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環境金融研究機構主催「第六回(2020年)サステナブルファイナンス大賞」決定。大賞には国立大学初のソーシャルボンド発行の東京大学。優秀賞4件、イノベーション賞に野村證券等(RIEF)

2020-12-15 17:30:01

SF6thキャプチャ

 

 一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)が主催する「第六回(2020年)サステナブルファイナンス大賞」が決まった。大賞には、10月に日本の国立大学として初めてソーシャルボンドで資金調達をした東京大学が選ばれた。優秀賞4件等に加え、初のサステナブル・イノベーション賞を野村證券・日本エアーテックに、わが国で初の気候変動への経営責任を問う株主提案を行った環境NGOの気候ネットワークにNGO賞を送った。

 

 サステナブルファイナンス大賞は、RIEFが2015年から、日本市場で環境金融・サステナブルファイナンスの分野で目覚ましい活動を展開している金融機関、企業、その他の団体等を顕彰することを目指して、毎年、実施している。

 

 今回、大賞となった東大は、SDGsに資する大学の学術研究にかかる投資を資金使途とする「ソーシャルボンド」200億円を公募市場で調達した。これまでグリーンボンドを発行する大学は海外にいくつかあった。だが、大学の主たる事業である研究投資そのものと、その社会改善効果を評価する形のソーシャルボンド発行は例がなかった。

 

 調達資金は、東大が持つ社会変革を駆動する力を高めるための、東大FSI事業(Future Society Initiative:未来社会協創)に充当される。同事業では、「ポストコロナ時代の新しいグローバル戦略を踏まえた研究の推進」、「安全、スマート、インクルーシブなキャンパスの実現」を推進する。

 

 特に今回の債券発行は、40年債という超長期債。大学が長期的視点に立って、いかに社会に役立っているかを、大学自らが社会に提起する形でもある。知識集約型社会及びSDGsへの貢献、ポストコロナの社会の回復と再生に向けて、東大の知恵と知識を定性的目標とし、各種指標をKPIとして開示する。

 

 具体的な資金使途先としては、FSI事業での最先端大型研究施設整備(ハイパーカミオカンデなど)、「ウィズコロナ・ポストコロナ」社会における大学の施設整備が含まれている。

 

 優秀賞は4件。みずほ証券、SOMPOホールディングス、太陽生命保険、三井住友海上火災保険が選出された。

 

 みずほ証券は、国内公募のESG債市場で2年連続引き受けシェアトップとなる積極的な活動を展開している。、また国内初のサステナビリティリンクボンドの発行支援も手掛けるなど、ESG債市場の開発に貢献した。

 

 SOMPOは国内損保として初めて、国内の石炭火力発電事業の新規建設に関する保険引き受け・投融資を原則行わないことを宣言した。他の損保も追随した。またESGリスク管理の高度化でも顕著な取り組みを進めている。

 

 太陽生命は、コロナ感染症での入院を対象とした初の「感染症プラス入院一時保険」を販売した。本業を通じた社会貢献の実践を評価された。またコロナワクチン債への投資などの積極的なESG投資のほか、寄付付きグリーンローン等も提供するなど多彩な活動を展開している。

 

 三井住友海上火災は、気候変動により増大する自然災害リスクを対象として発行したCatボンド(大災害債)を、国内損保として初めてシンガポール市場で上場した。気候適応策の拡大が求められる中、市場ベースの適応手段を実践した。

 

 今回、初めて設けたのがサステナブル・イノベーション賞。野村證券が日本エアーテック社発行の新株予約権を活用したファイナンス(FITs)を選出した。同仕組みは、日本独自のサステナブルファイナンスの発展に貢献すると期待される。

 

 グリーンボンド賞は、東京の虎ノ門・麻布台で街ぐるみグリーン開発を手掛けるためにグリーンボンドを発行する森ビルと、自治体として東京都に次ぐグリーンボンドを発行した長野県を、それぞれ選出した。また三菱UFJフィナンシャル・グループは今年2度にわたって、コロナ対策の資金調達としてサステナビリティボンドを発行したことから、サステナビリティボンド賞を新たに設定した。

 

 国際賞には、東京市場で円建てグリーンボンド国債(サムライ債)を発行したハンガリーを選んだ。東京市場でグリーンボンド国債が発行されたのは初めて。東京市場の国際化につながる一例といえる。国際賞の選考は2016年以来4年ぶり。

 

 NPO/NGO賞には、みずほFGを対象に、金融機関の経営についてパリ協定との整合性を求める形で、株主提案をした環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)を選んだ。KIKOの提案は海外市場でも日本の金融機関の気候貢献への関心を高める効果も発揮した。

 

 地域金融賞には、地銀初でコロナ対策のソーシャルボンドを発行した中国銀行と、自前のクラウドファンディングなどの運用でSDGsに立脚した地域密着型の取り組みを進める長野県信用組合とを選んだ。

 

 上記の2020年サステナブルファイナンス大賞の受賞企業・金融機関・団体等への表彰式は、年明け1月20日(水)午後3時から実施する予定(オンラインの方針)。