HOME8.温暖化・気候変動 |米共和党連邦議員が、気候訴訟に対抗して化石燃料業界の責任を「免責」する「気候変動責任追及阻止法案」を提出。トランプ大統領令がモデル。「汚染者負担原則」を真っ向から否定へ(RIEF) |

米共和党連邦議員が、気候訴訟に対抗して化石燃料業界の責任を「免責」する「気候変動責任追及阻止法案」を提出。トランプ大統領令がモデル。「汚染者負担原則」を真っ向から否定へ(RIEF)

2026-05-10 02:00:27

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写真は、ワシントンの米連邦議会)

 

  トランプ大統領の反気候s・反ESGの大統領令を受ける形で、米連邦議会に共和党議員が、石油大手企業等の化石燃料業界の気候変動責任の追及を阻むことを目指す「気候変動責任追及阻止法案」が提出され、環境団体等の反発を呼んでいる。法案は、イラン戦争で石油・ガス等の化石燃料価格が高騰する中で提出された。その内容は、全米各地で民主党系州当局やNGOらが気候変動発生の法的責任を化石燃料業界に問う気候関連訴訟等が提起されることに対して、同業界の法的責任論を封じ込め、訴訟を阻止することが狙いだ。国際的に確立している「汚染者負担原則」の法理に真っ向から対立する動きでもあり、米国以外の国々からも反発が出そうだ。

 

 注目の法案は、共和党下院議員のハリエット・ヘイグマン(Harriet Hageman:ワイオミング州)と同党上院議員のテッド・クルーズ(Ted Cruz :テキサス州)がそれぞれ提出した「気候変動による不当な請求を阻止する法案(Stop Climate Shakedowns Act)」だ。法案の内容はほぼ同じで、化石燃料からの温室効果ガス(GHG)排出増加の継続によって、「気候緊急事態」といえる状況になっていることに対する同産業の責任について、広範な「法的免責」を認めるとするものだ。

 

 さらに、「大気中の排出物の規制は連邦法の専属管轄権に属する」として、バーモント州やニューヨーク州が2024年に州議会で成立させた「気候変動版スーパーファンド法(Climate Superfund Act)」を無効化する狙いもあるようだ。気候スーパーファンド法は、大手化石燃料企業に対して気候変動適応費用の負担を求める仕組みを設けるもので、廃棄化学物質の処理責任を問うスーパーファンド法を気候対策に応用する内容だ。

 

 同法に対しては、連邦政府や化石燃料業界が異議申し立てを行っており、現在係争中だ。このため両州の気候スーパーファンド法の適用範囲や規則などは定まっておらず、まだ実施されていない。今回の共和党の法案は、こうした民主党系州当局の「気候スーパーファンド法」を否定するとともに、化石燃料のサプライチェーンのいかなる段階に関与する企業に対しても、法的責任を問うことを禁じるとしている。連邦、州のすべての裁判所で新たな気候訴訟を提起を禁じるとともに、法律として成立すると係争中のすべての気候訴訟は直ちに却下されることになる。

 

 同法案は、2025年4月にトランプ大統領が発した「州政府の権限乱用から米国のエネルギーを守る」とする大統領令をモデルとしている。同大統領令は、「手頃な価格で信頼性の高い国内エネルギーを供給することは、国の国家安全保障および経済安全保障、ならびにわが国の外交政策にとって不可欠」としたうえで、「州政府や地方自治体が、憲法上または法令上の権限を超えてエネルギーを規制しようとする時、米国のエネルギー優位性は脅かされる」とし、民主党系州当局による「気候スーパーファンド法」や自治体等による気候訴訟を「排除」する姿勢を明確に示している。

 

 気候変動に対する化石燃料業界の責任を「免責」する法案は、この大統領令をベースに、気候危機が深刻化する中で、同業界の法的責任を問うあらゆる動きを阻止することを、法律で定めるものだ。米環境NGO大手のシエラクラブは「(同法案は)石油大手とその政治的同盟者が展開している激化するキャンペーンの一環」と断じている。実際に、米国石油協会(API)は、「極端な気候変動責任政策」を阻止することが2026年の最優先課題の一つであると表明している。

 

 こうした化石燃料業界と共和党政治家の連携に対して、シエラクラブの「Beyond Fossil Fuels」政策担当ディレクター、マヒヤール・ソルール(Mahyar Sorour)氏は「われわれの地域社会は気候変動による被害の代償を支払わされているのに、問題を長引かせ、長い間その事実を隠蔽してきた汚染者たちは、依然としてそのツケを地域社会に押し付けようとしている」と批判している。

 

 しかし、ユタ州やテネシー、オクラホマ、アイオワ等の共和党主導の州では、今回の連邦議会での「気候責任免責法案」提出に先駆けて、汚染者に対する気候変動被害の責任追及を免除する法律を制定している。 「気候変動スーパーファンド法」か「気候責任免責法」かという、米国の気候・環境法の歴史的基盤の視点をどこに置くかという争いにも発展しそうだ。

 

 ソルール氏は、連邦法案に対しては、共和党上院議員の間にも疑問を示す向きが少なくないことから、「法案が上院で成立する上で必要な60票を確保できる可能性は極めて低い。業界が『免罪符』を手に入れようとするこの試みに反対し、声を上げる議員や関係者がいる」と指摘。「われわれは警鐘を鳴らし、石油・ガス業界が抵抗もなくこの法案をこっそり通すことを許さないよう、全力を尽くす」と強調している。

 

 民主党系州の間では、ニューヨーク州等以外でも、「気候変動スーパーファンド法」の導入を検討しているところもある。また、カリフォルニア州やハワイ州等では、森林火災等の影響を受ける住宅所有者向けの保険市場で、気候変動に起因する損害について、化石燃料企業に責任を負わせることを目的とした法案も検討されている。法律の専門家の中には、気候変動の影響を知りつつ、気候災害を放置してきた同業界に対して刑事責任を追及する提案を示している事例もある。

                         (藤井良広)

 

 https://www.sierraclub.org/sierra/climate-shakedown-GOP-bill-permanently-shields-big-oil-accountability?id=701Po00001jObP9IAK&utm_medium=email&utm_source=sierraclub&utm_campaign=beyonddirtyfuels&utm_content=immunity-sierra-a

https://hageman.house.gov/media/press-releases/rep-hageman-introduces-bill-shield-american-energy-producers-leftist-climate

https://www.congress.gov/bill/119th-congress/senate-bill/4340

https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/04/protecting-american-energy-from-state-overreach/

https://www.citizen.org/wp-content/uploads/Climate-Homicide-Prosecution-Memo-Final.pdf