米環境NGO。JERA向け米テキサス州のLNG事業へのMUFGとみずほの融資が、大規模事業の環境・社会的配慮求める「赤道原則」に抵触、と指摘。三井住友は2年前に同原則を離脱(RIEF)
2026-05-26 20:04:16
(写真は、リオ・グランデLNG開発事業の完成予想図=事業者のネクスト・ディケイド社のサイトから引用)
米環境NGOは、米テキサス州リオ・グランデで進められているLNG開発事業向けに、三菱UFJ銀行(MUFG)とみずほ銀行の日本の大手2行が手掛ける融資が、大規模プロジェクトファイナンスでの環境・社会的影響の事前評価を定める銀行の自主基準の「赤道原則」のほか、自社のグループ方針も守っていないと指摘、両行に改善を申し入れた。開発するLNGの日本の買い手企業はJERA。NGOによると、同開発事業の建設予定地が先住民族の聖地と重複しているのに、同原則が定めるステークホルダーエンゲージメントを実施していない点等を問題視している。三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)も融資団に加わっているが、同社は2年前に同原則から離脱している。
申し入れたのは環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN:米サンフランシスコ)。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っている。2005年10月より、日本代表部を設置している。
リオグランデLNG(Rio Grande LNG)事業は、米国とメキシコの国境に近いメキシコ湾岸付近に大型LNGターミナルを建設し、国内のPermianその他のガス産地からの原料の天然ガスを受入れ、液化して輸出する計画だ。開発会社はネクスト・ディケイド(NextDecade Corporation)社。計画では年産約2700万㌧級の複数トレインを構築し、今年の後半にガスの導入を始め、2027年前半には最初のLNG生産を実現する予定としている。
メキシコ湾岸一帯では、同様のLNG開発事業計画が進んでいる。このうちテキサス州とルイジアナ州などでは、現在、20以上のLNGターミナル事業の巨大集積化が進行中。稼働中のLNG基地も多く、製油所や石油化学施設の建設も進んでいる。エネルギー開発事業者の集中とともに、事業へのファイナンスを提供する金融機関も、米銀だけでなく、国際的な主要行が参加している。

巨大LNGターミナル事業計画は、広範囲にわたって環境・社会的影響が懸念される。このためこれらの計画をファイナンス面で推進する中核銀行の米銀大手シティバンクは、バンク・オブ・アメリカ(BOA)、JPモルガンチェース、ウェルスファーゴとともに、2年前(2024年)に、それまで署名していた「赤道原則」から集団離脱をした。この時、日本勢では、SMBCだけが米銀と歩調を合わせて原則から離脱し、MUFGとみずほの2行は今も原則にとどまっている。
RANによると、リオ・グランデLNG輸出ターミナル事業への日本の銀行の融資については、公開情報や、リオ・グランデ・バレー地域の先住民族のカリゾ・コメクルド族を含む地域コミュニティから提供された情報に基づいて、RANが現地を調査した結果を踏まえて確認したとしている。リオ・グランデLNGと隣接するテキサスLNG施設(2026年中旬に最終投資決定(FID)達成予定)は、カリゾ・コメクルド族の聖地と建設予定地が重複している。
RANの調査では、事業者のネクスト・ディケイド社が、利害関係者である地域コミュニティに対して、赤道原則の「ステークホルダー・エンゲージメント」(原則5)で定めている多くの要件を満たしていないことが明らかになったとしている。
その主な点は、①適切な方法での継続的なコンサルテーションの機会を提供していない②適切に行われた環境・社会的評価の結果が未だ開示されていないのに、現地の整地作業が完了している③赤道原則が参照する国際金融公社(IFC)パフォーマンススタンダードでは、先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)の取得を事業者に確認することを求めているが、MUFGとみずほは、事業者がカリゾ・コメクルド族からFPICを取得せずに建設を進めていることを「黙認」した形になっている――等としている。
またRANは、2行によるネクスト・ディケイド社向けの融資額についても公表した。対象事業のリオ・グランデLNGの第1フェーズ、1〜3号基(2023年)はMUFG(16億4292万米㌦)、みずほ(12億2292万米㌦)、第2フェーズ準備(2024年)MUFG(1億9000万米㌦)などとなっている。さらに、両行は融資に加えて、銀行団のタームローン債権者代理人や担保管理受託者、資本調達アドバイザー等の役割も果たしている。
RANは2年前の2024年にも内外のNGOと一緒に、日本の3メガバンクのほか欧州の大手銀行等合計11行に対して、メキシコ湾岸でのLNGターミナル事業の巨大集積化により環境・社会的負荷が増大することによる環境・社会面の影響が増大するとして、ファイナンスの停止を求める共同書簡を出している。https://rief-jp.org/ct7/146702?ctid=
また同年9月、リオ・グランデ・バレー地域のコミュニティ代表団とRANは共同でMUFG とみずほに対し、ネクスト・ディケイド社との関係において適切な人権デューデリジェンスを怠ってきたとして「ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)」を通じて苦情を申し立てている。ただ、これまでもMUFGなどの金融機関と対話を行っているが、現在においても解決に向けた進展はみられていない。
今回のMUFG、みずほの両銀行への申し入れは、同原則や社内の環境・社会的方針で、LNGインフラ等による環境・社会的汚染・被害への対応を明文化しながら、リオグランテ事業での対応では、それらに反する行動をとっているとして、原則に沿った対応を求めている。
NGO側の対応も、実効性が問われている。SMBCのように、米銀と共に同原則から離脱した銀行に対しては、「原則の規定を守っていない」との論法で改善を申し入れることはできていない。本来は、これらの「離脱銀行」に対しても、原則への早期復帰を求めるとともに、原則の規定を「準用」して、現地の先住民対策等を事業者に講じるよう、他の2行と同様の要請をするべきだろう。そうしないと、「原則から離脱」することが、NGOの追及を免れる「よりよい措置」だと評価されることになり、MUFGとみずほも、「離脱」の道を辿りかねない。
RANの「責任ある金融キャンペーナー」(日本担当)の麻生里衣氏は「RANはこれまで長年にわたり、メガバンクに対し社会や環境に重大な影響を及ぼす企業グループについて問題提起を行ってきた。しかし、メガバンクによるこのような化石燃料企業への資金提供の継続を見れば、彼らの社会や環境へのコミットメントがどれほどの意味を持つのか疑問だ。銀行によって繰り返される資金提供が、これら企業の問題ある事業活動の継続を可能にしている。その代償を払うのは、現地で生活する地域コミュニティの人々なのだ」と批判している。
(藤井良広)

































Research Institute for Environmental Finance