HOME1. 銀行・証券 |三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、環境・社会ポリシーフレーム改定。石炭火力向け融資の禁止対象は既存設備の拡張も含む。パーム油向けでは「NDPE」遵守の公表求める(RIEF) |

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、環境・社会ポリシーフレーム改定。石炭火力向け融資の禁止対象は既存設備の拡張も含む。パーム油向けでは「NDPE」遵守の公表求める(RIEF)

2021-04-26 23:48:46

MUFG001キャプチャ

 

 三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(MUFG)は26日、同社の環境・社会ポリシーフレームワークの改定を発表した。カーボンニュートラル実現に向け、石炭火力発電へのファイナンスについては、従来の新規事業の停止に加えて、既存発電設備の拡張にも投融資をしないことを明記した。またパーム油向けファイナンスでは、融資先に『森林破壊ゼロ、 泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)の遵守を求める等の規定を盛り込んだ。6月1日から適用する。

 

 石炭火力発電向けのファイナンスで、投融資の対象外を新設火力事業だけでなく、既存事業の拡張にも広げることで、他のメガバンクより「半歩」ほど前に出た形だ。また、改定前は海外での火力発電事業を前提にして「当該国のエネルギー政策・事情等を踏まえ、OECD公的輸出信用アレンジメントなどの国際的ガイドラインを参照、他の実行可能な代替 技術等を個別に検討した上で、ファイナンスを取り組む場合がある」としていた例外規定を、「パリ協定目標達成に必要な、CCUS、混焼等の技術を 備えた石炭火力に限定」に変えた。

 

 この変更は米国を含めて、海外での途上国向け石炭火力発電へのファイナンスを阻止する動きが広がっている一方で、国内の2030年目標を「46~50%(2013年度比)」と国際公約したことで、海外に限らず、国内でもCCUS(カーボン回収利用貯留)付き火力やIGGC(石炭ガス化複合発電)等への需要が出てくることを踏まえたものとみられる。

 

  森林、パーム油セクターへのファイナンスでは、パーム油向けで「NDPE」遵守の公表をファイナンスの条件にし、公表がない場合は履行に向けた行動計画の作成を求めるとした。また違法な森林伐採や保護価値の高い地域での森林破壊(deforestation)が行われていないことの確認も追加した。

 

 MUFGはこうした改定を、新たな経営計画である「MUFG Way」の取り組みの優先課題である「サステナブル経営」の一つとなる「気候変動対応・環境保全」対策として位置付けている。http://rief-jp.org/ct1/112658?ctid=67

 

 こうした改定に対して、環境NGOからは、「半歩前進、その歩み鈍し」といった評価の声があがっている。気候ネットワーク国際ディレクターの平田仁子氏は、「改定はいくつかの部門で対策強化が図られているが、急を要する気候危機への対応は、なお不十分。日本の金融機関を代表するMUFGには今後、パリ協定の1.5度目標達成と整合した、より野心的な石炭関連の方針を策定し、その他化石燃料や森林破壊を引き起こす産品に関する方針の強化を期待する」と指摘している。

 

  350.org Japan代表の横山隆美氏は、「MUFGのセクター方針は基本的にプロジェクトファイナンスに限定され、コーポレートファイナンスが含まれていないことが大きな懸念事項。石炭火力セクターのポリシーはバリューチェーン全体を網羅したコーポレートファイナンスへと拡大し、パリ協定に整合的な時間軸でのフェーズアウト戦略を策定すべきだ」と求めている。

 レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表の川上豊幸氏は、「パーム油セクターで『NDPE』遵守の公表を求めるとしたことは評価できる。しかしNDPE基準の適用はパーム油のプランテーション企業に限定され、パーム油購入企業には適用されない。紙パルプなど熱帯林や泥炭地の破壊を引き起こしているパーム油以外の産品にも適用すべき。またNDPE方針の遵守には独立検証が必要だ」としている。

https://www.mufg.jp/dam/pressrelease/2021/pdf/news-20210426-001_ja.pdf

http://japan.ran.org/?p=1817