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鳥取銀行の不採算支店閉鎖で、地元の町が"対抗措置”。公金の移し替えや職員の給与振替口座変更の要請等。問われるコミュニティバンクの意義(各紙)

2018-09-01 13:54:04

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 各紙の報道によると、地銀の鳥取銀行が鳥取県内の日南町の支店撤退を決めたことで、地元の町当局が憤慨、冷戦状態になっている。同町の増原聡町長は、事前の相談がなく、地域住民の利便性を損なうことへの「対抗措置」として、町が同銀行に預けていた約5億6千万円を全額解約するとともに、同銀行を給与振込口座としている町職員に対して、別の金融機関への変更を要請するメールを送付するなど、「徹底抗戦」の構えをとっている。

 

 (写真は、鳥取県日南町の町役場)

 

 日南町は中国山地に位置する人口4671人(7月末時点)の町。”騒動”のきっかけは、8月29日に鳥取銀行が日南町内の庄山支店を2019年1月21日に閉鎖し、業務を隣接する日野町の根雨支店に移管すると発表したことだ。庄山支店の閉鎖は来年1月の予定で、以後は、現金自動出入機(ATM)だけが残るという。

 

 朝日新聞は、増原聡町長のコメントとして、「移転は銀行の経営改善の一環として理解できる面もあるが、事前の相談もなかった。地域には窓口対応を望む高齢者も多い。地域の銀行として地域の預金者を大事にしてほしい」と訴え、「これ以上、町からほかの金融機関を撤退させないよう精いっぱいの意地を見せたい」と報じている。

 

来年1月で閉鎖される鳥取銀行庄山支店
来年1月で閉鎖される鳥取銀行庄山支店

 

 別の報道によると、発表前日の28日、同銀本店の担当者が増原聡町長を訪ね、移転の旨を報告した。その際、増原町長は「もう少し早い段階で相談してくれたら、町として存続を支援するなどの対応がとれた。撤退は避けられたのではないか」と話したが、担当者からは「決定事項のため」と告げられたという。

 

 そこで同町は、鳥取銀に預けていた同町の公金を、町内にある山陰合同銀行と鳥取西部農協の支店・支所に、ほぼ半分ずつ預け直した。鳥取銀には、税金などの出納用に、普通口座だけ残してあるという。

 

 同町の担当者は全額解約に踏み切った理由として「撤退する金融機関と残る金融機関のどちらを町として優先させるのか、と考えた。ATMを使えない高齢者も多いのに窓口対応ができないのは、町民の生活の質に関わる問題でもある。町に支店を残しているところを優先したい」と説明している。

 

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 鳥取銀側は「個別の話を申し上げるのは守秘義務に関わるためお答えできないが、丁寧な説明で関係者にご理解をいただけるよう努めたい」と話しているという。

 

 地銀は日銀のマイナス金利政策の長期化によって収益力を低下させている。その一方で金融庁からは健全性確保のため経営の合理化が求められるという環境下に置かれている。今回の鳥取銀の日南町支店の閉鎖も、中期経営計画での店舗再整備の一つで、同時に他にも4支店・出張所の撤退を公表している。

 

 一方で、日南町が指摘するように、地域をベースにする金融機関のサービスには、単に預貸金を提供するだけではなく、高齢者や地域の利便性に資するという側面も求められる。また、コミュニティバンクがコミュニティを離れては存在意義は薄れる。

 

 人口5000人前後の町で都市の地銀と同じ営業を続けること自体に無理があるともいえる。営業範囲を絞った協同組織金融機関等を軸に、地方のコミュニティバンキング全体を再編成する必要があるのではないか。

http://www.town.nichinan.lg.jp/

http://www.tottoribank.co.jp/torigin/news/2018/2018-08-29.pdf