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野村ホールディングス、初のTCFDレポート作成。石炭等化石燃料関連取引先の「座礁資産リスク」を把握対象に。グループのCO2排出量は2030年度の中期目標をすでに超過達成(RIEF)

2020-07-20 15:19:31

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 野村ホールディングスは、気候変動対策にグループとしての取り組み方針を示す「野村グループ TCFDレポート」を発行した。TCFD 提言に沿った移行リスクについては、「炭鉱、油田、天然ガス資源等の座礁資産化が当社取引先 の業績に与える影響」等5項目を指摘した。グループのCO2排出量は基準年(2013年3月期)比で41.7%減と、2030年度に設定した中期目標を超過達成したことを明らかにした。

 

 また国連の持続可能な開発目標(SDGs)や気候変動のパリ協定の目標達成と整合性を持った金融機関行動をとることを宣言する「責任銀行原則(PRB)」に署名した。

 

 野村HDのTCFDレポートは、TCFD提言に沿って、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標、の4分野についての取り組み体制や実施状況を開示する内容。「ガバナンス」では、グループCEOを委員長とするESG委員会の下部組織として、グループ横断組織の「TCFDワーキンググループ」を設置した。WGの検討結果は、ESG委員会を通じて経営会議に報告されるとともに、取締役会にも報告される形で、経営判断に組み込む。

 

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 「戦略」では、サステナブルファイナンス分野での取り組みとして、今年4月に米「グリーンテック・キャピタル」社を買収したことで、ESG分野のプライマリー・サービスとアドバイザリー・サービスを強化したほか、今年度中に、複数の環境関連ファンドを立ち上げる予定であるとした。

 

 戦略のうち、リスク対応では、グループが直面する気候リスクのうち、物理リスクは、自然災害の甚大化による自社、取引先への被害のほか、不動産等のアセットベースド・ファイナンスの担保価値既存リスクを想定。

 

 移行リスクでは、①炭鉱・油田・天然ガス資源等の化石燃料資産の座礁資産化が、取引先の業績や信用力低下に与える懸念②気候変動リスクを市場化する過程でのトレーディング・ポジションや引き受けポジションへの影響③プロジェクトファイナンス案件でのレピュテーションリスク、転売機会減④顧客ニーズの変化による既存商品の陳腐化、新商品開発での競争優位性の低下⑤法規制環境の変化による既存ビジネスの減少または資本負荷の増大等によるコスト増、の5項目をあげている。

 

 そうしたリスクをマネージする「リスク管理」では、ESG委員会の下部組織として「クライメイト・リスク・ワーキンググループ」を設置、同WGが気候リスクのグローバルフレームワークを確立するとしている。リスク管理の手法としては、①新規取引のデューデリジェンス・プロセスでサステナビリティ関連要素を考慮②信用リスク管理で物理リスク、移行リスクを分析するプロセス導入の検討③シナリオ分析手法の検討④リスクの計測方法やガイドラインの策定ーーを構築中、としている。

 

 「指標と目標」では、買収したグリーンテックが過去10年でイノベーション企業に総額40億㌦の成長資金を調達したことを踏まえ、今後5年間に同額以上の資金調達支援を目標に設定した。グループ全体のCO2排出量については、2018年12月に中長期目標を設定しているが、そのうち2030年度の中期目標(13年度比32%削減)はすでに、今年3月末時点で41.7%の超過達成している。2050年度の長期目標(同65%削減)の前倒しについては明記していない。

 

https://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/holdings/20200715/20200715.pdf

https://www.nomuraholdings.com/jp/investor/library/tcfd/2020/pdf/all.pdf