HOME10.電力・エネルギー |世界最大の産油国サウジアラビア、今年第2四半期にロシア産石油の輸入量を倍増。経済制裁逃れのロシア産石油を安値で買い取り、国内の冷房用電力需要等に充当。国内原油は高値で輸出(各紙) |

世界最大の産油国サウジアラビア、今年第2四半期にロシア産石油の輸入量を倍増。経済制裁逃れのロシア産石油を安値で買い取り、国内の冷房用電力需要等に充当。国内原油は高値で輸出(各紙)

2022-07-16 00:55:17

Fujahaキャプチャ

 

   ロシアのウクライナ侵攻により、グローバルなエネルギー価格の上昇が続いているが、世界最大の産油国のサウジアラビアが、今年第2四半期にロシアからの燃料用石油の輸入量を前年比で倍増させていることがわかった。市場関係者は、サウジ国内での夏場の冷房用電力需要に対応するほか、サウジ自体の原油輸出の自由度を高めるためと説明している。

 

 (写真は、UAEのフジャイラの石油ターミナル)

 各紙の報道によると、もう一つの理由として、ロシアが西側の経済制裁を回避して石油を売却するために、ディスカウント価格で売っていることから、安く入手できる魅力もあるとされる。経済制裁の影響で、ロシア産石油は市場ベースでの取引は細っているが、中国やインド、アフリカ諸国、中東諸国に対して、割引価格を提示した相対取引で輸出しているとされる。

 産油国のサウジも、そうした形でロシア産石油の輸入を増やしている。ロイター等による情報では、4月~6月の間にロシアから直接あるいはエストニアの港経由でサウジが輸入したロシア産石油は、64万7000㌧(4万8000bpd)。昨年の同期間の32万㌧からほぼ倍増している。

 サウジはこれまでも、石油を輸出すると同時に、ロシア等から輸入も続けてきた。それは国内での石油精製設備の稼働を抑え、かつ発電のために石油を燃やす量も削減するためとされる。海外で製品化された石油製品を購入し、国内の石油は原油のまま輸出することで、より高い売却収入を得られるとされてきた。

 ただ、夏の冷房用の電力需要が年々高まり、発電の必要性に合わせるため、国内の石油火力発電所の稼働を増やしている。サウジではCO2排出量が石油より少ない天然ガスの開発は、地域によってあまり進んでいないところも多い。このため、すでに精製された輸入石油燃料を火力発電の燃料に使う形が多いという。

 バイデン米大統領は13日から中東を訪問。15日にはサウジを訪問し、サルマン国王との会談で、この問題も議論したとみられる。またグローバルなエネルギー価格上昇を抑えるため、サウジに石油増産を要請したとみられる。ただ、サウジとロシアは「石油輸出国機構(OPEC)+」として知られるOPECと非OPEC産油国による協力関係の中心国同士でもある。

 サウジはアラブ首長国連邦(UAE)の主要港で、中東の石油貿易のハブとして知られるフジャイラ(Fujairah)経由でもロシア産石油を大量に買い付けているとされる。フジャイラでは、今年に入って、これまでに117万㌧のロシア産燃料石油を輸入しているという。これは昨年の同期間の90万㌧を約3割上回る。

 これとは別に、同港に入出国する船舶記録からは、6月だけで特別に90万㌧の石油が輸送されているという。今年の延べ買付量と合わせると210万㌧になる。これは昨年1年間の合計量164万㌧をすでに約3割上回っている。フジャイラを経由するこれらのロシア産燃料石油はサウジだけでなく、中東各国に再輸送されており、このうちいくらがサウジに流れ込んだかは不明。

 サウジの国内での石油精製能力は2017年に、それまでの290万bpsから360万bpdに増強されている。同設備の稼働率は今年4月~6月で70%-73%。しかし、精製産出量は1000万bpsを超えている(輸入石油製品でカバーされているため)。OPEC+が生産削減を実施した2017年~19年の期間の稼働率は75%~95%だったのと比べると、現在の方が国内設備の稼働率は低い。

 一方で、原油と石油製品の輸出を合わせると、2月~4月期には過去最高の900万bps、原油輸出だけでみても730万bpsとなっている。エネルギー価格上昇の市場動向を踏まえて原油輸出でしっかり稼ぎ、国内の電力需要分はロシア産のディスカウント燃料石油の輸入で補うというサウジの「戦時下ビジネス」が浮き彫りになる。

https://jp.reuters.com/article/usa-israel-saudi-rights-idJPKBN2OP22T

https://www.euractiv.com/section/global-europe/news/saudi-arabia-doubles-discounted-russian-fuel-oil-imports/