米ユナイテッド航空、バイオマス原料のSAF（持続可能なジェット燃料）だけで試験飛行。2つのエンジンのうち1つにSAF満タンで、シカゴーワシントンを飛行。SAF普及をアピール（RIEF）
2021-12-02 17:26:42
航空会社最大手の米ユナイテッド航空は1日、バイオマス等から作られたSAF（持続可能なジェット燃料）だけで運航できる旅客機による試験飛行を公開した。今回は2つのエンジンのうち1つをSAFのみで、もう1つを通常のジェット燃料で運航させた。SAFだけでもエンジンを動かせることを立証することで、100%SAF化の可能性を示した形だ。航空機のカーボンフリー化に向けた取り組みも急ピッチで進んでいる。
今回の試験飛行は、ユナイテッドのほか、航空会社のボーイング、 GEとSafran Aircraft Enginesのジョイント企業であるCFM International、SAF開発のバイレント（Virent）、SAF販売会社のWorld Energyのパートナーシップで実現した。政府関係者、航空関係者、報道陣、NGOら100人超が招待された。
1日、ボーイングの小型機「737MAX」は、招待客を乗せて、シカゴーワシントン間を飛行した。使用したSAFは国際認証機関のASTMインターナショナルの認証付き。航空機に利用するバイオ燃料の利用率は最大50%に定められ、通常、航空各社は従来からの石油由来のジェット燃料にSAFを10～50%混ぜて使うケースが多い。
今回は2つのエンジンをSAFとジェット燃料とで満たしたため、合計するとSAF50%だが、SAFをフル満タン（500ガロン）にしたエンジン1基は100%SAFで稼働。SAFのみでもエンジンを問題なく動かせることを示した。ユナイテッドではもう一つのエンジンをSAFに切り替えても問題なく運航すると明言している。
ユナイテッドCEOのScott Kirby氏は「われわれは気候変動対策の最前線をリードしている。今回のSAF航空機の飛行は、航空産業の脱炭素化にとってのマイルストーンになっただけでなく、代替燃料の製造・購入需要の増大を受けて、人類の最大の課題に対処する企業の役割をスケールアップしインパクトを高められることも証明した」とコメントした。
今回使用したSAFを開発したバイレントは、米石油大手マラソン・ペトロリアムの子会社でバイオ燃料開発を進めている。航空機からのCO2排出削減のために、電気飛行機や水素エンジン飛行機等の開発も並行して進んでいるが、SAFの場合、既存エンジンのままで燃料転換だけで運航が可能になる手軽さが魅力とされる。
航空機からのCO2排出量は世界の温室効果ガス排出量の2%を占める。国際航空運送協会（IATA）は10月の年次総会で、同団体として初めて2050年の脱炭素目標を掲げ、SAFへの切り替えを移行戦略の柱に据えた。IATAが示したロードマップでは、現在、ジェット燃料に占めるSAFの割合は1%未満だが、2050年には65%にまで増やす計画を示した。
これまでSAFの普及が十分に進んでこなかった理由では、石油由来のジェット燃料に比べて価格が約4倍高い点が大きい。しかし、需要が拡大すると大量生産につながり、コストダウンの可能性が見込める。このため、バイデン米政権はSAF開発普及のために、40億㌦（約4500億円）超の補助金をSAF開発に投じる方針を決めている。https://rief-jp.org/ct8/118911
米政府によると、米国のSAF生産量は直近で年間450万ガロン（約1700万㍑）。これを2030年には約670倍の30億ガロンにまで一気に引き上げる計画だ。
ユナイテッドはSAF普及のため、今年4月に業種横断的組織の「Eco-Skies Alliance program」を立ち上げた。同プログラムには、マイクロソフトやビザ、日本の郵船ロジスティック等12社参加しており、参加企業全体では今年だけで700万ガロンのSAFを購入した。別途、日本航空や米アメリカン航空などで組織する航空連合「ワンワールド」加盟の9社は、SAFの共同調達を目指しており、24年から7年間で3億5000万ガロンの購入計画を公表している。
Research Institute for Environmental Finance