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三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、気候変動対策で強化方針。投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量をScope3まで把握へ。グループの排出量は2030年実質ゼロに(RIEF)

2021-05-13 15:12:16

SMBC3キャプチャ

 

 三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は12日、気候変動問題への対策強化方針を公表した。「2050年カーボンニュートラル」に向けた長期の「気候変動対策ロードマップ」と、短中期の「アクションプラン」を設定、第一段階として①投融資ポートフォリオの温室効果ガス(GHG)排出量把握と中長期目標設定②SMBCグループ全体のGHG排出量2030年実質ゼロ③2029年度までのグリーン&サステナブルファイナンス総額30兆円への引き上げ――等を盛り込んだ。①の投融資先のGHG削減の中長期目標値は示していない。

 

 新方針では石炭火力発電の新設、拡張案件は支援しないとの方針とし、従来の記述で例外として認めていた超々臨界圧石炭火力発電(USC)は除外する形をとった。ただ、環境NGOへの説明では「CCUSやアンモニア・バイオマス混焼等、トランジションに資するものについては支援を検討可としている」と、SMBC側が指摘したとしている。本来は、そうした例外があるならば記載すべきだ。

 

 金融機関として、もっとも重視されるのが本業の投融資活動での低・脱炭素化だ。今回の方針では、「ロードマップ」「アクションプラン」を示し、現在の中期経営計画中の「アクションプランSTEP1」の最終年度(2023年度)に中長期目標を開示するとしている。投融資ポートフォリオのGHG排出量について、サプライチェーンを含めたScope3排出量まで把握する作業を、排出量の多い業種(石油・ガス、電力)から始め、順次対象を広げる、としている。

 

 しかし、この説明では、炭素集約型企業のScope3情報の把握に、23年度まで3年の時間をかけることになる。同情報はSMBCだけに必要なものではなく、本来はTCFDの情報開示に賛同した企業は自ら開示すべきデータでもある。TCFDの旗を振ってきた金融庁や経済産業省も、本来の政策として取り組むべきテーマだ。SMBCも、これから3年がかりで、データ整備に取り組むという「悠長な」方針を立てるより、政府に対して情報開示の迅速な制度整備を求めるべきだろう。

 

 グリーン&サステナブルファイナンス総額については、29年度までに、従来の10兆円から3倍の30兆円に増大させる方針に切り替えた。だが、投融資先のGHG排出量や気候変動行動の情報を十分に把握できていないと、グリーンファイナンスはグリーンウォッシュに転じるリスクを抱える。その意味からも、金融界は金融庁、経産省に、迅速な政策対応を要請することが求められる。

 

 リスク管理体制の強化としては、「気候変動リスクをトップリスクの一つ」に位置付けるとともに、炭素集約型企業向けの投融資となる「ブラウンアセット」と、グリーンファイナンス対象資産の「グリーンアセット」の両者のモニタリング体制の整備も課題としてとりあげている。

 

 メガバンクでは三菱FJフィナンシャル・グループ(MUFG)が4月末に環境・社会ポリシーフレームワークの改定を発表し、カーボンニュートラル実現に向け、石炭火力発電へのファイナンスでは、従来の新規事業の停止に加えて、既存発電設備の拡張にも投融資をしないことを明記している。https://rief-jp.org/ct1/113660

https://www.smfg.co.jp/news/j110309_03.html

https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-05-12/SMBC-coal-policy-update