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環境金融研究機構(RIEF)。「適応ファイナンス・ガイダンス」(最終版)を公開。気候適応事業に民間資金を誘導する「プロキシCF」等の「3ステップアプローチ」を提案(RIEF)

2023-10-23 21:40:54

hirosigeキャプチャ

 

 一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)は、気候変動による適応(アダプテーション)事業への民間ファイナンスのための「アダプテーションファイナンス・ガイダンス」(最終版)を公表しました。今年7月18日に公表したドラフト案に対するコンサルテーションを経て、一部を修正し、今回、発表するものです。

 

 ガイダンスは、適応事業のタクソノミーの選考と、期待キャッシュフローを創出する手法のタクソノミーの活用、さらに実際に将来の「適応期待」を見える化するプロキシ・キャッシュフローの設定という3段階のアプローチを維持したうえで、適応キャッシュフローとプロキシ・キャッシュフローの「ズレ」が生じた場合の対応として、新たに財務制限条項(コビナンツ)の設定を提案しました。コンサルテーションには内外から10人、14件のコメントを頂きました。

 

 この夏、6月から9月にかけて、世界の平均気温は、毎月、観測史上最高の気温を更新し続けました。昨年までの気温上昇のトレンドとは明らかに相違し、気温上昇のフェーズが変わった形でした。パリ協定が掲げる「1.5℃目標」は、早ければ2030年より前に超えてしまうリスクも指摘されています。

 

 こうした事態に歯止めをかけるため、温室効果ガス(GHG)排出量を抑制する緩和策をさらに徹底させる必要がありますが、各国の政策対応の遅れは続いています。激化する気候変動に伴う気候災害の増大に対応する適応事業の緊急性が、ますます高まっているといえます。

 

 そうした環境下で、11月末の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では「ロス&ダメージ(損失と損害)」へのファイナンスの具体化が焦点になるとみられています。RIEFの今回のガイダンスはそうした国際的な適応策の議論に、日本からの提案の一つとしての貢献を目指して作成されたものです。

 

 現在の日本政府は、気候緩和策についても十分な備えがないほか、化石燃料産業を温存する政策展開を続けています。適応事業へのファイナンスの重要性については、日本政府は、ほとんど手を拱いているのが実態です。本ガイダンスはそうした状況下で、緩和策、適応策を両建てで推進していくため、民間金融市場を活用することを想定して提案するものです。

 

 ガイダンスの作成を担当した「RIEFアダプテーションファイナンス研究会」は、以下のメンバーで構成しました。

∙ 明日香壽川(東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授)

∙ 越智信仁(関東学院大学経営学部教授)

∙ 小林靖周(東京海上日動火災保険・業務企画部調査企画グループ部長)

∙ 榊原恵(EY新日本有限責任監査法人CCaSS事業部マネージャー)

∙ 新美陽大(日本総合研究所創発戦略センター、スペシャリスト)

∙ 堀口宗尚(京都大学経営管理大学院特命教授)

∙ 藤井良広(環境金融研究機構代表理事)=主査

∙ 村井秀樹(日本大学商学部教授)

∙ 山本利明(元大阪電気通信大学教授)

                 (ガイダンス本文はこちら⇒)