一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

  米大陸を訪問中のスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリーさんは先週末、カナダのアルバータ州で気候変動に抗議する数千人の人々と一緒に、迅速な温暖化対策を求めるデモを行った。同州はタールサンドなどの産出で知られる化石燃料産業の盛んな州。グレタさんへ反発する石油業界で働く人々らもカウンターデモを展開、激しく対立する場面もあった。

　グレタさんは同州の首都エドモントンにあるアルバータ州議会前で、カナダの子どもや若者らとともに、「温暖化対策を求める登校拒否（Scopol Strike）」の抗議行動を展開した。グレタさんは「政府に対して温暖化対策の強化を求める抗議行動を行われ、参加者は数千人に上ったとみられる。

　グレタさんは「カナダやスウェーデンのような『豊かな国』は、他の国よりも迅速に温室効果ガス（GHG）排出量をネットゼロまで引き下げねばならない。そうすれば、貧しい途上国でのインフラ建設を進めて、貧しい人々の生活水準を向上させることができる」と先進国の役割を強調。

 「しかし、現在、私たちの国はそうしていない。私たちがこうして集まるのは、私たちの未来が危機に瀕しているからだ」と、抗議行動の理由を訴えた。さらに、「私たちは傍観者にはならない。権力者たちに科学を支持して結束してもらいたい」と参加者らに呼びかけた。

　集まった若者たちがトゥンベリさんを支持する声を上げる一方、石油生産を支持するカウンターデモも行われた。トゥンベリさんの発言にあわせてのに合わせて、乗りつけた大型掘削装置搭載の車両のクラクションを鳴らすなど、抗議行動に反発を表明した。

　カウンターデモ参加者の一人は、現地のメディアに答えて、「われわれだってもちろん、環境に配慮している。彼女たちが理解しなければならないのは、われわれが困窮しており、アルバータ州の雇用にも配慮しなければならないということだ」と強調した。

　一方、同州のジェイソン・ケニー州首相は同日、州内に新設されたガスパイプラインの開通式典に出席した。同パイプラインは、エドモントンの近郊にあるキープヒルズ（Keephills）火力発電所に天然ガスを輸送するために建設されたもので、ケニー首相は「彼らが昨夜、アイフォンを充電した時の電気は、この新しい発電所から送られてきたものだった」と指摘した。

　同発電所は従来の石炭火力から天然ガス火力に転換したもので、ケニー首相の自慢のプロジェクトの一つなのだ。同氏は続けて「アルバータ州民とカナダ人は現実主義者。人々が望んでいるのは現実世界で通用する解決策だ。現代の産業経済の終わりを求め、大勢の失業を訴えるのは、現実世界で通用する解決策ではない」と述べた。

　グレタさんは米国からカナダ入りした先月、モントリオールで開かれた50万人規模の温暖化抗議行動にも参加している。その際、ジャスティン・トルドー首相と会談した。トルドー首相は環境保護派としても知られるが、グレタさんは会談後、「（同首相の）温暖化への対応は十分とはいえない」と厳しく指摘している。

　トルドー首相はグレタさんとの会談後、20億本の植林を実行することを約束し、「私は彼女の行動に完全に合意する。われわれはもっと温暖化対策をやれねばならない」と述べ、グレタさんへの『連帯』を強調した。

　しかし発言と行動は容易には一致しない。カナダは世界で第4番目の原油生産国であり、その拠点となるアルバータ州のタールサンドなどの石油埋蔵量は第3位とされる。化石燃料大国なのだ。同国のエネルギー産業はGDPの11%を占めている。

　国の首相は環境擁護でアピールするが、化石燃料産業を柱とするアルバータ州の首相は、化石燃料擁護政策を継続するという構造だ。別途、トルドー首相は最近、選挙絡みで、若いころにパーティーで黒人に仮装し、人種差別にコミットしたとの告発を受けた。「グリーンフェース、ではなく、ブラウンフェース｣との批判も出ている。

https://www.dw.com/en/greta-thunberg-calls-for-climate-action-in-canadas-oil-heartland/a-50896065