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日本の金融機関の化石燃料及び原発関連企業への投融資状況、総額13兆6400億円に。みずほグループが最大の投融資額。環境NGOの「350.org Japan」が調査報告書で指摘(RIEF) 

2016-08-16 17:36:53

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  気候変動問題に取り組む環境NGO等で構成する「350.org Japan」は、日本の金融機関による化石燃料や原発関連企業への投融資状況を調べた報告書を公表した。その結果、主要化石燃料企業や原発関連企業への総投融資額は1299億㌦(13兆6400億円)に達した。もっとも投融資額が多かったのはみずほフィナンシャル・グループだった。

 

 

 調査は、オランダの調査会社Profundo社が担当した。気候変動問題の原因物質となっている温室効果ガス(GHG)の排出量を減らすには、GHG排出量の多い石炭、石油などの化石燃料の使用削減が求められる。350.orgはグローバル規模で、化石燃料の使用を削減・ゼロにすることを目指すDivestment(投資引き揚げ)運動を展開しているが、消費者が利用する日本の銀行や資産運用会社を通じた資金が、化石燃料・原発関連企業にどう流れているかを明らかにするため、今回の調査を実施した。

 

 金融機関が化石燃料・原発関連企業を資金面から支え続けている限り、GHG排出量の削減は困難で、再生可能エネルギー発電への移行も妨げられる。調査は2011年1月から2016年4月までを対象期間とし、化石燃料関連企業17社、原発関連では電力会社6社と原子炉メーカーなどの12社を対象とした。

 

 対象企業は、化石燃料関連が、三菱商事、出光興産、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、国際石油開発帝石(INPEX)、JXホールディングス。原子炉メーカーが東芝、三菱重工、日立。電力関連会社として、関西電力、電源開発(J-Power)、東京電力、中部電力、九州電力、中国電力、神戸製鋼、東北電力、東京ガス、大阪ガス、北海道電力、北陸電力、四国電力。

 

 これらの企業に投融資する金融機関として、ホールディングスなどの親会社137社、子会社197社を選び、それぞれが対象企業となる化石燃料企業、原発企業に対して、どのような投融資を実施しているかを調べた。投融資形態は、シンジケートローン、株式や債券の発行引受、資産運用対象などへの組み込みなど。

 

 その結果、化石燃料関連企業への投融資・引受では、61金融グループ(親会社)で投融資・引受が確認され、総額1099億㌦(11兆5395億円)に達した。これらの金融機関グループのうち、もっとも多かったのは、みずほフィナンシャル・グループの383億9600万㌦(約4兆315億円)。同グループは、みずほ銀行のほか、みずほ証券、みずほインターナショナル、みずほ信託銀行、みずほフィナンシャルグループ、千葉興業銀行の6機関の合計で、全体の35%を占めた。

 

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    ついで、三菱UFJフィナンシャルグループ254 億6900万㌦(2兆6700億円:23%)、三井住友フィナンシャルグループ190億620万㌦(2兆円:17%)の順。3メガグループの中でも、みずほグループは三菱UFJグループより1兆3600億円、三井住友グループの倍近い規模となっており、突出ぶりが目立っている。

 

 一方、原発関連企業への投融資・引受は、電力会社を含む12社に対して、54の金融グループ(親会社)が、総額200億㌦(2兆1000億円)を投じた。金融機関グループ別では、ここでもみずほフィナンシャル・グループが79億3800万ドル(8330億円:39%)ともっとも多い。二位は三井住友フィナンシャルグループで、みずほの半分弱の38億6300万㌦(4056億円)、3位は「その他金融機関」、4位が三菱UFJフィナンシャルグループの26億6700万㌦(2800億円)。

 

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  金融機関が保有する化石燃料関連企業の債券・株式の総額は、190億㌦(1兆9950億円)でほぼ2兆円規模だった。原発関連企業の債券・株式総額は20億㌦(2100億円)。

 

 化石燃料関連企業の債券・株式保有がもっとも多い金融グループは、三菱UFJフィナンシャルグループで35億5300万㌦(3730億円:19%)、ついで日本生命と野村證券がそれぞれ28億7100万㌦(3014億円:15%)、三井住友トラストホールディングス21億3100万㌦(2237億円:11%)だった。

 

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 原発関連企業の債券・株式保有では、日本生命4億8200万㌦(506億円:23%)、三菱UFJフィナンシャルグループ3億8300万㌦(402億円:18%)、みずほフィナンシャルグループ2億8200万ドル(296億円:13%)などとなっている。

 

 逆に、化石燃料への投融資が今回の金融データベース調査では、確認されなかった金融機関は49社あった。原発関連企業向けファイナンスがない金融機関も78社あった(調査はシンジケートローンが中心で、単独の直接金融による融資は対象となっていない)。

 

 化石燃料向け投融資のない主な金融機関は、イオン銀行、沖縄銀行、ジャパンネット銀行、ゆうちょ銀行、じぶん銀行、城南信用金庫、北海道銀行、福島銀行、楽天、ソニーフィナンシャルホールディングス、東京スター銀行など。

 

 原発向け投融資のない主な金融機関は、あおぞら銀行、京都銀行、フィデアホールディングス、東邦銀行、城南信用金庫、京葉銀行、MS&ADインシュアランスグループ、武蔵野銀行、SBIホールディングス、住友生命など。

 

 報告書は今回の調査によって、気候変動や原発の影響が深刻化しているにもかかわらず、日本の金融機関が化石燃料・原発関連企業への投融資を続け、国内外の化石燃料・原発企業や事業への支援を維持している実態が明らかになった、としている。

 

 金融機関がこのままの投融資姿勢を続けると、「パリ協定で掲げた温室効果ガス排出量の削減目標の達成は困難になる」と警告するとともに、「原発関連への投融資を継続する日本のエネルギー政策は、再生可能エネルギーへの移行を妨げている可能性がある」と、日本のエネルギー政策の歪みについても指摘している。

http://world.350.org/ja/files/2016/08/日本語-Report-88-FINAL-89.pdf