ASEAN最大のラオスの陸上風力発電所の建設始まる。日本、中国、タイ、ベトナム等の各国企業が協働。日本から三菱商事。金融面はアジア開発銀行を軸に三井住友銀行も参加（RIEF）
2023-05-03 01:04:10
日本、中国、タイ、シンガポール、ベトナム等のアジア諸国の企業と、アジア開発銀行（ADB）、アジアインフラ銀行（AIIB）等の公的機関が連携する形で、ラオスに建設するASEAN最大の陸上風力発電事業の建設作業が始まった。事業主体は国際合弁企業の「Monsoon Wind Comany」で、ラオス国内に133基の風力発電設備を設置し、総発電量600MWを国境を超えて、隣国のベトナムに送電する計画だ。日本からは事業主体に三菱商事、ファイナンスに三井住友銀行、国際協力銀行等が参加する。2025年の稼働を目指す。
事業主体のMWCは、タイの再エネ大手BCPG（45%）、同サイアムグループの「IES Group」（31%）、三菱商事（24%＝100%子会社のDiamond Generating Asia, Limited経由）の3社が共同設立した「Impact Energy Asia Development : IEAD」が85%以上を出資し、ラオスのSMP Groupが15%以下の出資でラオス国内に設立している。
ラオスは現在、国内で豊富な河川の水量を利用した水力発電が国内発電量の70%を占める。発電量の約80％は隣国のタイやベトナムに売電しており、その売電収入は同国の輸出収入の30％を占める発電大国だ。昨年にはシンガポールにも売電を開始、さらにカンボジア向けに売電するため送電設備の建設を始めているという。「東南アジアのバッテリー国」の異名を持つ。
さらに水力発電に加えて、高地を吹き抜ける風を生かした風力発電事業への取り組みを進めており、今回のMWCプロジェクトがその本格取組の第一号となる。現在、MWCを含め少なくとも10件の風力発電事業が国内で計画段階に入っており、それらの総発電量は3.6GWに上る。
着工したMWC事業は、ラオスのセーコーン県とアアッタプー県にまたがる標高1200m～1600mの高地に、高さ110mの風力発電設備を133基建設する計画だ。発電設備は中国の「Power Construction Corporation of China （PowerChina）が請け負い、EPC（設計、調達、建設）を担当する。発電した電力は、ベトナム電力（EVN）に25年の電力購入契約（PPA）で売電する。ベトナム政府とラオス政府の間では、両国の間では、2030年までに合計5000MWの電力をラオスからベトナムへ輸出する計画で合意しているという。
ファイナンスの軸になるのはADBだ。ADBは同事業のファイナンス全体の組成等のリードアレンジャーを務めた。ファイナンスのパッケージは「A loan」としてADBが1億㌦を通常融資を出し、「B loan」として1.5億㌦を、タイのサイアム商業銀行（1億㌦）と三井住友銀行（0.5億㌦）がそれぞれ融資する。
さらにADBがソフトローンとして、「Leading Asia’s Private Infrastructure Fund （LEAP）」なカナダの気候ファンド、アジアのプライベートセクター（CFPS、CFPSⅡ）からの資金に加え、パラレルローンとして、日本の国際協力銀行（JBIC）、AIIB、タイ輸出入銀行等の公的資金も組み込み、総額6億9200万㌦のブレンデッドファイナンス案件を仕上げた。プロジェクト全体での総事業費は9億5000万㌦に達するという。
アジア各国に石炭火力発電の売り込みで競っていた日本と中国が、今回の風力発電事業では、それぞれの強みを生かす形で協働できたことは、今後の再エネ事業推進のモデルになる期待もある。
Monsoon Wind – Monsoon Wind (monsoonwindasia.com)
Construction kicks off at Southeast Asia’s largest wind farm (renewablesnow.com)
Research Institute for Environmental Finance