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ベトナム・バンフォン1石炭火力発電計画への環境レビューで、国際協力銀行(JBIC)が自らのガイドライン違反、と環境NGOが抗議(RIEF)

2019-05-23 22:00:59

JBIC1キャプチャ

 

 FoE Japan等の環境NGO4団体は、国際協力銀行(JBIC)が、ベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業問題で、JBICが自ら設定している「環境社会配慮ガイドライン」の手続きに違反していると指摘する意見書を提出した。JBICのガイドラインでは、住民移転を伴う計画については、同計画書の提出が必要と定めているが、JBICはそうした計画書を入手していないことをNGOらに認めたという。

 

 抗議の意見書を提出したのは、 FoE Japanのほか、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、 気候ネットワーク(KIKO)、 メコン・ウォッチの各団体。

 

 焦点となっているベトナムでの石炭火力発電所計画は、住友商事が出資する現地法人(Van Phong Power Company)が建設計画を進めている。660MW級の超臨界圧石炭火力(SC)を2基建設する計画。同事業は、JBICが定めるガイドラインでは、カテゴリーA(環境への重大で望ましくない影響のある可能性を持つようなプロジェクト)に該当する。

 

 JBICは自らの環境社会配慮ガイドラインで、同カテゴリーに該当すると、①プロジェクトに関する環境社会影響評価報告書および相手国政府等の環境許認可証明書②大規模な非自発的住民移転または大規模な生計手段の喪失が発生する場合は住民移転計画(必要に応じ生計回復計画を含む)③先住民族のための対策を要するプロジェクトの場合は、事業者から先住民族計画ーーについて、文書の提出を受けて環境レビューを行うとしている。

 

JBIC2キャプチャ

 

 NGOによると、今回のベトナムでの石炭火力発電事業では、地元の97世帯(379人)の非自発的住民移転が発生することから、②に該当するとしている。しかし、JBICは「住民移転計画」「生計回復計画」を事業者から入手しないまま、環境レビューを行い、融資を決定した、と批判している。

 

 JBICの手続き違反が判明したのは、JBICとNGOと今月14日の面談の際。NGOが、住民移転計画の入手の有無を問うたところ、JBIC側は「住民移転計画を入手していない」と回答。ベトナム当局が作成した住民移転計画は入手が困難で、同案件の借入人である事業者も入手していないとも説明したという。さらに、生計回復計画を含む事業者による補完的な文書は「これから策定され、入手『予定』」と回答したという。

 

 NGO側は「それではガイドライン違反ではないか」との質問に対して、JBICは「ガイドライン上、住民移転計画等の入手義務はない」と回答したという。ただ、文書を入手せずに住民移転計画の妥当性を評価できないのは明白。環境レビューの意味がなくなってしまう。

 

 さらに、JBICはNGOに対して、住民移転計画は2010年から2017年にかけて段階的に作成され、数年間かけて移転が行われたとの説明をしたという。この間、内外の報道で、補償額の不合意などから移転が進んでいないことが報じられている。今年3月のNGOとの面談でも、移転を拒んでいる住民が多数おり、裁判も係争中であることを指摘している。このためNGOは、住民移転問題の重要性を知る立場にありながら、計画等を入手しないままにしてきたことは、ガイドライン違反だと指摘している。

 

 NGOらはガイドライン違反である以上、バンフォン1への融資を停止し、住民移転計画等を提出を受けた後に環境レビューをやり直すよう求めている。さらに、今回の違反発生について精査し、再発防止策を講じるよう求めている。

 

 同事業は、総事業費38億㌦で、2022~23年の操業開始を予定。ファイナンス面は、JBICの融資と日本貿易保険の付保をベースに、日本の三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクがそろって協調融資をする予定になっている。

 

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/vp/pdf/190523.pdf