HOME9.中国&アジア |韓国の現代重工業グループとサウジアラムコ。サウジからのLNGから韓国で水素を製造、発生するCO2をサウジ逆輸出し、原油増産に活用する「水素・CO2スワップ」の研究開発で覚書(RIEF) |

韓国の現代重工業グループとサウジアラムコ。サウジからのLNGから韓国で水素を製造、発生するCO2をサウジ逆輸出し、原油増産に活用する「水素・CO2スワップ」の研究開発で覚書(RIEF)

2021-03-05 22:07:46

Aramco001キャプチャ

 

 サウジアラビアのサウジ・アラムコと韓国の現代重工業(HHI)グループは、サウジから韓国に輸入した天然ガスから水素を韓国で製造し、その過程で生まれるCO2をサウジに持ち帰って原油・ガス生産のプロセスを研究開発する覚書を交わした。「水素・CO2スワップ」ともいえる。天然ガスから水素を製造する事業は各地で取り組みが始まっているが、水素製造とCO2処理を交換する形の取引は例がない。

 

 (写真は、覚書を交わした韓国HHIグループの副社長兼経営支援室長のKisun Chung氏㊧と、サウジアラムコの技術担当のシニア副社長の Ahmad A. Al Sa’adi氏㊨)

 

 両社は4日、覚書を交換した。HHIグループの現代オイルバンク社がアラムコからLNGを輸入し、それを韓国内で水素に転換する。製造した水素は脱硫設備や燃料電池車等の燃料として使うという。水素製造過程で発生するCO2はLNGを運んできたタンカーで今度はサウジに戻される。 LNGとCO2を搭載するタンカーはHHIグループのKorea Shipbuilding & Offshore Engineering (KSOE)が製造する。

 

 サウジに戻されたCO2は、アラムコの油田の寿命を延長するために、原油増進開発法(EOR)のガス圧入法として活用する。CO2を油田に注入し、その圧力で油田に残る原油をさらに抽出する手法だ。結果的に、全体のエネルギー生産とCO2処理のコストは、CCUSや天然ガスを産地で水素化した後にアンモニア転換して輸送する等の方式よりも安くなるという。LNGの一部はサウジで水素を製造してアンモニア転換してから韓国に輸入するものも含めるとしている。

 

船荷の中身は、行きは「LNG」、帰りは「CO2」という
船荷の中身は、行きは「LNG」、帰りは「CO2」という

 

 ただ、アラムコによると、今回の覚書は、両者による研究開発のためのもので、商業ベースでの合意ではないとしている。LNGから水素製造、水素製造からアンモニア製造、あるいはCCUS化するか、CO2のEOR利用等の全体のプロセスをスムーズにマネージできるかどうかがポイントとなる。また、アラムコの原油生産効率が高まり、石油増産につながることから、製造した石油からのCO2排出量を吸収・削減する必要も出てくる。

 

 HHIグループ副社長のKisun Chung氏は「今回の合意は両者が『水素ドリーム』に向けた一歩である。われわれはサウジアラムコとともに、水素やアンモニア等のプロジェクトを推進することで主要なエコフレンドリー・エネルギーグループとして推進していきたい」と述べている。HHIグループの現代オイルバンクは、製造する水素販売のサプライチェーンを構築するため、2040年までに韓国全土にわたって300の水素チャージングステーションを建設するとしている。

 

 アラムコのAhmad A. Al Sa’adi氏は「覚書を通じて、われわれはブルー水素とブルーアンモニア分野で新たな野心的なビジネスを開発するための戦略的パートナーシップを築いていく。水素とアンモニアは未来のエネルギー燃料となる。今回の協力は、カーボン回収プロセスを通じて、温室効果ガスの排出量を削減を促進することが期待される」と指摘している。

 

http://www.hyundai-holdings.com/?p=115&idx=491

https://www.aramco.com/en/news-media/news/2021/clarification-on-aramco-hhih-mou

https://www.arabianbusiness.com/energy/459451-saudi-arabia-to-ship-gas-to-south-korea-take-back-the-co2