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JERA。ベルギーの洋上風力発電会社を買収。総額15.5億ユーロ(約2200億円)。資金調達は銀行融資とESG債発行。台湾事業は一部売却し、グローバルな再エネ・リバランス進める(RIEF)

2023-03-22 23:22:00

JERA001キャプチャ

 

  東京電力と中部電力が折半出資するJERAは22日、ベルギーの洋上風力発電大手、パークウィンド(Parkwind NV)の株式100%を15.5億ユーロ(約2200億円)で、親会社のVirya Energy NVから取得したと発表した。ベルギー当局の承認等の許認可取得等を経て、2023年内に株式取得を完了する見込み。日本企業による再エネ会社の買収としては過去最大規模。JERAはこれまで洋上風力開発を台湾等の日本に近い市場で取り組んできたが、風力発電事業が本格展開する欧州市場での事業展開により再エネ事業の分散・安定化を図る方針だ。

 

 (写真は、parkwindがドイツで展開する洋上風力発電事業)

 

 JERAは同時に、洋上風力事業全体の9割を占める台湾事業の分散化として、洋上風力事業「フォルモサ3」(最大出力200万kW)の権益を仏エネルギー大手のトタルエナジーズなどに売却する手続きを進めていることも公表した。「フォルモサ1」と近く稼働する「同2」の事業は継続するが、「同3」からの撤退とParkwindの買収とによって、風力発電事業のグローバル分散・リバランスを図る。再エネ開発関連人材も、台湾から一部を欧州に移すことも検討するとしている。

 

 JERAが買収するParkwind社は、本拠をベルギーのルーヴェン市に置く。欧州の洋上風力発電事業で、10年以上の開発・建設・運転の事業で実績を有する。ベルギー国内で4つの洋上風力発電プロジェクト(総発電容量77.1万kW、同社持分容量42万kW)を運営するほか、ドイツでも建設中の洋上風力発電プロジェクト(発電容量25.7万kW、同社持分容量18万kW)を手掛けている。開発途中の洋上風力事業は欧州市場を中心にして、約452.6万kW(同社持分)を抱えている。

 

Parkwindが保有する洋上風力発電プロジェクト
Parkwindが保有する洋上風力発電プロジェクト

 

 同社は2012年の創立で、従業員数は約130名。ベルギーで展開する洋上風力事業プロジェクトは、Belwind、Northwind(2プロジェクト)、Northwester 2の各事業。JERAは買収資金を銀行からの借り入れや社債発行でまかなうとしている。今回の買収でJERAの再生エネ発電容量は、ベルギーとドイツの事業を合わせて従来より60万kW増加し、280万Wになる。

 

 JERAは、Parkwind社が有する欧州での洋上風力発電事業のノウハウや知見を、JERAが現在展開している台湾やアジアでの風力発電事業等に活用することも目指すとしている。また、将来的には、再エネ由来の低炭素燃料(グリーン水素・アンモニア等)の調達・製造への展開も想定している。

 

 同社は25年までに国内外で計500万kWの再エネ開発を目標に掲げている。一方で、日本で最も大量に石炭火力発電所を抱えているが、今後、化石燃料に環境負荷の低い水素やアンモニアを混焼させて操業を継続する方針を捨てていない。ただ、将来はParkwindの再エネ電力を活用して、グリーン水素やグリーンアンモニア由来の電力を調達・製造することを目指すともしている。

 

 しかし、同社の事業安定化のためには、技術的、経済的に課題の大きい水素・アンモニア混焼で火力発電の維持を目指すより、火力発電事業の縮小・廃止を進め、同時に、再エネ事業をさらに展開する思い切った「スクラップ&ビルド」政策の強化を期待したい。

https://www.jera.co.jp/information/20230322_1109