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日本政策投資銀行、三菱ケミカルホールディングス向けに、同行初のサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)300億円を融資。サステナブル効果の明瞭性には課題も(RIEF)

2020-12-02 14:51:43

mitsubishicemicalキャプチャ

 

 日本政策投資銀行(DBJ)は、同行として初めてとなるサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を、三菱ケミカルホールディングスに300億円を提供した。SLLでは三菱ケミカルは、廃プラスチックの再利用に関する定量目標(SPTs)を設定、同目標を達成すると、融資金利引き下げの優遇を受けることができる仕組みだ。ただ、SPTsの目標値等は公表されていない。

 

 SLLは国際的なシンジケートローンの団体である英国拠点の「Loan Market Association」等が定める「サステナビリティ・リンク・ローン原則(SLLP)」等に準拠している。今回の融資期間は10年。11月30日に融資契約を締結した。

 

 三菱ケミカルはSPTs達成に向けて、廃プラを分解して再び化学品を作り出す「ケミカルリサイクル」手法の実用化を目指すとしている。グリーンボンド等のESG債やグリーンローンの場合は、資金使途対象の事業に調達資金が投じられ、CO2削減等の具体的な成果が示される。これに対して、SLLによる融資の場合は、融資対象企業の一般資金需要に充当されので、SPTsを公表しないと、環境貢献効果を市場が判別できないことになる。

 

 DBJは、三菱ケミカルが設定したSPTsを達成できるかどうかについては、「貸付期間中の定期的な対話によりSPTsの達成に向けた伴走を行う」としている。ただ、DBJにはケミカルリサイクル分野の専門家がいるわけではなく、「伴走」が従来のモニタリングとどう違うのかも定かではない。

 

 一部の報道によると、達成した場合の金利引き下げ幅は0.1%未満とされる。SLLは融資先企業のESG、サステナビリティへの投資促進につながると期待されている半面、今回のようにSPTsは開示せず、インセンティブの金利引き下げ率もわずかなことから、実際の改善効果については、疑問が残る側面を抱えている。

 https://www.dbj.jp/topics/dbj_news/2020/html/20201202_203004.html

https://www.mitsubishichem-hd.co.jp/news_release/pdf/01006/01143.pdf