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英調査機関EI。2022年の世界のエネルギー動向。再エネ発電増大も、化石燃料主導のエネルギー構造に変わりなし。エネルギー部門のGHG排出量は依然増加。「パリ協定と逆方向にある」(RIEF)

2023-06-27 23:08:08

EI001キャプチャ

 

  英「Energy Institute( EI)」が公表した「世界エネルギー統計レビュー」によると、2022年の世界のエネルギー供給のうち、再生可能エネルギー発電量は過去最高で増大した一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で価格が高騰した後、ロシアから欧州への供給が減少した天然ガスに代わって、石炭の消費量が8年ぶりの高水準になった。その結果、エネルギー部門からの温室効果ガス(GHG)排出量は0.8%増と増加基調となった。EIのアナリストは「われわれは依然、パリ協定が求める方向とは逆方向に向いている」と警鐘を鳴らしている。

 

  世界全体の一次エネルギー消費量は、前年比1.1%増で、前年(21年)の5.5%増よりは鈍化したが、増加傾向を維持した。新型コロナウイルス感染発覚前の2019年比では、ほぼ3%増。地域別では、ウクライナ戦争の影響を受けた欧州が前年比3.8%減で、ロシア圏のCIS諸国も5.8%減と戦禍の影響が目立つ。しかし、その他の地域では、中国とインド等の新興国での消費拡大がエネルギー全体の伸びを牽引し、OECD加盟国の消費は平均0.9%増だったのに対して、OECD非加盟国の平均では1.3%増だった。

 

 エネルギー源別では、化石燃料への需要は引き続き高水準となった。ロシアのウクライナ侵攻により天然ガス価格が高騰、供給量も絞られたことから、相対的に価格が安く、供給量が豊富な石炭への依存が回復し、グローバルベースでも石炭需要は0.6%増と、2014年以来の高水準を記録した。天然ガスの伸び率は3.1%減だった。価格高騰に加えて、ロシアと欧州を結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム」が『爆発事故』とロシアの供給減少の影響を受け途絶えたことで、ロシアからの天然ガスの輸出量は全体で3割強減少した。

 

電力発電に占める各資源の推移
電力発電に占める各資源の推移

 

 第一次エネルギー消費に占める再エネ(水力以外)のウエイトは、前年よりほぼ1%増の7.5%と過去最大になった。しかし、化石燃料エネルギーの割合は全体の約82%を占めており、化石燃料主導のエネルギー構造に大きな変化はない。

 

 石炭価格は、欧州市場で1㌧当たり平均294㌦(前年比145%増)、日本のCIFスポット価格が同225㌦(同45%増)と、それぞれ過去最高値となった。石炭の消費量は前年21年に0.6%増と2014年以来で最高水準だったが、22年は北米と欧州がそれぞれ6.8%と、3.1%とそれぞれ減少。OECD全体ではコロナ前(2019年)に比べ10%減。これに対して非OECD諸国の消費量は6%増と対照的だった。

 

 石炭の生産量はグローバルベースで7%以上増え、過去最高の175エクサジュール(10の18乗ジュール)を記録した。グローバルな生産量増大の95%は中国、インド、インドネシアで占めた。

 

 グローバルな発電量は全体で2.3%増。伸び率としては前年(21年)の6.2%増を下回った。このうち、再エネは太陽光発電が25%増、風力発電が1.5%増といずれも急増した。両方合わせると発電量全体の12%を占める過去最大の割合になった。同割合は原発の割合を上回った。また新規の電力需要の増大分に占める再エネ発電の割合は84%に達した。

 

 しかし、化石燃料発電が主流である構造には大きな変化はない。石炭火力発電の割合は、発電量全体の35.4%で、前年の35.8%とほぼ同水準を維持した。天然ガス発電は前年並みのほぼ23%の割合。天然ガス火力は全体の23%の割合で、前年並みを維持した。再エネ発電は、太陽光が25%増、風力が1.5%増と、いずれも急増した。両方合わせると発電量全体の12%を占める過去最大の割合になった。また新規の電力需要の増大分に占める再エネ発電の割合は84%に達した。

https://www.energyinst.org/exploring-energy/resources/news-centre/media-releases/ei-statistical-review-of-world-energy-energy-system-struggles-in-face-of-geopolitical-and-environmental-crises