆円)以上の損失が生じる可能性があると推計している。同団体の分析は、エネルギー価格の高騰に加え、各国政府が毎年12兆㌦の化石燃料補助金や、エネルギー企業に対する税制優遇措置等を、市民や企業への税金から支援している間接的損失、さらに化石燃料の過剰使用に伴う健康被害や気候変動加速による損害等の負担を含めている。
350.org Japanのジュニア・フィールド・オーガナイザー、飯塚里沙氏は「私たち市民は化石燃料中心のエネルギーシステムのツケを払わされている。政府は化石燃料や原子力に対してはあらゆる支援制度を通じて補助金を注ぎ込んでいるのに、省エネと再エネには冷淡。電気代も交通費も食費も、もっと再エネを導入していたなら、イラン危機の影響をより小さく抑えられていたはず。化石燃料価格の高騰によって深刻な影響を受けている市民に対して支援を行うことは急務だ」と指摘している。
同団体と日本の気候活動家たちは29日、こうした分析に基づき、政府に物価高騰対策として、エネルギー政策の視点を、現行の化石燃料と原子力主導から省エネ・再エネへと転換することを求める市民アクションを行った。同アクションは、世界規模での新キャンペーン「グレート・パワー・シフト(The Great Power Shift)」の一環で、同日、350.orgのアジア、パシフィック、ラテンアメリカ、アフリカ、ヨーロッパ、北米を含む世界中のチームおよびパートナー団体が一斉に、「脱化石燃料」を求める活動を開始した。https://350.org/the-great-power-shift/
350.org Japanのキャンペーナーの伊与田昌慶氏は「高市政権では(イラン紛争対策として)、ガソリンに対する補助金や低効率な石炭火力発電の再活用などの方針が示されたが、このような一時しのぎでは、今後も幾度となく日本でエネルギー危機が繰り返されることになるだろう。サンタマルタの脱化石燃料の有志国による国際会議では脱化石への政治的意思が示されたが、これに招待されなかった日本政府は、化石燃料の利用継続を前提とした従来のエネルギー基本計画を見直すべきだ」と指摘している。
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一方、高市早苗首相が、5月1日から5日にかけてベトナムとオーストラリアを訪問することを受け、内外の30の市民団体・NGOは30日、米国とイスラエルによるイラン攻撃によって引き起こされた世界的なエネルギー危機を、日本政府がアジア太平洋地域全体で化石燃料推進の政策を推し進めるために利用しているとして、「高市首相の下、日本はアジア太平洋地域を化石燃料の拡大と軍事化という危険な道へと導いている」と非難する声明を打ち出した。

声明では、各団体は、高市首相の今回の地域訪問を、エネルギー安全保障を損なう「アジア広域エネルギー・資源レジリエンス・パートナーシップ(POWERR Asia)」を推進するための化石燃料販売の旅であると批判している。POWERR Asiaは、日本が主導する100億㌦規模のイニシアチブであり、同地域向けに年間最大12億バレルの原油に加え、LNG、バイオ燃料、原子力エネルギーの確保を約束する内容とされる。
高市首相は先月オンラインで開催した「アジア・ゼロエミッション・コミュニティ(AZEC)プラス」首脳会議で、POWERR Asiaイニシアティブを発表した。NGOらはこの日本政府の新たなイニシアティブについて、「日本はAZECを、脱炭素化を装って化石燃料技術を推進するプラットフォームとして利用してきた。AZECには、東南アジア諸国連合(ASEAN)のほとんどの国に加え、オーストラリアも参加している。その名称にもかかわらず、AZECの下で結ばれたパートナーシップの30%以上は化石燃料関連であり、(今回の)『POWERR Asia』の発表により、日本はAZECを地域の脱炭素化という本来の目的からさらに遠ざけ、より多くの化石燃料の確保に焦点を当てようとしている」と批判している。
NGOらはそのうえで、高市氏と日本政府に対し、「(化石燃料依存の継続は)リスクの高い化石燃料への依存を悪化させるだけである、信頼性が低く高コストな化石燃料への支援を打ち切る」よう求めている。化石燃料および化石燃料ベースの技術に対する公的資金提供を中止し、その資金を地域密着型の再エネやエネルギー効率化への助成金として振り向け、イランでの戦争を終結させるよう外交的圧力をかけることも要求している。
NGOらは、日本政府の「POWERR Asia」発表が、コロンビアのサンタマルタで開いた化石燃料脱却のための国際会議と同時期に行われたことにも懸念を示している。同会議には、脱化石燃料を目指す「有志国」50カ国以上が、迅速かつ公正で公平なエネルギー転換を実現するために集まった。https://rief-jp.org/ct8/165969?ctid=72
日本政府は同会議に「招待されなかった」としている。NGOらは、日本政府のエネルギー政策は、LNGの拡大や、CCS、化石燃料との混合燃焼によるアンモニア・水素、バイオ燃料といった「偽りの解決策」を推進することで、アジアのエネルギー転換を阻害している、と指摘している。
(藤井良広)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_takaichi/pageit_000001_02904.html
https://world.350.org/ja/press-release/20260430/?r=JP&c=AS
https://350.org/wp-content/uploads/2026/04/Out-Report-Pocket-Full-Report.pdf
https://drive.google.com/file/d/1MlrBlPpVldC7dO9BAzFDSwU_Ny0yUNWi/view

































Research Institute for Environmental Finance