分析ペーパー:「ESGスコアと信用リスク・財務パフォーマンスとの相関分析 」(長谷直子)
2020-03-26 15:28:23
日本総合研究所創発戦略センターマネジャーの長谷直子氏は「ESGスコアと信用リスク・財務パフォーマンスとの相関分析 」と題する分析ペーパーを公表しました。銀行実務にESGの視点を取り入れる「環境配慮評価融資/私募債」等により、企業がESGの取り組みを進めることで、リスク低減や競争優位の源泉を獲得し、長期的には収益性や安全性を高めることができるのではないかという仮説の検証です。
三井住友銀行(SMBC)が2008年から展開し続けている「ESG/SDGs評価融資/私募債」の評価スコアと信用リスクや財務パフォーマンス指標との相関分析を行っています。信用リスクを表すデータとして帝国データバンクの評点を用いています。
その結果、環境分野での相関係数は、0.43(弱い正の相関が見られる)。弱い相関ですが、リスク管理という視点も含めて環境問題に取り組む企業は、信用リスクを低減できているとの仮説を否定することにはならなかった、としています。
また働き方改革融資/私募債の評価スコアを信用リスク評点との相関関係を調べた結果、データ数は少ないものの相関係数は0.73(強い正の相関が見られる)と、環境分野よりも高い相関性が示されました。
さらに信用リスクに影響を与えると考えられる自己資本比率などの財務指標や、企業規模などの属性を考慮した上で、重回帰モデルにESG評価の要素を追加して分析を行ったところ、ESGスコアが信用リスクおよび財務パフォーマンス指標との関係性において、いずれも一定の正の関係性が存在する傾向を得た、としています。
長谷 直子(はせ・なおこ)京都大学大学院工学研究科修了、日本総合研究所入社、産業ソリューション事業本部を経て、2007年~2008年経済産業省出向、地球温暖化政策、京都議定書目標達成計画の見直しなどの業務に携わる。創発戦略センターESGリサーチセンター所属。
(本稿は、日本総研の「経営コラム」掲載の原稿を同社の了解を得て再掲しました)