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オランダの大手年金APG、韓国電力公社(KEPCO)から投資資金を引き揚げ。ベトナムでのブンアン2石炭火力発電事業等への参加決定を踏まえ。日本の参加企業へ波及の可能性も(RIEF)

2021-02-03 15:42:52

AFP001キャプチャ

 

  オランダの大手年金基金APGは韓国の韓国電力公社(KEPCO)の保有株を全株売却したことを明らかにした。KEPCOがベトナムやインドネシアでの新規石炭火力発電事業への投資を停止しないことを理由としている。対象となる事業には、三菱商事が主導するベトナムのブンアン2石炭火力発電計画が含まれるとみられる。同事業を推進する三菱商事および日本の3メガバンク等に対しても欧州を中心とする機関投資家が投資引き揚げ(Divestment)対象にする可能性が高まってきた。

 

 APGによると、同機関はKEPCOに対して、ベトナムとインドネシアで新規の石炭火力発電事業への参画することを反対してきた。だが、KEPCOはブンアン2事業への参加継続を決定したほか、他の事業からの撤退にも応じなかった。APGはこうしたことを同社の保有株を全額売却の理由としている。

 

 APGはベトナムとインドネシアでの具体的なプロジェクト名はあげていない。だが、ベトナムでは昨年末に、日本の公的機関である国際協力銀行(JBIC)がブンアン2の事業会社と融資契約を結ぶとともに、KEPCOと同事業のEPC(設計・調達・建設)を担当するサムソンC&Tの参加決定が報道されている。https://rief-jp.org/ct8/109609?ctid=75

 

 ブンアン2事業の事業主体は「Vung Ang II Thermal Power Limited Liability Company(VAPCO)」。600MWの超々臨界圧石炭火力発電所(USC)2基建設する計画。実際の事業主体は三菱商事で、当初は香港の電力会社CLPホールディングスも出資の予定だったが、CLPは2019年12月に脱石炭方針を発表し、同事業から撤退した。KEPCOはCLPの代わりに事業参画したことになる。またサムソンC&TもGEが引き揚げた後を引き継ぐ形だ。

 

 APGは石炭火力発電事業の継続を理由として、KEPCOを含めて8社の保有株を売却したとしている。これらの企業が昨年中に実施した石炭火力発電事業での発電量は90GWで、その年間CO2排出量は6億2400万㌧に相当するという。KEPCOを含む8社の保有する石炭火力発電はすべてアジアに設置されている。

 

 APGアセットマネジメントのサステナビリティ・スペシャリストのYoo-Kyung (YK)氏は「KEPCOが新規石炭火力発電投資への参加を止めなかったのは残念だ。同事業への参画は同社がパリ協定の目標達成に本気でコミットするかどうかの『リトマス試験紙』だった」と指摘している。

 

 同氏の指摘を踏まえれば、ブンアン2事業を推進する三菱商事と、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行の4行も、パリ協定の目標支援の『リトマス試験紙』で、赤信号がついたともいえる。同事業に対しては、これまでノルウェーのNordea Asset Management、アムンディ、AP7、アリアンツ等の欧州系の機関投資家が公式に懸念を表明している。

 

https://www.marketforces.org.au/research/vietnam/vung-ang-2/