三菱UFJ銀行頭取。日本生命からの出向者による内部情報漏洩発覚で、保険会社からの出向者受け入れ廃止の方針。両社とも、根っこに「コンプライアンス意識」の希薄化と形骸化(RIEF)
2025-07-18 00:47:23
(写真は、銀行の内部情報を、日本生命の出向者に持ち出されていたことを認めた三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取=日本経済新聞からの引用)
各紙の報道によると、三菱UFJ銀行頭取(現全国銀行協会会長)の半沢淳一氏は、17日の協会長記者会見で、日本生命保険からの出向者が三菱UFJ銀行の内部情報を持ち出していた問題を受けて「三菱UFJ銀行として保険会社からの出向者の受け入れを2026年3月末までに廃止する方向で検討している」ことを明らかにした。同行で受け入れている保険会社からの出向者は200人弱という。同氏は出向者廃止の検討について「保険代理店としての自立性を確立し、顧客本位の業務運営をさらに徹底するため」と説明し、今後は「出向者が担っていた業務を内製化するなど必要な対応を進めたい」としたという。
同行が受け入れている保険会社の出向者数の200人弱は、他のメガバンクより多いという。銀行での保険販売は1980年代後半から本格的に始まった。銀行にとって生損保の保険商品は販売手数料を稼げる有望な金融商品となっている。ただ、銀行行員には保険の専門家はほとんどおらず、各銀行とも、保険会社の出向者に依存する「丸投げ」型の営業体制をとっている。
記者会見した半沢頭取は、日生の事案について「詳細は調査中」としつつ「私用のスマートフォンなどが利用されるなど当行の情報セキュリティーを回避した手口だった可能性がある」と述べた。出向者による「意図的な情報の入手」だったことを認めた形だ。三菱UFJ銀行では、今年2月には損保最大手の東京海上日動火災保険からの出向者が顧客情報を出向元に漏洩させる事案も発覚している。
各紙によると、同不祥事案は、東京海上日動火災と東京海上日動あんしん生命保険の三菱UFJ銀行に出向していた複数の社員が、2020年から24年にかけて同行の顧客情報を出向元に漏洩していたという。同情報漏洩によって、銀行の取引や業務上の関係がある31法人の情報と、個人情報3万7000人分が流出したとされる。
このうちの法人関係の漏洩情報は、三菱UFJ銀内の保険商品の販売額や売れ筋商品に関する資料だったとされる。保険契約の事例、デジタル化の推進に関連する情報なども流出したという。東京海上は漏洩した情報を、自社の営業施策の進捗把握などに利用していたとされ、今回の日生の出向者による内部情報漏洩と似ている。
国内銀行のトップバンクである三菱UFJ銀が、生保、損保それぞれのトップ企業から受け入れた出向者に、自社の顧客情報を「盗み出されていた」ことは、「驚き」以外の何物でもない。「盗み出す側」の犯罪意識の希薄さ、「盗み出される側」の情報管理の杜撰さは、コンプライアンスの厳格化を重視する米欧の大手金融機関に比して、ともに「異常」に映る。
保険会社の出向者による行為は、今回発覚した担当者だけの個人的プレイではなく、1980年代からの保険商品の銀行窓口販売の開始以降、「出向ビジネス」として続けられてきた可能性が考えられる。長年の出向体制の継続と、業務の丸投げ依存で、銀行自身が、銀行の顧客情報が流出しても、気づかなかったのか、あるいは気づいていても、保険業務の依存関係を重視して、大目にみていたのか。だとすると、結局、「顧客の情報」だけが、銀行でも、保険会社でも、「軽んじられて」きたことになる。
三菱UFJ銀が保険会社から受け入れてきた出向者の多くは、保険商品の販売・営業に直接携わってきた。今後、出向者は出向元に戻るか、三菱UFJ銀に転籍するという。銀行が保険商品を金融商品として顧客に販売し続けるとすれば、自前の保険専門家を確保し、銀行顧客の信頼性を重視するならば、保険小売子会社を設立する必要があるかもしれない。ただ、半沢氏は「保険代理店としての自立性を確立し、お客さま本位の業務運営をさらに徹底する」とし、あくまでも保険会社の「代理」での営業体制を維持する考えのようだ。
半沢氏は、日生からの出向者による内部情報の漏洩をめぐっては、生保各社との契約書で守秘義務を明記し、出向者個人とも機密保持の誓約書を結んでいたと説明したという。だとすれば、守秘義務違反で日生に抗議するか、あるいは同情報漏洩で銀行側が被った損失(評判リスクの顕在化、顧客離れ等)が見込まれる場合は、訴訟の提起も想定される。ただ、同氏は「情報の適切な取り扱いの重要性を徹底するとともに、研修を継続的に実施していく」と述べるにとどめている。

一方、不祥事が発覚した日生の朝日智司社長は16日、今回の件について、「関係者に多大な迷惑と心配をおかけした」と謝罪した。そのうえで、他に情報を漏らした事例がなかったかなどを社内で調査する考えを示したと報道されている。
それによると、朝日社長は「詳細の調査を進め再発防止に努める」と述べ、早急に調査を終える考えを示した。流出した情報が営業秘密に該当する場合は不正競争防止法などに抵触する可能性があることから、同氏は同法に抵触する可能性に関し「われわれで判断せず、社外の弁護士と確認していく」とした。
日生によると、今回の出向者による情報漏洩については、今月10日に外部からの指摘を受け、14日に事態を把握したという。その内容は、2024年3月、同社の出向者が、社外秘の情報であることを知りながら三菱UFJ銀の内部資料を入手し、4月に日生側へ送っていたというもので、内部資料には、三菱UFJ銀の業績評価基準のほか他社の商品情報が含まれていたとされる。
日生は16日に、この問題を正式に公表し、「出向者が当社商品の販売推進につなげたいと考え、出向先の上席者に確認せずに持ち出した」などと説明していた。朝日社長は、事実関係の調査について「いったん社内で速やかにやる。社外の弁護士にも内容を確認してもらう」と述べ、そのうえで「判明した事実関係、真因に基づいて、今後このようなことを二度と起こさないための再発防止の徹底に努める」と話した、とされる。
(藤井良広)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB178DX0X10C25A7000000/?type=my#AAAUAgAAMA
https://digital.asahi.com/articles/AST7K3RSRT7KULFA00FM.html?iref=pc_business_top

































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