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マレーシア大手銀行CIMB、2040年までに投融資ポートフォリオから石炭関連事業の除外を宣言。パリ協定の「1.5℃」目標との整合性を重視。東南アジアの大手銀行では初めて(RIEF)

2020-12-11 00:39:58

CIMB001キャプチャ

 

 マレーシアの大手銀行CIMBは、2040年までに投融資ポートフォリオから石炭関連事業を除外すると発表した。パリ協定の「1.5℃」目標の達成に適合するための対策の一環と位置付けている。そのため2021年から新規の石炭鉱山や同火力発電へのファイナンスの停止を段階的に始める。ただ、すでにコミットしているものは対象外。40年までの脱石炭宣言はマレーシアだけでなく、東南アジアでも初めて。石炭火力依存の高いアジアでも「脱炭素ファイナンス」が広がるとの期待が出ている。

 

 CIMBは昨年11月に、NGO等との連携で「Coal Sector Guide 」を公表した。同ガイドが2040年の脱石炭方針を提示していた。マレーシア中央銀行のBank Negara Malaysia(BNM)も同行の行動を、同国の金融セクターの気候レジリエンスを高めるものとして評価している。

 

 CIMBは2021年から、脱石炭化を段階的に進めると同時に、石炭に依存している電力会社等が、発電に占める石炭火力のウエイトを削減するための多様化戦略をとれるよう支援策を開始する。「石炭から他の電源」への転換をファイナンスすることで、新たな投融資機会を得ることを目指す。

 

 

インドネシアの石炭鉱山事業
インドネシアの石炭鉱山事業

 

 CIMBは過去10年の間に、主に石炭関連事業への債券投資で約26億㌦を投資してきた。今年7月には、地元で議論を呼んでいるインドネシアのジャワ第9と10の発電事業への融資契約に署名している。今回のガイドに基づき、これらの投融資をどれ位の期間で削減するかの全体のロードマップはまだ不明。グループ会長のDatuk Mohd Nasir Ahmad氏は「CIMBのサステナビリティ原則はスタートしたばかりなので、期間を持って対応したい」と慎重な言い回しをしている。

 

 今回のCIMBの脱炭素への転換は、ガイド作成を含めて、インドネシアとマレーシアの環境NGOらの同行への働きかけが大きい。環境グループは10月にはCIMBのほか、マレーシア最大手のメイバンク、RHBバンクを相手に、「新規石炭事業融資の停止」を求める新聞広告を掲載するなどのキャンペーンを展開してきた。

 

 米シンクタンクの「Institute for Energy Economics and Financial Analysis (IEEFA) 」のTim Buckley氏は、CIMBは発展途上国でグローバル活動を展開している大手銀行で初めて、自らのサステナブルな目標のコア活動として、脱石炭の戦略にコミットした銀行といえる。同行の対応は他のマレーシア銀行だけでなく、東南アジアの主要行にも、自らの投融資活動を見直させることにつながる」と期待を示している。

 

 WWFマレーシアのCEOのSophia Lim氏は「マレーシアの銀行は徐々に、国連支援の責任投資原則(PRI)などのグローバルスタンダードやイニシアティブへコミットメントをしている。サステナビリティを推進するうえでは、極めていい兆候だ。同時に、科学ベースの知見に基づく市民団体がサステナブルファイナンスのベストプラクティス等を推進する役割をはたしていることも再確認された」と指摘。途上国でもサステナブルファイナンスの展開が進んでいることを強調している。

 

  マレーシアは天然ガス等の化石燃料資源を豊富に抱えていることから、グリーン事業についても独自のタクソノミーの制定を進めるなどの動きもしている。このため、日本の経産省等の中にはアジアでの「化石燃料維持同盟」の対象国として働きかけを強めているとされる。

 

https://www.cimb.com/en/newsroom/2020/cimb-makes-progress-in-its-journey-towards-a-low-carbon-economy.html