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政投銀と三井住友信託銀、商船三井のLNG燃料フェリーの建造費を資金使途とする「トランジションローン」を組成。CO2削減率は20%止まりだが、国費補助も(RIEF)

2021-09-10 14:06:07

MOL001キャプチャ

 

 日本政策投資銀行と三井住友信託銀行は9日、商船三井が建造するLNG燃料フェリー2隻向けに、「トランジションローン」を提供する契約を結んだと発表した。融資額は開示されていない。建造する船舶のCO2削減率は従来型の船舶燃料油に比べて20%の削減にとどまる。2030年に46%削減を宣言する政府方針と一致していると思われないが、経済産業省は同事業をモデル事業として補助金を交付する。

 

 ローンの対象となる事業は、商船三井が建造するLNG船の「さんふらわあくれない」、「さんふらわあむらさき」の建造費。内航船で、大阪ー別府航路に就航の予定。従来の重油専焼フェリーに比べ、LNG燃料を使うため、硫黄酸化物はほぼゼロとなる。ただし、CO2排出量の削減は国が30年目標とする46%削減よりも低い「20%以上」とされている。

 

 外部評価を担当した日本格付研究所(JCR)は「国際資本市場協会(ICMA)のクライメート・トランジションファイナンス・ハンドブック、経産省等のクライメ ート・トランジション・ファイナンス基本指針で定めた要素に適切に設定され、開示されている」として確認したとしている。

 

 ただ、融資額や融資条件等は開示されていない。融資期間は、22~23年に予定する両船の竣工後、15年の長期融資となるため、2030年を超える。融資は政投銀と三井住友信託がアレンジャーとなり、地域金融機関等11行が参加するシンジケート・ローンとする。各行でリスクシェアをする形だ。

 

 同ローンは経産省のモデル事業とされ、JCRの審査に伴う費用の9割が国費補助となる。経産省が同事業をモデルとしたことで、低炭素の「トランジション概念」は、現行よりCO2削減率が20%でも国のお墨付きが得られることを確認する形になった。改めて、「日本版トランジション概念」の妥当性が問われそうだ。

 

 経産省のモデル事業としての評価は、「クライメート・トランジション・ファイナンスモデル事業にかかるモデル性審査委員会」が承認する手順だ。同委員会は座長が伊藤邦雄(一橋大CFO教育センター長)、秋元圭吾(地球環境産業技術研究機構主席研究員)、関根泰(早稲田大理工学術院教授)、高村ゆかり(東京大未来ビジョン研究センター教授)、松橋隆治(東京大工学系教授)で構成している。

 

 商船三井は、「2050年までにネットゼロ・エミッションを達成することを目指し、2021年6月に『商船三井グループ 環境ビジョン2.1』を策定した。その実現に向けた『クリーン代替燃料の導入』戦略として、2030年までにLNG燃料船を約90隻投入する予定」としている。

https://www.dbj.jp/upload/dbj_news/docs/20c454e2115dbd0b01acc417bebd2037.pdf

https://www.smtb.jp/-/media/tb/about/corporate/release/pdf/210909.pdf

https://www.mol.co.jp/pr/2021/21078.html