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国際協力銀行(JBIC)総裁、石炭火力発電輸出への批判に反発。「ダイベストメント(投資撤退)は解決策になるのか」と疑問を示す。民間銀行の自粛方針にも苦言(各紙)

2020-02-28 12:42:09

JBIC3c3キャプチャ

 

 各紙の報道によると、国際協力銀行(JBIC)の前田匡史総裁は27日、石炭火力発電への投融資に対する反発が内外で強まっていることについて「ダイベストメント(投資撤退)は解決策になるのか」と疑問を示し、JBICとしては新興国や途上国での石炭火力事業への資金協力を続ける考えを示した。新興国の電力供給網が未発達なことを念頭に「日本が手掛けなければ他の国が手掛ける」と強調した。

 

 日本経済新聞等が報道した。石炭火力発電事業の輸出については、小泉進次郎環境相が、エネルギー基本計画に基づく輸出条件の見直しを政府として実施することを表明している。民間でも、ゴールドマンサックスや、JPモルガン・チェースなど、米銀を含めて、欧米の主要金融機関などは石炭関連事業への投融資からの撤退を相次いで宣言している。欧米の機関投資家は、石炭関連事業の関係の深い企業・金融機関への投資を引き揚げる動きが続いている。http://rief-jp.org/ct5/99596 http://rief-jp.org/ct6/99582

 

JBIC1キャプチャ

 

 前田氏は、こうした動きに対し、「より環境負荷が低く、高度な技術に誘導するのが(JBICの)使命だ」と語り、今後も高効率の石炭火力などの導入を後押しする考えを示した。石炭火力への新規融資を原則停止するとした日本の大手銀行に対しても不満を口にした。JBICがかかわる案件には大手行が参加を表明していると指摘したうえで「(JBICが)責任を押しつけられている印象だ」と語った。

 

 環境NGOの調べでは、JBICは2003年から2019年までに、主にアジア圏での石炭火力発電事業に29件、146億㌦の融資を実施している。また2010年以降にJBICの支援を受けて海外で発電を開始した石炭火力事業のうち、「環境負荷が少なく高度な技術による」とされる超々臨界圧石炭火力発電(USC)の比率は実は7%で、最も多いのは超臨界圧(SC)の62%、さらにCO2排出量の多い亜臨界圧(Sub-C)が31%を占めている。https://sekitan.jp/jbic/finance

 

「No Coal Go Green」から
「No Coal Go Green」から

 

 このデータを見る限り、JBICは前田氏が強調する「高度な技術」への支援より、従来型のCO2排出量の多い技術を支援していることになる。また、同氏は3メガバンク等が石炭火力向け新規融資を原則停止するなどの方針を相次いで宣言したことに不満を示したが、JBICのHPによると、同氏は公的機関としてのJBICの役割として「海図なき世界情勢における羅針盤」となって、新時代を切り開いていく役割を果たしたい、と述べている。

 

 この言を踏まえれば、JBICこそが、石炭火力ファイナンスを率先して停止し、それに代わる再エネ事業や電力網整備事業を推進する「羅針盤」になるべきではないか。民間銀行が自らの判断で石炭火力事業へのファイナンス撤退を決めたことを批判する立場ではないはずだ。

 

 JBICの総裁は歴代、財務省出身者で占められてきたが、民間出身の前任の近藤章氏の後、前田氏は、2018年にJBIC初の生え抜き総裁として抜擢されている。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200228&ng=DGKKZO56135450X20C20A2EE8000

https://www.jbic.go.jp/ja/about/message.html

https://sekitan.jp/jbic/finance