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資料:環境省グリーンボンド検討会報告「わが国におけるグリーンボンド市場の発展に向けて」(2016年3月)

2016-04-14 16:32:05

Greenbond3キャプチャ

環境省のグリーンボンド検討会(グリーン投資促進のための市場創出・活性化検討会)は、日本市場でグリーンボンドを普及させるための報告書「わが国におけるグリーンボンド市場の発展に向けて」をまとめ、公表した。

 

 グリーンボンドは、企業等が発行する社債の一種だが、対象資産を再生可能エネルぎー事業や省エネ事業、グリーンビルディング、低炭素公共交通機関整備などのグリーン投資に限った資金調達手段をいう。昨年2月のCOP21でのパリ合意を受けて、グリーン投資に資金を供給するグリーンボンドの発行が急増しており、昨年は約418億㌦、今年は700億~1000億㌦が見込まれている。

 

 ただ、わが国では日本の金融機関による発行が過去2年で3件、外資系によるアレンジが7 本とまだ限定的だ。ただ、日本のグリーン投資市場も固定価格買取制度(FIT)を受けて再エネ事業投資が拡大しているほか、新規オフィスビルの多くがグリーンビルディング仕様となるなど、環境配慮事業・物件は増加している。こうした資金需要を担うグリーンボンドへの潜在的需要は大きいとみられる。

 

 そこで報告書は、先行するグローバル市場の動向を踏まえながら、日本での市場づくりのための政策提言を行なった。まず、国際的には米欧の主要金融機関が設定した「グリーンボンド原則(GBP)」「Climate Bonds Initiative(CBI)」などの発行標準やクライテリア案がある。欧米のグリーンボンドはこうした国際標準を基本に据えている。

 

 わが国のボンド発行に際しても、こうした国際的な枠組みを基本とするとともに、普及促進の視点ではそうした枠組みを厳格ではなく、柔軟に運用することで、発行しやすい環境を整備する必要があるとしている。GBPの原則では、調達資金の使途について、グリーン事業への投資を明確にすることを求めている。報告書は、そうした原則を基本に準拠しつつ、投資市場の流動性なども考慮し、弾力的な投資が可能なベストエフォート方式の発行も認める方向を示した。

 

 その際、柔軟運用については「一定の条件」を明確にするものとし、①調達資金の大半はグリーン投資に充当②グリーン投資が困難な場合は投資対象の性質が明確で、環境悪化効果のないもの③情報開示に際して、グリーン投資以外の投資比率や、投資情報を開示する、などを例示している。

 

 グリーンボンドによる調達資金の管理面では、GBPなどが求める専用勘定での管理などだけでなく、外部機関による監査での担保など、より簡易な手法も検討対象とした。ボンドの情報開示については、期待される環境改善効果を定量的に示すほか、そうした効果の測定方法についても投資家に分かりやすく開示することを求めている。そうした測定や開示に伴うコスト削減のため、既存の枠組みも参考にした対応を認める姿勢を示した。

 

 グリーンボンドを投資家が購入する際に重要になるのが、認証評価である。GBPやCBIなどへの準拠や認証ラベルの付与や、外部機関による第三者認証、外部格付けなどの手法が複数並行に走っており、グローバル市場でも現在、明確な認証尺度が定まっていない状況にある。

 

 報告書はグリーンボンド発行に際して投資家の信頼を得るには、こうした認証を可能な範囲で取得することが望ましいと位置づけた。また投資家対策として、グリーンボンドに投資した投資家が市場から評価される環境整備として、それらの投資実績を情報ベンダーが投資先企業情報に反映させることや、企業等自身が環境報告書等にグリーンボンド投資額を積極的に開示し、自ら「グリーン投資家」であることを対外的に情報発信することを促進する施策を提言している。

 

 日本の投資家の特徴として、企業や機関投資家だけでなく、個人投資家の重要性もあげている。これまでわが国では、世界銀行等の国際公的金融機関発行のグリーンボンドを、個人投資家層が積極的に購入してきたことが知られる。このため、国内でのボンド発行の場合も、個人投資家に向けたボンド情報の周知を重視するよう求めた。

 

 グリーンボンドは中国、インドなどの新興国市場でも発行が相次いでいる。中国などは中央銀行が国内発行基準を作成・公表するなど、政策的な後押しもある。ただ、債券市場の厚み、機関投資家の多さ、株式、外為等の他の金融市場との連携・連動といった点で、日本市場はアジアにおいて存在感がある。

 

 グリーンボンドは対象資産の投資事業と連動して発行されることも多い。このため、日本企業がアジア等の途上国で温暖化対策や低炭素社会移行のための事業に参画し、そのためのファイナンスをグリーンボンド発行でまかなうパターンが増えてくるとみられる。あるいは、途上国企業や金融機関が、日本市場で円建てグリーンボンドを発行する可能性もある。

 

 こうした国際的なグリーンボンド発行が日本市場で増えてくると、市場の流動性を高めることになる。日本の機関投資家や個人投資家にとっても、より安全性を高めた形で、アジアの温暖化対策に資金を供給する役割を担うことができるようになる。そうした意味で、日本が「アジアのおけるグリーン投資のハブ市場」を目指す取り組みが広がることが期待される、としている。

 

「環境省グリーン投資促進のための市場創出・活性化検討会」メンバー

後藤 英樹 株式会社クレアンESG アドバイザリー コンサルタント


佐藤 朗 株式会社日本政策投資銀行 ストラクチャードファイナンス部長

島 義夫 玉川大学 経営学部国際経営学科 教授

田中 英隆 株式会社格付投資情報センター 専務執行役員

徳田 健 大和証券株式会社 デット・キャピタルマーケット部 海外オリジネーション
課兼オリジネーション二課 上席課長代理

徳田 展子 東京海上アセットマネジメント株式会社 株式運用部 投資調査グループ
兼 責任投資グループ ESG スペシャリスト

馬場 賢治 株式会社三井住友銀行 成長産業クラスター 第二グループ(環境・エネ
ルギー・資源担当) グループ長

藤井 良広 上智大学 客員教授
一般社団法人環境金融研究機構 代表理事

堀江 隆一 CSR デザイン環境投資顧問株式会社 代表取締役社長

本多 史裕 株式会社日本格付研究所 ストラクチャード・ファイナンス部プロジェクト&
アセット・ファイナンス室長兼チーフ・アナリスト

三岡 美樹 オリックス株式会社 補助金等管理部長

八木 博一 セコム企業年金基金 常務理事兼運用執行理事

◎:委員長

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