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書評:「50のテーマで読み解く CSRハンドブック」(S・ベン/D・ボルトン著、松野弘監訳、ミネルヴア書房)

2021-04-08 16:32:15

matsunoキャプチャ

 

 本書は「Key Concepts in Corporate Social Responsibility, Sage Publications、2011」の翻訳本である。著者のスーザン・ベン(Suzanne Benn)はオーストラリア・シドニー工科大学(UTS)教授で、持続可能な企業の研究で知られる。CSR、SRI、サステナビリティの領域で幅広い活動と貢献をしている。もう一人のダイアン・ボルトン(Dianne Bolton)は同・メルボルン工科大学客員准教授。リーダーシップと管理行動等の研究を行っている。

 

 両氏の共著である本書は、4つの分野に分けて、それぞれの分野の「キーワード」となるテーマについて、言葉の定義と概要、来歴、主要な議論等を、簡潔・明瞭に解説している。ただ、よくある「読み解く本」や「キーワード書」などのハウツー本とは違い、2人の研究者が、企業向けの実践活動も踏まえた専門家としての視点で論点整理をしている点で、信頼性の高いものとなっている。

 

 CSRも、今はやりのESGも、「隣をマネする」時代から、企業人自らが、自社の組織の特徴と将来ビジョン、従業員や社会全体を含めた多様なステークホルダーとの関係性を踏まえて、自社の特性に応じた戦略の立案と実践をすることを求められている。企業人は自社を取り巻くそうした多様な「関係性」を自らの判断で評価し、ウエイト付けをした責任ある対応が求められる。本書はその意味では、そうした企業人が手探りするための実践的で専門性の高い「入門書」といえる。

 

 読者は、それぞれの分野でのキーワードの基本知識を、専門性を損なわない範囲で学ぶことができる。そこから次のステップを目指す人は、多様な文献の中から、著者らが選んだ参考文献リストにアクセスすればよい。著者らは「SDGs時代にふさわしい、進化したSR概念やCSR活動が企業の今後の重要な経営指針となることを期待したい」と結んでいる。

 

 翻訳は、CSR論、「企業と社会論」等を専門とする研究者たちが引き受け、千葉大学教授を務めた松野弘氏(現代社会総合研究所所長)が監訳した。

 

https://www.minervashobo.co.jp/book/b556566.html