HOME |神戸製鋼と三井物産。中東オマーンで、低炭素排出の直接還元鉄(DRI)による鉄鋼プラント建設へ。当面、天然ガス、将来はグリーン水素を活用も(RIEF) |

神戸製鋼と三井物産。中東オマーンで、低炭素排出の直接還元鉄(DRI)による鉄鋼プラント建設へ。当面、天然ガス、将来はグリーン水素を活用も(RIEF)

2023-04-11 15:09:39

Kobelco001キャプチャ

 神戸製鋼と三井物産は10日、中東のオマーンで、神戸製鋼子会社の米ミドレックス・テクノロジーズが開発した直接還元鉄(DRI)プラントを建設すると発表した。DRIは天然ガスや水素で鉄鉱石を還元して酸素を取り除き、鉄鋼原料を製造する方式。還元材として高炉に投入したり、電炉の原料とすることで鉄鋼事業のCO2排出を削減できる。オマーンのプラントでは当面、年産500万㌧の製造を目指す。将来的には生産増強も想定している。製造した直接還元鉄は神戸製鋼が自らの高炉で使うほか、他の鉄鋼メーカーへの外販も検討する。

写真は、オマーンでの調印式。(前列㊧から)三井物産常務執行役員金属資源本部長の福田哲也氏、H.E. Dr. Ali bin Masoud Al Sunaidy(OPAZ会長)、神戸製鋼執行役員エンジニアリング事業部門長元行正浩氏)

 鉄鋼業界は、国内産業(電力を除く)でもっとも温室効果ガス(GHG)排出量が多い。特に高炉での鉄鋼生産では還元材に炭素(コークス)を使うため、大量のCO2排出量を排出する。このため、世界の鉄鋼業界は高炉での水素還元の導入や、電炉への切り替え等を進めている。

 神戸製鋼ミドレックスの還元鉄(DRI)は鉄鋼製造に際して高炉に頼らず、主に天然ガスを利用して鉄鉱石を還元する方式。ミドレックス社は米ノースカロライナ州シャーロット氏を拠点とする中小規模の鉄鋼会社で、鉄鋼製造に際して高炉に頼らず、これまで主に天然ガスを利用して鉄鉱石を還元するDRIプラントを世界全体で約90基、開発してきた。同社はDRI技術で世界の約6割のシェアを持つ。1983年に神戸製鋼が買収した。

 2021年には、世界最大の鉄鋼メーカーのアルセロール・ミダル(ArcelorMittal)が進める水素を還元材とする低炭素製鉄プロジェクトに、ミドレックスのDRIが採用されたほか、昨年10月にはスウェーデンの製鉄ベンチャーが開発する100%水素直接還元鉄プラントにも採用されている。https://rief-jp.org/ct4/129231?ctid=

https://rief-jp.org/ct4/93961

 今回のオマーンでの事業は、同国のドゥクム特別経済地区において、年産500万㌧規模の直接還元鉄製造プラントを建設する。オマーンは還元鉄の生産に必要な天然ガスが豊富で、同国は「オマーン・ビジョン2040」に基づいて再エネやグリーン水素の供給もエネルギー政策の柱に掲げており、将来はグリーン水素によるより低炭素な還元鉄を活用する方針だ。

 神戸製鋼と三井物産は前日の9日、オマーンの特別経済地区を管理する行政機関のOPAZ(Public Authority for Special Economic Zones and Free Zones)と低炭素鉄源事業の推進に関する包括的覚書を結ぶとともに、ドゥクム特別経済地区の港湾開発・管理を担う「Port of Duqm Company S.A.O.C.」との間で同地区の土地予約契約を結んだ。天然ガスの供給についても、同国エネルギー・鉱物資源省と詳細な条件について協議中としている。

 鉄鋼業のCO2排出削減は世界的な課題。神戸製鋼は2050年ビジョンとして、生産プロセスでの「カーボンニュートラルへ挑戦し、達成を目指す」一方で、技術・製品・サービスによるCO2排出削減貢献は「1億㌧以上」の目標を掲げ、グローバルな鉄鋼企業との連携を進めている。国内でも昨年6月、高炉工程でのCO2排出量を大幅削減した低CO2高炉鋼材 「Kobenable Steel」を実用化している。

https://www.kobelco.co.jp/releases/1211745_15541.html

https://www.kobelco.co.jp/releases/1210345_15541.html