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新電力各社、電力卸売価格高騰の影響から次第に脱出か。「契約停止」企業数7.7%。「サービス再開」への転換27.7%に。帝国データバンクが最新調査を公表(RIEF)

2023-06-30 11:25:47

新電力各社の動向の推移

 

 2020年末から21年初めにかけて卸売電力価格の高騰で、電力小売り事業を展開する多くの新電力会社が経営危機に陥ったが、帝国データバンクの直近の調べでは、「電力事業の契約停止(新規申し込み停止を含む)や撤退、倒産や廃業」状態の新電力数は180社(構成比25.5%)で、3月時点の195社から15社(7.7%)減った。3月に「契約停止」だった112社のうち31社(同27.7%)がサービスを再開(一部再開含む)したことで、「契約停止」数が減少した。電力卸市場の落ち着きや、契約電力料金値上げによる価格転嫁等で、一時の危機的状況が和らいでいるようだ。

 

 (上図は、新電力各社の経営動向の推移=帝国データバンク)

 

 今年夏場の電力需給は、10 年に1度の猛暑を想定した電力需要に対し、全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を上回る状況となっており、新電力の経営もしばらく安定する可能性が出ている。しかし、帝国データバンクは、東京地域を中心に、7月の需給は厳しい見通しとみており、電力卸価格に大きな変動が生じれば、新電力各社は再び「契約の停止」や「撤退」「倒産」の波を受け、「電力難民」企業が増える可能性もある、とみている。

 

 新電力各社は、電力卸売市場高騰の影響に加え、資材価格やエネルギー高等を受け、一時逆ザヤになるなど、経営危機が続いてきた。帝国データの2023年3月時点の調査では、706社(資源エネルギー庁の登録小売電気事業者)中、累計で195社が「契約停止、撤退、倒産、廃業」に陥った。

 

契約停止等の新電力各社の3月との比較
契約停止等の新電力各社の3月との比較

 

 今年に入って、4月1日に、送電費用の託送料金が引き上げられたほか、6月1日には、大手電力7社が値上げに踏み切り、新電力会社も価格転嫁で値上げに動いている。需要家の電気料金の値上がりを軽減するための政府の「電気・ガス価格激変緩和措置」は9月までのため、先行き値上げの可能性が高い。

 

 こうした電力関連の経済環境の変化を受け、3月時点で「契約停止」 としていた112社のうち31社(構成比27.7%)が「サービス再開(一部再開含む)」に変わったことで「契約停止」企業が減少した。 新電力各社の倒産や撤退で契約継続が困難となり、無契約状態となったため大手電力会社等から供給を受ける「電力難民」企業(最終保障供給契約件数)も6月時点で1万7414件と、ピークだった2022年10月(4万5871件)に比べ62.0%減少している(電力・ガス取引監視等委員会6月1日公表)。

 

 これまで停止・撤退等となった新電力各社180社のうちで最も多いのは「契約停止」の87社(48.3%、3月比22.3%減)。次いで電力販売事業からの「撤退」64社(35.6%、12.3%増)、「倒産・廃業」29社(16.1%、11.5%増)だった。 「倒産」は、熊本電力(熊本県、3月破産、負債28億円)、Optimized Energy(東京都、3月特別清算)、ウエスト電力(東京都、5月特別清算、同25億8700万円)の3社。

 

 事業を継続している613社のうち、198社(32.3%)が「値上げ」に動いているという。このうち、143社(72.2%)は今年に入ってから「料金の改定・変更・見直し」を発表した。また55社(27.8%)が、実質値上げといえる「燃料費調整金」(市場価格が変動した際に電気代に反映できる措置)の導入、不特定多数の顧客に対して大量の取引を行う際の取引条項を定める約款の変更や改訂、料金プランの変更等を実施している。

 

 帝国データでは、実際にはさらに多くの新電力会社が価格改定に動いているとみている。一方で、価格などの内容の説明が不十分であること等で、6月には業務改善勧告を受ける業者も出ている。

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p230613.html