HOME11.CSR |埼玉県信用金庫、海外送金の「資金洗浄」に利用される。不正送金額は約18億7000万円。送金実務はメガバンク。連携の不備を悪用される。ESGのG(ガバナンス)の欠陥露呈(各紙) |

埼玉県信用金庫、海外送金の「資金洗浄」に利用される。不正送金額は約18億7000万円。送金実務はメガバンク。連携の不備を悪用される。ESGのG(ガバナンス)の欠陥露呈(各紙)

2018-09-02 13:07:29

saitamakenshinnrenキャプチャ

 

 各紙の報道によると、埼玉県信用金庫(埼玉県熊谷市)が過去約2年間にわたり、海外送金の資金洗浄(マネーロンダリング)に利用された疑いがあるとして、金融庁が立ち入り検査をする方針という。不正に利用された海外送金額は約18億7000万円にのぼる。

 

 毎日新聞等が報道した。それによると、送金を依頼した企業と受取先企業の双方に営業実体が無く、送金先には北朝鮮と関係する可能性がある企業もあった、としている。金融庁は同信金のチェック体制に重大な不備があり、マネロンの抜け穴に利用されたとみている。

 

 報道は金融庁関係者の情報として、埼玉県信金は2016年5月から今年1月にかけ、埼玉県ときがわ町の自動車輸出入会社の依頼を受けて、23回にわたり米ドルと香港ドル、日本円を総額約18億7000万円(当時のレート換算)分、送金した、としている。送り先は香港が最も多く、アラブ首長国連邦、インドネシア、台湾、ブラジルなどのほか、北朝鮮系企業との取引が指摘される会社も含まれていたという。

 

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 この企業の社長は、昨年日本国籍を取得したバングラデシュ出身の男性。同信金に対して、「バングラデシュの商社の代理人をしている」と説明、送金目的をいずれも「仲介貿易」とし、書類には中古船舶や砂糖、コメ、タバコなどの輸入代金と記載していた。

 

 だが同信金が今年2月に実施した監査の結果、送金した資金の出所や受取先の法人の実態が不明なケースが相次いで見つかった。同信金の報告を受けた金融庁が確認したところ、複数の同じ金額を、異なった国や異なった取扱商品の支払いに同時送金したり、受取人先の住所が架空だったりする事例が含まれていたという。

 

 金融庁は犯罪収益などを海外に移して隠匿するマネーロンダリングに同信金が利用された可能性があるとみている。報道では、金融庁関係者の話として、「少しでも怪しんだなら、いち早く実効性のある調査をしてほしかった。送金元の会社を1回見に行くだけでも中止できていたはず」とのコメントが紹介されている。

 

 地方金融機関は海外の銀行と取引がない場合、メガバンクに送金を委託する。埼玉県信金も同様だった。しかし、実際に同信金から送金を請け負ったメガバンク関係者も、不正送金を確認できなかった。「送金を実際に依頼した当事者に接触できないため、チェックには限界がある」としている。騙された信金が、送金をメガバンクに依頼する構図は、どこか振り込め詐欺のケースに似ている。

 

 今回の事件は、本来、コミュニティベースの地方金融機関が、取引先の活動が海外を含めて拡大する中で、金融機関自身が対応できない現実を悪用されたケースといえる。取引先対応をする地方金融機関と、送金業務の委託を受けるメガバンクとの連携の利便性も、今回は”弱み”となったといえる。

 

 埼玉県信金だけでなく、送金業務を担当したメガバンク(報道では名前が明記されていない)にとっても、リスク管理の不備を露呈した形だ。最近は、メガバンクも地方金融機関も、本業の投融資業務に加えて、ESG対応がブーム化しているが、マネロンに利用されることは、本業のガバナンスの不備と言わざるを得ない。

http://www.saishin.co.jp/kojin/

https://mainichi.jp/articles/20180901/k00/00m/020/189000c?fm=mnm