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フィリピンに世界最大のソーラーパーク建設へ。若手起業家が立ち上げた新興再エネ企業と、アジアで幅広く事業展開するビジネス富豪が連携。年間50億kWの電力を首都マニラに供給(RIEF)

2024-01-06 01:26:26

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  フィリピンに世界最大の太陽光発電のソーラーパークが誕生する。太陽光発電専業の新興企業「SP New Energy Corporation(SPNEC)」が、ルソン島中央部のヌエヴァ・エシハ(Nueva Ecija)州と隣接するブラカン州にまたがる3500haの土地を開発して建設すると発表した。SPNECの子会社が開発・運営するもので総事業費2000億フィリピンペソ(約5220億円)を投じる。これまで世界最大のソーラーパークはインドと中国の事業とされていたが、SPNECは「われわれのソーラーパークは、彼らを上回る」と強調している。

 

 SPNECは昨年末に、フィリピンの大富豪マヌエル・”マニー”・ ベレス・パンギリナン(Manuel ”Manny” Velez Pangilinan : MVP)氏の資本を受け入れる形で買収されている。同氏は、イニニシャルの「MVP」 でも知られる富豪ビジネスマンで、フィリピンや香港を拠点として、アジア太平洋地域で広大な事業を展開する投資管理・持株会社のFirst Pacific Company Limitedを率いている。FirstPacificはフィリピン最大の電気通信会社のPLDTを買収し傘下に入れている。

 

 同氏はまたフィリピンのプロバスケットボールチームを3つも保有するなど、スポーツ・パトロンとしても知られている。設立したMVP財団ではバスケットボール以外のバドミントン、ゴルフ、ボクシング、テコンドー等の普及に力を入れている。

 

「MVP」と呼ばれるパンギリナン氏
「MVP」と呼ばれるパンギリナン氏

 

 今回のSPNECの大規模ソーラーパークの開発計画は、MVPが保有する再エネ会社「MGen Renewable Energy」がSPNECの子会社のテラソーラー(Terra Solar)に159億フィリピンペソを出資し、総事業費2000億ペソ(約5220億円)の太陽光発電事業を展開する形で進められる。500万枚以上の太陽光パネル(合計発電量3500MW)を敷き詰め、蓄電機能も4000MWhを確保する。年間50億kWh以上の電力を首都マニラ等に供給する計画だ。

 

 SPNECは、全体事業が完成すると、「インドのラジャスタン州のバドラソーラーパーク(総発電量2245MW)や、中国で最大とされる青海省のゴルムドソーラーパーク等を上回る」としている。第一フェーズ分が2026年前半に発電を開始する予定。全体計画が完成すると、フィリピンの送電量の5%以上を占め、同国の電力需要の12%分を供給できるとしている。

 

 SPNECはフィリピンの起業家、レアンドロ・アントニオ・L・レヴィステ(Leandro Antonio L. Leviste)氏が2013年に設立したSolara Philippines が母体だ。同氏はその時、米イエール大学の学生で20歳。同氏はフィリピン上院議員の息子だが、米欧で太陽光発電が普及しているのをみて、「フィリピンでも同じことができるはずだ。さらにフィリピンの電力料金は米欧より高いのでビジネスチャンス」と判断。事業に乗り出した。その後、同氏の太陽光事業はフィリピンに留まらず、ASEAN各国で、ショッピングモールの屋上等を利用した屋根置き太陽光発電等も展開している。

 

起業家のレアンドロ・レヴィステ氏
起業家のレアンドロ・レヴィステ氏

 

 今回、さらなる事業拡大のため、アジア太平洋地域で幅広い事業展開を行っているMVPと連携することで、太陽光発電等の再エネビジネスを、アジア全域で大規模にスケールアップして展開する方向に、ギアチェンジした形だ。

 

 若手起業家と、熟練のビジネスタイクーンのMVPが、世代を超えて手を結んで、大規模再エネ事業の拡大を図る動きは、日本のビジネスシーンには、あまりみられない。アジアの新しい動きといえる。

World’s largest solar project on track for 1st phase – SP New Energy Corporation (spnec.ph)

SPNEC starts work on ₱200-B solar project (cnnphilippines.com)