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カナダ、2030年の温室効果ガス排出目標、3日前の「36%削減」から一転して「40~45%削減」に強化。国内の石油産業保護と国際協調とのバランス意識か(RIEF)

2021-04-23 14:31:52

Canadaキャプチャ

 

  カナダのトルドー首相は22日の「気候リーダーズサミット」で、パリ協定の同国の温暖化対策貢献(NDC)目標として、2030年までに温室効果ガス排出量を05年比で40~45%削減に改定すると発表した。従来目標は30%だったが、19日に発表した同国の予算案では36%削減としていた。同首相は「カナダは気候変動に対するグローバルな闘いに取り組む各国と協調し、よりクリーンでより豊かな未来の建設に取り組む」と宣言した。

 

 (写真は、「気候リーダーズサミット」にオンライン参加したカナダのトリュドー首相)

 

 カナダは3日前に公表した2021/22年度予算案で2030年の温室効果ガス削減目標を36%削減としていた。サミットで急遽、「野心的な目標」に切り替えたのは、国内向けの足元の目標と、対米関係を含めた国際的な中期目標の設定とを使い分けたとの見方もできる。http://rief-jp.org/ct5/113413?ctid=71

 

 同国の首相府は「米国との改定米加パートナーシップのロードマップと『気候野心に関するハイレベル大臣会合』を含め、米国や他の国々と緊密に連携していく」と指摘、米加連携を強調した。カナダはアルバータ州で産出するオイルサンドからの石油の米国向け供給網を拡大するため、「ライン3」と「キーストンXLXLパイプライン」事業を展開しようとしている。トランプ前政権時代に、建設認可を得ていたが、バイデン大統領は就任当日に、「キーストン」の認可取り消しの大統領令に署名している。

 

 オイルサンドは通常の石油よりもCO2等の汚染物質排出量が多いため、内外の環境団体等がパイプライン建設反対の運動を続けている。一方、カナダのアルバータ州ではオイルサンド開発は州の重要産業であり、事業維持は最大の課題。年内に総選挙を控えるトリュドー政権にとって、都市部の州での気候変動対策のアピールと、エネルギー州での基盤産業の尊重との両建てが難しい局面になっているといえる。

 

 気候サミットでトリュドー首相は、2050年までに、ネットゼロを目指す法律を制定するとも述べた。国内のエネルギー対策では、石炭火力発電の段階的廃止などに取り組むとしたほか、20億本の植林計画で、温室効果ガスの吸収源の強化も進めるとした。

 

 カナダはこれまで2015年から2019年にかけて、気候行動とクリーン成長分野に約600億カナダ㌦(約5兆2000億円)を投じてきた。コロナ禍の2020年10月以降、グリーンリカバリーに536億カナダ㌦(約4兆6000億円)を投じている。

 

https://pm.gc.ca/en/news/news-releases/2021/04/22/prime-minister-trudeau-announces-increased-climate-ambition