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フランス下院議会、気候変動対策として国内近距離航空便廃止法案可決。代替の鉄道便で2時間30分以内の航空便は廃止へ。当初案「4時間以内」から大幅短縮。注目される上院審議(RIEF)

2021-04-12 22:47:04

airfranceキャプチャ

 

 フランス議会(下院)は、気候変動対策の一環として近距離の国内航空便の廃止法案を可決した。代替となる陸上の鉄道便で2時間30分以内の場合が対象となる。当初案では4時間以内としていたが、鉄道移動で4時間となるとフランス国内を出てしまうケースが多く、国内便の定義から外れることから短縮された。同法案が成立すると、他の先進国でも近距離航空便の見直し議論が起きそうだ。

 

 法案は先週10日に下院の第一読会で可決、上院に送付された。上院でも可決すると、再度、下院が最終投票して成立する手順となる。

 

 法案が成立すると、フランスの首都パリからだと、ナント、リヨン、ボルドー等の観光地への国内航空便は廃止対象となる。ただ、国際便等によるトランジットでの「パリ経由ボルド―」等のフライトは引き続き認められる。

 

 仏政府はパリ協定の目標達成に向けた国内気候対策を強化している。今回の法案は昨年5月、新型コロナウイルス感染拡大で航空機利用が一時的に低迷した際、仏政府がエールフランスKLMに対して、経営支援策として70億ユーロを融資することと引き換えに、気候対策として近距離便の廃止を提案、エールフランス側の承諾を得ていた。https://rief-jp.org/ct12/102252

 

 エールフランスKLMは、2004年にフランスのエールフランスと、オランダのKLMが統合した持株会社。2社の3部門から成り立つ欧州最大の航空会社グループ。

 

 政府とエールフランスの交渉段階では、廃止対象となる鉄道便の時間は2時間30分以内としていたが、提出法案では代替の鉄道便は4時間以内の区間と緩和されていた。エールフランス側のロビー活動が効いたのかもしれない。

 

 だが、下院での法案審議の過程で、4時間以内だと対象となる近距離国内便があまりなく、政府との当初の交渉条件とそぐわない、気候対策効果も期待できない等の理由から、当初の「2時間30分以内」に修正された。今後の上院審議で、エールフランス側が巻き返し工作にでるかどうかが注目点だ。

 

 一方で、欧州の航空各社はこれまでも近距離航空便での過当競争を続けており、それが経営に影響を与えてきた側面もある。また、フランスとしてはEUの盟主として、欧州域内の運輸ネットワーク全体の脱炭素化の加速を主導する政治的な狙いもある。同法案が成立すると、EUの他の国だけでなく、他の先進国でも近距離航空便の見直し議論が起きそうだ。

 

 法案が条件とする「2時間30分」の鉄道移動時間を、日本に適用すると、東京―大阪間は新幹線で2時間22分で移動できるので、航空便の同区間は「廃止」対象となる。日航、全日空にとっては、同区間はドル箱路線なので猛反対だろう。だが、国別温暖化対策貢献(NDC)目標を強化するうえで、近距離で移動手段が重複する区間において、もっとも低炭素な移動手段を優先する政策の検討は日本でも必要だろう。

https://www.euronews.com/2021/04/12/french-lawmakers-approve-ban-on-short-domestic-flights-to-cut-carbon-emissions