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インドネシア・バタン石炭火力発電計画で 現地住民が国際協力銀行に融資撤回を求める異議申立書を提出。日本の3メガバンクも融資団に参加(RIEF)

2016-12-06 17:38:53

 

 日本政府が官民連携で建設を推進している「インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業」に反対運動を展開している住民代表が5日、同事業に21億㌦の融資を決定している国際協力銀行(JBIC)のジャカルタ事務所に対して「同事業への融資は、『JBIC環境社会ガイドライン』に違反しており、工事の即時中止」等を求める異議申立書を手渡した。

 

 異議申立書には、18人の代表者の署名とともに、900人以上の住民が支持を表明する署名が添付された。バタン石炭火力発電所計画は、電源開発(J-POWER)と伊藤忠のほか、インドネシアのアダロ・パワーの3社が出資して設立したビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)が事業主体。総額約45億㌦で、このうち約34億㌦をJBICとメガバンクなどの日本の銀行団が融資する予定となっている。

 

 JBICは日本勢の融資額の約60% の約 21億㌦をカバーする。民間金融機関9行のうち、みずほ、三井住友銀行など7行が日本勢。他の2行はシンガポールの銀行。メガバンクなどはJBICの融資を前提に融資団を形成している。

 

 発電所は建設されると、東南アジア最大級の石炭火力(1,000MW×2基)となる。発電地予定地周辺の住民らは、これまでの農業・漁業を中心とした生活基盤が大きく変質するほか、発電所のばい煙等による健康被害への懸念も強く、反対運動を根強く続けてきた。そのため工事の着工は4年近く遅れてきた。

 

 環境NGOのGreenpeaceが2014年に公表した調査レポートによると、バタン火力発電所が稼動すると、発電所からの有害物質の拡散で年間800人の死者の増加が見込まれ、発電全期間を通すと、3万人に膨れ上がると推計している。また同発電所はアジアでも最大級の石炭火力発電所であるため、建設が完成した2020年以降、毎年1080万㌧のCO2を排出する。http://rief-jp.org/ct1/61928

 

Btan2キャプチャ

 

 住民たちの反対運動が続く中、用地買収の過程で軍・警察等による反対派住民への脅迫や住民への暴力行為や嫌がらせなどの人権侵害が起き、インドネシアの独立政府機関である国家人権委員会が人権状況の改善を求める勧告を複数回にわたって出すなど、国際的にも問題視されてきた。

 

 しかし、同事業はインドネシア政府の国家プロジェクトでもあることから、JBICは今年6月に事業者のBPIと貸し付け契約を締結した。JBICは①事業は日本の高い技術を用いて海外インフラ事業を金融面から支援、日本の産業の国際競争力の維持・向上に貢献する②日本政府の「インフラシステム輸出戦略」と合致③インドネシア初のUSC方式のプロジェクトで、効率的かつ環境に優しい技術導入を実現できる――などを融資決定の理由とした。http://rief-jp.org/ct1/61827

 Batan3キャプチャ

 その後、建設作業は続いているが、反対派の住民たちは事業への強い反対の意思を示し続けているという。農地がフェンスで囲まれてしまったため農業ができなくなった農民は非常に厳しい生活を強いられており、少なくとも46名の地権者は土地売却を拒否したまま。事業者側による土地の強制収用後も土地補償金の受領を拒否しているという。

 

 また、沿岸部では石炭等を発電所に搬入するための埠頭の建設が始まった。こうした工事の影響で、豊かだった周辺の漁場は大きく影響を受けているという。このため、漁民による抗議行動も激しさを増している。異議申立がなされた同日、住民らと現地NGOは日本大使館前でも抗議行動を展開した。

 

 インドネシアでの石炭火力発電所事業で、地域住民から日本に対して異議申し立てがあったのは、先月、西ジャワ州チレボン石炭火力発電所(既設660kW、新設計画1000MW)による健康・生活被害影響を指摘したものに続く形となった。チレボン石炭火力事業は、日本の丸紅のほか、韓国中部電力などが出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)が建設主体で、総融資額5.95億㌦のうち、JBICは2.14億㌦を融資した。日本の3メガバンクも融資団に入っている。

 

 環境NGOのFOEは、「日本政府・JBICは、バタンやチレボン住民の異議申立てを真摯に受け止め、これまでに起きている問題の解決を図るとともに、地元住民の懸念、また、国内外からの指摘を軽視することなく、新設の石炭火力発電所建設に対する融資を早急に見直すべきだ」と指摘している。

 

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/batang/161205.html

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/161110.html