欧州北海に洋上風力発電所を新たに原発40基分建設し、高圧直流送電（HVDC）で連系して巨大発電源を作る計画で、日立がHVDC事業受注。総額130億ユーロ（約1兆8800億円）(RIEF）
2023-03-31 23:02:11
欧州北海に各地に点在する22の洋上風力発電所群を高圧直流送電（HVDC）で連結し、欧州全体の発電源として展開する巨大プロジェクトが、日本の日立製作所も加わる形で始動する。オランダの送電事業者テネット（TenneT）が2030年までに、原発40基分に相当する40GWの風力発電設備を北海のオランダとドイツの海域に設置し、それらの発電所群を2GWの送電能力を持つHVDCの送電網でネットワーク化するという壮大な計画だ。日立はこのうち、オランダでの6つの発電所群を連系する事業を、3つの企業グループの一つとして受注した。日立は受注総額は130億ユーロ（約1兆8800億円）に上るとしている。
遠浅の海が続く欧州の北海海域では周辺国による着床式洋上風力発電所の建設が盛んだ。2022年5月、ドイツ、オランダ、デンマーク、ベルギーの各国は、デンマークのエスビャウ（Esbjerg）で「北海エネルギーサミット」を開催。2030 年までに合計で少なくとも65GWの洋上風力発電を追加建設するとともに、これらの発電所群をHVDCで連系し、相互融通が可能なようにしてEUの主要電力源とする「エスビャウ宣言」で合意した。
同計画に参加するテネットは、オランダ、ドイツで送電事業を展開する送電大手。同社はオランダとドイツにそれぞれ20GWの風力発電所群を新設、65GWの総発電量の4分の3を担うほか、各発電所群を2GWの送電能力を持つHVDCの連系システムでつなぐ計画を推進する。今回、テネットは日立グループの日立エナジーを含む3つの企業グループに対して、オランダ海域の8つの風力発電所群とドイツの3つの発電所群、合計11件をHVDCで連系する事業を発注した。
日立エナジーは英ペトロファック（Petrofac）と共同で、このうち6つのHVDC事業を受注した。うち、5つはオランダの送電網と連系するもので、もう一つはドイツの送電網と連系する。日立エナジーが協働するペトロファックはエネルギーインフラ関連の国際的なEPC事業者。両社は昨年6月に協業関係を構築することを発表している。
今回のテネットからの受注に対して、日立エナジーは自励式HVDC「HVDC Light®」を提供して風力発電電力を変換する技術を提供する。ペトロファックは洋上・陸上両方の風力発電事業でのEPCサービスを提供する。日立エナジーにはぜひ、北海で開発実証するHVDCの技術を日本の洋上風力発電事業でも展開してもらいたい。
日立グループ以外の企業グループは、GEとシンガポールのSembcorp（SMOP）のグループ、同じくGEと米マクダーモットのグループ。GE/SMOPはオランダの3つのHVDC事業を受注した。GE/McDermottはドイツの2事業を受注した。
今回の巨大受注に対して、日立エナジーのグリッドインテグレーションビジネスユニット担当役員のニクラス・パーソン（Niklas Persson）氏は、「今回の洋上風力発電の連系計画への参加で、わが社はグローバルで供給能力を拡大し、本契約やその他の契約に対応するための専門家の採用活動をすでに開始している。パートナーのペトロファックとともに、洋上風力事業向けHVDC技術を大規模かつ迅速に展開準備をすでに始めている」と述べている。
テネットのCOOのティム・マイヤーユルゲンス（Tim Meyerjürgens）氏は「今回のプロジェクトは、今世紀で最も重要なインフラプロジェクトの 一つであり、エネルギーシステムのグリーントランスフォーメーションは、産業の脱炭素化を推進する上で重要な 役割を果たす。われわれはパートナー企業とともに洋上送電網の開発を加速し、欧州の将来のエネルギーの発展に貢献する」としている。
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2023/03/0331c.pdf
https://en.kefm.dk/Media/637884571703277400/The%20Esbjerg%20Declaration%20(002).pdf
Research Institute for Environmental Finance