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出版『クライメート・ジャスティス』(明日香壽川著)

2016-01-25 16:59:13

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 題名の「Climate Justice」をそのまま訳すると「気候正義」となる。日本ではなじみの少ない言葉だが、米欧では、決してそうではない。 温暖化問題、気候変動問題は、経済成長の負の側面、あるいはコスト問題という面だけでなく、実は、正義や公平性の問題なのではないか、というのが本書の問題提起である。

 

 正義や公平性の歪みは、先進国と途上国の間だけではない。現世代と将来世代の間、現世代においても富める人と貧しい人の間、男女の間、年齢層の間、それぞれで起きているし、起きようとしている。

 

 したがって、温暖化をもたらす温室効果ガス排出量についての公平な分配についても、従来の経済的な選択肢だけではなく、ある種の哲学・思想が求められる。COP21の国際合意で各国政府、産業界は、2020年以降の排出削減の方向性で合意したが、それらの合意を実りあるものにするには、政治経済的な調整に加えて、バックボーンとなる正義の視点が不可欠、というのが本書のメッセージである。

 

 正義・公平性を踏まえる時、温暖化問題は、エネルギー問題、原発問題、プルトニウム問題、そして戦争、貧困、格差、政治思想、社会システムなどの諸課題と、根っこにおいてつながってくる、と著者は言う。登場人物、企業、国家も重なっている、とも言う。

 

『クライメート・ジャスティス~温暖化対策と国際交渉の政治・経済・哲学』

(明日香壽川著、日本評論社、2015年9月21日初版、本体価格3200円)

 

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