日本と韓国で拡大した山火事は「人類起因の気候変動で強まった気象条件が原因」。仏気候研究機関が指摘。気温は過去より最大2℃高く、降水量は2mm/日少なく、風速最大4.8km/h速い(RIEF)
2025-03-30 21:11:58

(写真は、ClimaMeterのサイトから引用)
フランスを中心とする気候専門家で構成する研究機関「ClimaMeter」は、3月21日から23日にかけて日本と韓国で同時的に発生し森林火災につながった気象条件が、過去の事例と比べ、大幅に気温が高く、大気は乾燥し、風が強かったという特徴で共通することから、火災を助長する状況の悪化は、主に人間活動に起因する気候変動によるものであり、自然の要因は限定的でしかないと考えられるとの分析結果を公表した。同火災が気候変動が顕在化した実例との見方は、環境金融研究機構(RIEF)もすでに指摘している。研究者らは、人類起因の気候変動によって、気温は最大2℃高く、降水量は最大2mm/日少なく(最大30%)、風速が最大4.8km/h速い(最大10%)とのデータを示し、RIEFと同じ結論に至った。
日本と韓国の山火事の研究分析を行ったのは、フランス国立科学研究センター(IPSL-CNRS)所属のダヴィデ・ファランダ(Dab ide Faranda)氏、 同グレタ・カザーニガ(Greta Cazzaniga)氏、スペインのカルメン・アルバレス-カストロ(Carmen Álvarez-Castro)氏、イタリアの国立地球物理学火山学研究所(INGV)トマッソ・アルベルティ(Tommaso Alberti)らの研究グループ。
研究対象となった3月21日から23日にかけて発生した、日本の岡山・愛媛両県と韓国の晋州と釜山周辺での山火事を、過去(1950~1986年)にその地域で発生した場合と比較し、現在(1987~2023年)ではどのように変化しているかを分析した。その際、物理学に基づく機械学習手法を用い、対象とする異常気象の原因となった気象条件に類似した条件を探索する手法を用いた。
RIEFでは3月27日に公表した記事で、岡山・愛媛と韓国での山火事のほか、年初に広がった米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊での森林火災、さらに2月26日に岩手県大船渡市で出火した山林火災についても、同様に気候変動の影響によって火災が加速された懸念がある点を指摘している。https://rief-jp.org/ct12/155405

ClimaMeterの分析では、対象期間の両地域での海面気圧の変化は、現在の方が陸と海の対照がより顕著であり、内陸の東風を強めたことを示している。気温の変化は、山火事の影響を受けた地域で最大2℃の上昇を示した。降水量の変化は、広範囲にわたる乾燥を示しており、日本の本州と韓国南部の一部では、現在の状況は最大2mm/日分、乾燥していることがわかった。
風速の変化は、内陸部で風が強まり、特に韓国の沿岸地域および日本の北部では、最大4.8km/hの強風が吹いたことで、焼失した土地や人的被害を含め、甚大な被害を両地域、特に韓国においてもたらした。日本では岡山・愛媛両県でそれぞれ別々の山火事が発生し、少なくとも2人が負傷、数千人が避難を余儀なくされ、複数の家屋が被害を受けた。
日本の2県での3月24日までの火災による焼失面積は少なくとも370haに達した。これはその前の2月~3月に岩手県で発生した別の大規模山火事による焼失面積2900haに次ぐ規模となった。いずれのケースでも、火災が発生する前の数日間、被災地では非常に乾燥した天候が続いていた。

一方、韓国の晋州と釜山周辺の山火事では4人が死亡(その後、30人に増加)し、国家非常事態対応が発令された。同国の中央災害安全対策本部は、全国で同時に発生した山火事により7778ha(その後、3万6000haに拡大)の山林が焼失したと報告した。この火災は、乾燥した土壌、強風、そして発生期間中の異常に高い気温により急速に広がった。
両地域周辺の気象条件は、内陸部と日本と韓国の間の海上で気圧が低くなり、南側で気圧が高くなるという異常な気圧偏差パターンが特徴的に表れた。この気圧偏差パターンが、被害を受けた地域全体にわたって強い気圧勾配を維持する要因になったとしている。
この間の気温の異常上昇は、日本の本州と韓国南部で最大+2℃に達した。さらに期間中の降水量は極めて少なく、広範囲で1mm/日未満という少雨状態だった。一方、50km/hを超える持続的な風により、火災の発生と拡大に好都合な状況が生じた。乾燥した強風は、特に海岸地域や山岳地域で顕著であった。
この分析で使用したデータは、モデル出力と地上観測所や衛星観測を含む利用可能な観測データを組み合わせた解析手法によることから、研究チームでは、局地的な観測所観測との相違が生じる場合がある、としている。
山火事は毎年、世界全体のバイオマス燃焼の70%を占め、大気中に大量の微量気体やエアロゾルを放出する。熱波、干ばつ、強風などの異常気象は、こうした山火事を助長する状況の一因になる。山火事は本来は、自然生態系の一部だが、IPCCの気候レポート(AR6)では、気候変動が山火事の頻度と規模に及ぼす影響が拡大していることを強調している。
実際、気候変動が気候の極端性の頻度と強度に及ぼす影響は、山火事の頻度と規模の変化にもつながっている。IPCCの報告書は、中程度から高い確信度をもって、人為的な気候変動が特定の地域(東アジアを含む)における山火事による焼失面積を大幅に増加させ、火災の発生しやすい季節を長期化させていると指摘している。さらに、山火事は以前ならこのような火災リスクにさらされていなかった地域にも影響を及ぼすようになっていることも、指摘している。
韓国では気候変動の影響によって、寒くて湿気の多い旧来の冬の気候が、暖かく乾燥した気候へと変化しており、火災が発生しやすい環境が生まれていることが指摘されている。その結果、山火事のリスクが高まっていることを示している。
今回の山火事につながった気象条件と類似した事象が、過去(1950~1986年)にその地域で発生した場合と比較して、現在(1987~2023年)ではどのように変化しているかを分析したところ、海面気圧の変化は、現在の方が陸と海の対照がより顕著になっており、その結果、内陸の東風を強めていることが示されたとしている。気温は、山火事の影響を受けた地域で最大2℃の上昇となり、大気の乾燥状況は、本州と韓国南部の一部で、最大2mm/日の乾燥となっている。風速の変化は、内陸部で風が強まり、特に韓国の沿岸地域および日本の北部では最大4.8km/hの強風が吹くことを示している。
過去の類似した山火事の事例では季節的な変化が見られ、2月と4月に発生する頻度が高くなっていた。しかし、最近では3月に山火事が発生する頻度が高くなっているとしている。都市部の変化を見ると、今治市、岡山市、釜山市では、過去の類似状況と比べて、今年3月は、気温が大幅に上昇し、乾燥した状態が続いた。釜山では風も強かったが、気温の上昇は、今治で最も顕著だった。
研究チームは、これらの結果から、2025年3月の山火事と類似した気象条件が、地球温暖化の継続に伴い、より激しくなっていることを示唆している、と結論付けている。また、エルニーニョ南方振動などの自然気候変動要因は、今回の山火事の要因としては、二次的な役割しか果たしていない可能性も示唆している、とし、自然変動より、人為による気候変動の山火事に対する影響の大きさを指摘している。
今回、日本と韓国で発生した山火事につながった気象条件は、過去の同様の事象と比較して、気温が最大2℃高く、降水量が最大2mm/日少なく(最大30%)、風速が最大4.8km/h速い(最大10%)という結論を示すとともに、「この現象は、そのほとんどが人為的な気候変動によって強まった、異常気象と解釈される」としている。
https://www.climameter.org/20250321-23-japan-and-south-korea-wildfires