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<金融CSR点検:5>りそなホールディングス。リテール重視の独自戦略。だが、財務・非財務の価値統合化の視点は見えず(RIEF)

2017-09-19 23:20:42

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 りそなホールディングスは2回目の統合報告書を発行した。リテールファイナンスに重点を置いた同グループの価値創造モデルは、「高齢化の進展・都市部への人口集中」「産業構造の変化・グローバル化の加速」など6つの社会的変化・課題を受けて、「オムニチャネル」の展開で、顧客の信頼を勝ち得る戦略という。

 

 オムニチャネルとは、店舗やイベント、ネットやモバイルなどのチャネルを問わず、あらゆる場所で顧客と接点を持とうとする考え方。りそなは今年度から始まった新中期経営計画で「オムニチャネルの進化」「オムニアドバイザーの育成」「オムニ・リージョナル体制の確立」の3点を基本戦略と位置付けている。

 

 リテール特化とオムニ戦略を踏まえた顧客に肉薄するビジネスモデルは、りそな特有といえる。価値創造モデルで示す6つの社会的変化・課題の中には「企業の社会的責任の高まり」も盛り込まれている。この独自モデルに基づく企業価値向上のビジネス戦略は、リテール、信託、運用、不動産の各分野を統合したソリューションの提供で中長期的な収益構造改革を実現するとしている。

 

 こうした独自戦略の中で、財務・非財務の統合はどう位置づけられているのか。報告書ではCSRについて7ページを費やし、ガバナンス関連の13ページを含めると、ESGに全体の半分以上の20ページを割り当てたことになる。ただ、東和浩グループCEOによるメッセージは中期経営計画の説明に終始し、なぜか、オムニ戦略と財務・非財務の統合との関連についてはほとんど説明がない。

 

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 ガバナンス面の記載は、他の大手行とあまり違いはない。CSRについては「グループ経営理念」の基本姿勢を示すものとして「りそなWAY(グループ行動宣言)」を定め、それに基づいてグループCSR方針を示している。CSR方針はISO26000の中核課題を踏まえ、進むべき方向としてSDGs(国連持続可能な開発目標)を据えている。

 

グループCEOの東和浩氏
グループCEOの東和浩氏

 

 CSRの整理としては、これでいいのかもしれない。ただ、りそなWAY、CSRなどの理念は、前述の価値創造モデルの中では明記されていない。つまり、非財務情報は報告書内でそれなりに示されているが、それは従来型のCSR活動の説明にとどまっており、統合報告書で期待される財務情報との統合化、さらに踏み込んだ財務・非財務の統合価値化には視点が向いていない。

 

 統合報告書を作成している企業数は、日本が米欧よりも多いとされる。ただ、その多くが国際統合報告書評議会(IIRC)のテンプレートをなぞるだけだったり、あるいは既存のCSR報告書とアニュアルレポートを合本しただけのいわゆる「ホッチキス」型(異なる報告書をホッチキスで止めただけという意味)が多い。りそなの報告書もそれに近いようだ。

 

 オムニチャネルの発想の土台、とりわけオムニ・リージョナルの基盤には、地域の環境、社会、あるいは文化、教育、健康、安全等の非財務価値が連鎖してつながっているはずだ。それらの地域価値を踏まえた土壌の上に財務価値の芽を育て、花開かせることが、オムニ戦略の基本ではないのか。とすれば、まさに財務・非財務の統合こそが戦略の基本に据えられていなければならない。来年の統合報告書を期待したい。

 

http://www.resona-gr.co.jp/holdings/investors/ir/disclosure/hd/pdf/17_h/hd.pdf