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「原発が安い」というのは根拠がない~「原発ゼロ」のシナリオ~(古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン)
2012-08-11 22:15:35
「原発0%と言うなら、それでも電力が足りて、電力料金があまり上がらなくて、企業が困らないということを証明せよ」という趣旨のことを言う政治家がいる。そういう人は必ず、「原発ゼロでも困らないということを示さないで原
発反対と言うのは無責任な政治家だ」と言う。
しかし、こういう人たちは、原発の安全の問題や核のゴミの問題については明確な考えを述べなかったり、「安全は大事」、とか、「核のゴミの問題を解決しなければならない」、などと抽象的なことしか言わない。「どうやってゴミ
を処理するのかの具体策がないから原発をやめろ」とは言わない。
日本の原発の安全基準について勉強すれば、それが如何に世界標準とかけ離れているかがわかる。アメリカ並みの基準にすれば、おそらく日本の原発はほとんど動かせなくなるだろう。少なくとも、アメリカでは、テロ対策とシビアアクシデント対策がまったく施されていないのに動かすということは考えられない。地震・津波対策、活断層などもゼロから基準を見直すとかなりの追加投資を余儀なくされる。
日本では、安全対策がまじめに行われなかった結果、「原発は安い」ということになっている。これは世界の常識からは外れている。アメリカのGEのイメルト会長が、「原発を経済的に正当化するのは難しい」と言ったそうである。つ
まり、「原発は高い」という意味だ。安全対策をちゃんとやると原発は高過ぎるので、先進国では新たに原発を作るのは難しいのが現実だ。
途上国は、安全対策をそんなに厳しくやらないので、まだ安いというところも多いのかもしれないが、これらの国で事故が起きれば、やはり、原発は高いということになるだろう。
つまり、原発は安いという前提での話をするのはおかしいということだ。また、核のゴミの処理問題を将来世代にツケ回しするやり方も先進国では大きな問題になっている。ドイツが脱原発に舵を切ることになったそもそものきっ
かけは、安全の問題というより、核のゴミを処理できない以上原発を動かす訳には行かないということだった。
そして、アメリカのコロンビア特別区巡回控訴裁判所は、6月、NRC(Nuclear Regulatory Commission/原子力安全委員会)の使用済み核燃料への対応が連邦環境基準に合致していないという判断を下した。それを受けて、8月7日、NRCはこの判決への対応が出来るまで原発建設の認可手続きを停止すると発表した。
先進国では、核のゴミ問題をただ漫然と先送りすることは許されなくなっているのだ。日本がいかに遅れているかを物語る。百歩譲って、安全と核ゴミ問題を横に置いてコスト論をするとしても、実は、原発が安いという政府の前提はほとんど根拠がないということも指摘しなければならない。
9日木曜日の大阪府市統合本部エネルギー戦略会議で、自然エネルギー財団が提出した試算によれば、原発コストは他の電源に比べて高くなる可能性があることが示された。
( => http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000159434.html#18 )
そもそも政府の試算でも2030年の原発依存度が0でも15%でも20~25%でもそれほど違わない。マスコミのミスリーディングな報道によって、原発ゼロシナリオだけが、電力料金が2倍になると信じられている。実際は、ゼロシナリオのほうが若干高いかほとんど同じで、いずれのケースでも概ね2倍前後になるというものである。
一方、自然エネルギー財団の試算によれば、原発コスト、とりわけ事故リスク対応のコストをより現実に近い形で見積もると、原発コストのほうが他電源よりもかなり高くなる可能性も十分にあるということがわかった。
従って、この試算によれば、2030年原発ゼロの方がむしろ日本経済にとっては有利だというシナリオも作ることが出来る。もちろん、2030年というかなり先の話で、そこでの電気代が1000円高いとか安いというのは、ある意味前提の置き方でどうにでもなるという面があるし、誤差の範囲という見方もできる。ただ、これまでは、原発は安いし、原発依存の方が日本経済にとっては楽なんだという暗黙の了解があったので、それをもう一度ゼロから問い直したという意味では大きな意味のある試算だと思う。
https://mall.ismedia.jp/category/select/pid/8767
発反対と言うのは無責任な政治家だ」と言う。
しかし、こういう人たちは、原発の安全の問題や核のゴミの問題については明確な考えを述べなかったり、「安全は大事」、とか、「核のゴミの問題を解決しなければならない」、などと抽象的なことしか言わない。「どうやってゴミ
を処理するのかの具体策がないから原発をやめろ」とは言わない。
日本の原発の安全基準について勉強すれば、それが如何に世界標準とかけ離れているかがわかる。アメリカ並みの基準にすれば、おそらく日本の原発はほとんど動かせなくなるだろう。少なくとも、アメリカでは、テロ対策とシビアアクシデント対策がまったく施されていないのに動かすということは考えられない。地震・津波対策、活断層などもゼロから基準を見直すとかなりの追加投資を余儀なくされる。
日本では、安全対策がまじめに行われなかった結果、「原発は安い」ということになっている。これは世界の常識からは外れている。アメリカのGEのイメルト会長が、「原発を経済的に正当化するのは難しい」と言ったそうである。つ
まり、「原発は高い」という意味だ。安全対策をちゃんとやると原発は高過ぎるので、先進国では新たに原発を作るのは難しいのが現実だ。
途上国は、安全対策をそんなに厳しくやらないので、まだ安いというところも多いのかもしれないが、これらの国で事故が起きれば、やはり、原発は高いということになるだろう。
つまり、原発は安いという前提での話をするのはおかしいということだ。また、核のゴミの処理問題を将来世代にツケ回しするやり方も先進国では大きな問題になっている。ドイツが脱原発に舵を切ることになったそもそものきっ
かけは、安全の問題というより、核のゴミを処理できない以上原発を動かす訳には行かないということだった。
そして、アメリカのコロンビア特別区巡回控訴裁判所は、6月、NRC(Nuclear Regulatory Commission/原子力安全委員会)の使用済み核燃料への対応が連邦環境基準に合致していないという判断を下した。それを受けて、8月7日、NRCはこの判決への対応が出来るまで原発建設の認可手続きを停止すると発表した。
先進国では、核のゴミ問題をただ漫然と先送りすることは許されなくなっているのだ。日本がいかに遅れているかを物語る。百歩譲って、安全と核ゴミ問題を横に置いてコスト論をするとしても、実は、原発が安いという政府の前提はほとんど根拠がないということも指摘しなければならない。
9日木曜日の大阪府市統合本部エネルギー戦略会議で、自然エネルギー財団が提出した試算によれば、原発コストは他の電源に比べて高くなる可能性があることが示された。
( => http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000159434.html#18 )
そもそも政府の試算でも2030年の原発依存度が0でも15%でも20~25%でもそれほど違わない。マスコミのミスリーディングな報道によって、原発ゼロシナリオだけが、電力料金が2倍になると信じられている。実際は、ゼロシナリオのほうが若干高いかほとんど同じで、いずれのケースでも概ね2倍前後になるというものである。
一方、自然エネルギー財団の試算によれば、原発コスト、とりわけ事故リスク対応のコストをより現実に近い形で見積もると、原発コストのほうが他電源よりもかなり高くなる可能性も十分にあるということがわかった。
従って、この試算によれば、2030年原発ゼロの方がむしろ日本経済にとっては有利だというシナリオも作ることが出来る。もちろん、2030年というかなり先の話で、そこでの電気代が1000円高いとか安いというのは、ある意味前提の置き方でどうにでもなるという面があるし、誤差の範囲という見方もできる。ただ、これまでは、原発は安いし、原発依存の方が日本経済にとっては楽なんだという暗黙の了解があったので、それをもう一度ゼロから問い直したという意味では大きな意味のある試算だと思う。
https://mall.ismedia.jp/category/select/pid/8767