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三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、環境・社会ポリシー改定。石炭火力向け融資ゼロ対象にコーポレートファイナンスも含めるほか、電力、石油・ガス向け中間目標も設定(RIEF)

2022-04-01 17:32:51

MUFGキャプチャ

 

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は1日、気候変動等のサステナビリティ対応の融資方針である「MUFG 環境・社会ポ リシーフレームワーク」と「Prograss Report」を改定した。石炭火力発電所向け融資について従来のプロジェクトファイナンスに限定せず、コーポレートファイナンスも含めて2040年にゼロとする目標を定めたほか、電力、石油・ガス向け融資の2030年中間目標を設定するなど、「脱化石燃料ファイナンス」の方針を強化した。

 

 「2050年ネットゼロ」に向け、グローバルな金融機関は、化石燃料関連産業への投融資「financed emission」の縮減を求められている。MUFGはNet-Zero Banking Alliance (NZBA)へも参画したことから、従来からの環境・社会ポリシー等を強化した。

 

 このうち、石炭火力向け融資はプロジェクトファイナンス(約約3800億円(37.7億㌦、2020年)に加えて、コーポレートファイナンス(約1200億円、同)も2040年にはゼロとする。石炭鉱業向け融資停止措置は、従来は山頂除去採掘(Mountain Top Removal、MTR)方式に限定していたが、発電事業向けの新規の一般炭採掘事業にも広げた。

 

MUFGの脱炭素ファイナンスのマイルストーン
MUFGの脱炭素ファイナンスのマイルストーン

 

 投融資ポートフォリオのネットゼロ化に向け、電力、石油・ガス事業向けの2030年の中間目標を設定。それぞれの排出削減基準を定めた。電力は排出原単位で従来の349gCO2e/kWhから156~192gCO2e/kWhへとほぼ半減させ、石油・ガスは絶対排出量で83MtCO2eから15%~28%削減する目標とする。

 

 MUFGでは、これらの目標達成に向けて、顧客企業のGHG排出量を的確に把握したうえで、削減計画の策定支援や実 行、カーボンオフセット等のソリューションを提供するとしている。顧客企業へのエンゲージメント活動では、東京海上日動火災との連携によるTCFDコンサルサービスや、サステナビリティ・ リンク・ローンでの日本格付研究所との協働等も進める。カーボンプライシングにも取り組む。

 

 運用面では、今年10月までに、 2050年までのネットゼロ達成に整合する運用資産の割合についての2030年の中間目標を設定するとしている。

 

 投融資先の脱炭素を促すだけでなく、自社排出量のネットゼロ化も進めるため、グループ・グローバルベースで自社のGHG排出量を計測・集計し、グループの中心になる銀行・信託・証券の国内自社契約電力の100%再エネ化を完了。これにより国内排出量の約6割を削減したことになる (グローバル排出量の約3割)。国内全社の自社契約電力を2022年度中に100%再エネ化する。

 

 MUFGの環境・社会ポリシーの改定に対して、350.org Japanなどの環境NGO6団体は共同声明を発表、「MUFGの気候変動関連ポリシーおよび脱炭素に向けたセクター別2030年の定量目標の設定での一定の前進を歓迎するが、いくつかの問題点がある」と指摘した。

 

 その一つは、石炭火力向け融資の削減対象をコーポレートファイナンスに拡大した点。拡大自体は「前進」だが、プロジェクト紐付け以外のコーポレートファイナンスには歯止めがないと指摘。新規および既存発電所の拡張を含めすべての石炭火力ファイナンスを制限する海外の銀行に比べて「まだ不十分」とした。2040年のコーポレートファイナンスでのネットゼロ目標も、世界の気温上昇を1.5以下に抑えるためには、石炭火力稼働を先進国で2030年、世界全体で2040年にはゼロ化が求められており、不十分としている。

 

 このほか、電力向けの中間目標を排出原単位で設定したこと、石油・ガス向けの中間目標の削減率の低さ、対象範囲の狭さ、また石炭鉱業向け融資停止措置の拡大についても、既存案件の拡張事業や、石炭採掘企業向けコーポレートファイナンスなどは依然として可能であるなどの点を「抜け穴」と指摘している。

 

https://www.mufg.jp/dam/csr/report/progress/202204_ja.pdf

https://www.mufg.jp/dam/pressrelease/2022/pdf/news-20220401-001_ja.pdf

https://world.350.org/ja/press-release/20220401/