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資料:「日本の上場株式市場と、気候変動2℃目標との整合性検証」(2°Investing Initiative)

2018-02-27 18:26:50

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 パリ協定で国際合意した世界の気温上昇を、産業革命前からの2℃以内に抑制する国際合意の達成は、わが国を含めて、世界のほとんどの国々に課せられた課題である。わが国の主要な産業構造が、目標達成と整合性のある方向を向いているかどうか、を検証するレポートが公表された。

 

 フランスの気候NGO、2°Investment Initiative(2°ii)が独自に開発した手法をもとに、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)が支援する形でまとめた。東証株価指数(TOPIX)構成銘柄のうち、電力、自動車、化石燃料生産の3部門が、IEA(国際エネルギー機関)の2℃シナリオとどう整合しているかを、エネルギーと技術の観点から分析した。その結果は、ビジュアル、かつ定量的に示されている。

 

 TOPIXの構成銘柄が抱えるカーボン負荷と、改善の必要程度が一目瞭然で把握できる内容になっている。これらの分析は、機関投資家などの投資判断の際に、気候変動リスクを評価する上で有益なほか、今後の技術開発の余地がどこにあるかなども示している。

 

 対象となった3部門については、上場電力会社において、気候変動にプラスの効果をもたらす再エネ保有は2016年現在で1.3%しか保有しておらず、逆に、ガス・石油・石炭の設備容量は2℃達成に必要な設備容量を大きく上回る。この傾向は2020年時点でも2℃ベンチマークと整合する形での改善は見込めない。

 

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 自動車部門は、電気自動車・ハイブリッド車の生産が広がっているが、現時点では、依然、ガソリン、ディーゼルなどの内燃機関車(ICE)中心で、2℃ベンチマークと整合しない。日本の自動車業界はハイブリッド車で世界的シェアを拡大したが、業界全体で2℃目標を満たすには、すべての自動車メーカーが、現在のトヨタのハイブリッド車生産量よりも、さらに野心的な計画を立案する必要がある。

 

 日本の化石燃料生産への依存度は、他の多くの国よりも高い。さらに、TOPIX構成銘柄の化石燃料生産企業は、2021年に向けて、ガス・石油製品の生産を増大させる計画を立てている。これらの企業の2021年時点でのガス・石油生産は2℃シナリオと整合する生産量を超過している。

 

 また、電力事業者が2℃シナリオを満たすためには、保有する石炭火力設備容量をどれだけ削減する必要があるかを、10電力と電源開発についてそれぞれ試算している。各電力が計画している追加設備投資を考慮したうえで、それによると、電源開発が現行の設備容量の14%を削減しなければならないなどの具体的な数値が示されている。