世界最大の中国工商銀行(ICBC)の株主総会に合わせ環境NGOが国際協調での抗議。東アフリカの原油パイプライン計画への関与で。三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)も関与(RIEF)
2022-06-24 22:45:12
銀行等に対する脱炭素の投融資行動を求める株主提案や要請行動がグローバルに広がる中で、東アフリカの石油パイプライン事業に関与する中国国営企業の中国工商銀行(ICBC)に対し、中国や各国の環境NGOは同社の23日の株主総会に合わせて同日、世界主要国でのICBCの拠点で、抗議のための株主向け直接行動を展開した。ICBCは同事業へのアドバイザーの一社で、29日に株主総会を開く三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)も同じ立場にある。
(写真は、ICBCの東京支店前で抗議のキャンペーンをする日本の環境NGOのメンバーたち)
ICBCがアドバイザーになっている対象事業は、原油が生産されるウガンダから、積出港があるタンザニアまで総延長1410kmの石油パイプラインを建設しようという計画だ。仏エネルギー大手のTotalが中心となり、エネルギー確保を目指す中国の中国海洋石油集団有限公司(CNOOC)、タンザニアの石油開発公社等が共同で開発を目指している。
今年2月には、ウガンダのヨウェリ・ムセビ大統領と、タンザニアのフィリップ・ムパンゴ副大統領、Totalの会長兼CEOのパトリック・ジャン・プヤネ氏らの間で最終投資判断の合意がなされた。しかし、同パイプラインは両国の多くの人々が飲料水として頼るビクトリア湖に沿って建設する計画であるほか、パイプライン敷設のために多くの住民を強制疎開させ、周辺の自然破壊も増大させるなどの大きな課題を抱えている。
事業主体のうち、ウガンダとタンザニアの両国に対しては、南アフリカのStandard Bankが、Totalに対してはSMBCが、そしてCNOOCに対してICBCがそれぞれアドバイザーとして関与している。環境NGOらの調査によると、ICBCは2016年から20年の間にCNOOCに対して6億4700万㌦を融資している。SMBCのTotalに対する融資額は同期間で10億800万㌦。3金融機関は、計画が進行すると融資資金を供与するとみられており、日米欧中の他の主要金融機関もプロジェクトファイナンスのシンジケーションに参加するとみられている。
こうしたことから環境NGOの「#StopEACOP」、「#GoCleanICBC」、350.orgのほか、多くのNGOが同事業の停止を求め、23日に開いたICBCの株主総会に合わせて、同社に投資する株主に向けて、EACOP事業への関与の停止をICBC側に求めるよう株主に要請する行動を世界の主要国で展開した。
今回のICBCへの抗議行動は、中国政府が昨年、海外での新規の石炭関連事業への投融資を実施しないと宣言していることを受けたもの。だが、ICBCは同宣言は、現在操業中の石炭事業で影響を受けるコミュニティ等を含めないほか、海外での石油・ガス事業への投融資への関与は除外されていると主張しているという。
NGO側は2050年ネットゼロをグローバルに達成するためには、新規の化石燃料事業の実施余地はすでにない、と指摘。さらにEACOP事業からは、すでに20以上の金融機関が同事業によって地域コミュニティ住民の健康や、人権、環境に及ぼす負の影響増大を否定できないとして、事業撤退を表明していることも強調している。主導役のICBCに対しては、化石燃料事業へのファイナンスから再生可能エネルギーへの移行のためのファイナンスのグローバル・リーダーになるよう要請している。
29日に株主総会を迎えるSMBCに対しては、日本の350.org Japanが、豪マーケット・フォースや気候ネットワーク(KIKO)等の5団体とともに、同社の定款に「2050年ネットゼロ」目標達成の誓約と、現状の投融資行動が一貫性を欠かないための「グリーンウォッシュ」抑制策の記載を求める等を内容とした株主提案を行っている。https://rief-jp.org/ct1/124268?ctid=67
StopEACOP Campaignのコーディネーターを務めるOmar Elmawi氏は「ICBCは世界最大の銀行として、気候リーダーシップを発揮する必要がある。SMBCやStandard Bankとともに金融アドバイザーとして事業に関わりを続けることは、事業で影響を受ける人々の命や、自然、気候を『ロシアン・ルーレット』のように弄ぶことと同じ無謀なことだ。ICBCは、他の金融機関がすでに撤退を決めているEACOPをはじめとして、『Dirty fossil』へのファイナンスを止める時だ」と呼び掛けている。