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東京電力、原発廃棄の場合の資産除去債務計上不足の懸念(FGW)

2011-03-24 16:09:24

東京電力の福島第一原子力発電所は放射性物質漏れ対策が続けられているが、仮に復旧後、ダメージの大きさから廃炉という事態に陥った場合、同社が計上する資産除去債務(ARO)が大幅な計上不足になる可能性が出ている。

資産除去債務は、企業が所有する有形固定資産の将来の除却に伴って発生するコストをもらrて、前もって推計評価し、貸借対照表に計上しておく会計ルール。2010年度の会計年度から適用された。電力会社の場合、原子炉などを廃棄する際の費用がこれに該当するため、各社は今年度第一四半期に推計額を計上した。東電の場合、ARO計上額は総資産の5.73%にあたる7641億円(第三四半期では7721億円)だった。東電はこれ以外に、過年度分を特別損失(572億円)として一括計上していることから、原発廃炉・解体のコストとして約8200億~8300億円分を手当てしている計算になる。

これらの費用は東電が稼働させている17機の原発全体の負債なので、単純に一機当たりで計算すると482~488億円となる。福島原発の廃炉対象が1、2号機だけか、3~4号機も対象になるかは不明だが、仮に4機が対象だと2000億円弱となる。ただ、すでに廃棄作業を進めている日本原子力発電の東海原発(茨城県東海村)の廃棄費用は885億円(解体費347億円、その他廃棄物処理処分費538億円)と見積もられており、しかも東電福島第一の各原発の発電量は東海原発の3~5倍の規模であることも考えると、福島原発の処理費は少なくとも1機1000億円、場合によれば2000億円規模になる可能性もある。

東海福島の原発処理費が膨らみそうなのは、解体費そのものより解体したコンクリートや鉄骨などの解体・廃棄物の処理費用が増加すると見込まれるためである。仮に4機同時廃炉になると、それらから出る廃棄物の埋め立て地を確保するのは容易ではないだろう。AROは長期間にわたって固定資産償却に加算して処理するため、企業の貸借対照表上への影響は少ない。だが、まとめて廃炉にするとなると、一気に4000億~8000億円規模の特別損失を計上しなければならない場合も想定される。東電は資産除去債務とは別に、災害損失引当金を700億円ほど計上しているが、すべてを取り崩しても到底、不十分である。

(注)東京電力の2010年度第一四半期決算書http://www.tepco.co.jp/ir/tool/yuho/pdf/2010_1-j.pdf