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原発関連企業は全国に少なくとも2,258 社 ~福島県には120 社が存在、従業員数は東北全体で約2 万5,000 人に達する~(帝国データバンク)

2011-06-29 22:09:08

(はじめに)3 月11 日に発生した東日本大震災と、それに伴う福島第一・第二原子力発電所の事故・停止によって、日本の原子力発電事業は大きな転換期を迎えている。地域経済に大きな恩恵をもたらしてきた原発事業は今や一気に縮小の機運を見せ始め、福島だけではなく原発を抱える自治体では、地元関連企業の活動に深刻な影響を及ぼすことも想定される。

国際的に見ても、6 月13 日に実施されたイタリアの国民投票で反原発政策の継続が採択されるなど、“脱”原発、“反”原発の流れが強まっている。そこで帝国データバンクでは、調査報告書ファイル(151 万社収録)および企業概要データベース「COSMOS2」(138 万社収録)をもとに、日本国内の原子力発電事業と直接的に関係のある企業(事業内容が明確に判明するもの)を抽出し、「地域別」「業種別」「規模別」「販売先」などについて分析した。なお、同様の調査は今回が初めてとなる。
調査結果(要旨)
1.原発関連企業は全国で少なくとも2,258 社判明。都道府県別では、「東京都」(574 社)を除くと「茨城県」が201 社(8.9%)で最多。「福島県」には120 社(5.3%)が存在している。
2.規模別では、全体の67%が年商10 億円未満の中・小規模企業で、福島県では約9 割が該当。
3.業種別では、「製造業」が778 社(34.5%)と最多。より細い業種分類でみると「機械器具設置工事業」が122 社(5.4%)で最多となった。
4.主な販売先では、「三菱重工業」が215 社(9.5%)と原発関連企業の約1 割が同社を販売先としていた。1. 地域別 ― 関連施設の多い茨城、福井、福島が上位地域別に見ると、東京電力や東芝、日立製作所といった主要企業があり、関係会社や下請け企業が数多く存在する「関東」が1,056 社(構成比46.8%)と最多で、原発関連企業のほぼ半数が関東に所在地があることがわかった。
次いで、関西電力や神戸製鋼所などがある「近畿」が365社(構成比16.2%)。地方では、今回被災した「東北」が240社(同10.6%)、原発が計6 箇所で最多の「北陸」が234 社(同10.4%)となった。東北全体では原発関連企業に約2万5,000 人の従業員がおり、震災の影響も相まって今後の動向が懸念される。
県別に見ると、原発事業を牽引する東芝、日立製作所など大手企業が集中している「東京都」の574 社(構成比25.4%)がトップ。次いで、東海第二原発をはじめ多くの原子力施設が集中する「茨城県」が201社(同8.9%)で2 位となった。

都市圏以外では、計4 箇所に原発を有する「福井県」が144 社(構成比6.4%)で、都市圏や茨城県に次ぐ第5 位に入るなど、原発を有する自治体がいずれも件数上位に入っており、原発産業が地域企業に密着したものであることが分かる。
また、今回原発事故の起きた「福島県」には120 社(構成比5.3%)が存在し、約3,000 人が原発産業に従事している。福島第一・第二原発が今後廃炉や閉鎖となっていく公算が高いため、これらの企業への影響が懸念される。
2. 年商規模別 ― 3 社に2 社が年商10 億円未満、福島では9 割が同レンジに該当
年商規模別にみると、「年商1 億円以上10 億円未満」が1,186 社(構成比52.5%)で最多。「年商1億円未満」の322 社(同14.3%)と合わせて、原発関連企業の3 社に2 社が年商10 億円未満の中・小規模企業となっている。
全体の約67%を占める年商10 億円未満の企業数を、原発の立地する都道府県別に見ると、「茨城県」が最多の157 社。原発関連企業のうち同レンジの企業が占める割合で見ると、「福島県」の87.5%(105社)が最も割合が大きく、9 割近くが中・小規模の企業となっている。この105 社には合計1,778 人の従業員がおり、福島第一・第二原発が廃炉や閉鎖となっていけばこれらの企業、従業員に大きな影響が出ることが予想される。(原子力関連施設の所在地も併せた表は5 頁に記載)
また、年商規模が1000 億円以上となる大規模企業が多いことも特徴的で、同レンジには80 社(構成比3.5%)が該当している。主な原発関連の大手企業(1頁の表を参照)には日本を代表する有名企業が名を
連ねており、次頁で取り上げる主要取引先の分析でも上位を占めるなど、関東を中心とした大企業が業
界を強く牽引し、原発の立地する地域の中・小規模企業が下支えするといった産業構造が見て取れる。

3. 業種別 ― 機械器具設置工事業、一般電気工事業といった設備保守関連が目立つ
業種別にみると、大分類ではプラントや発電機、部材などを製造する「製造業」が778社(構成比34.5%)で最多。次いで施設建設や保守などの「建設業」の636 社(同28.2%)となった。また、検査業やシステム
管理といった「サービス業」が442 社(同19.6%)と続いた。より細かい業種分類でみると、計測機器類などの設置工事・保守を行う「機械器具設置工事業」が122 社(構成比5.4%)で最多。以下、電気設備工事を請け負う「一般電気工事業」が110 社(同4.9%)、管理システムなどを開発する「ソフト受託開発」が75 社(同3.3%)、特殊部品などを製造する「機械同部品製造修理業」60 社(同2.7%)と続き、設備保守の部門で原発に関わる企業が多いことがわかった。

4. 販売先分析 ― 原発関連企業の1 割は三菱重工業が主要販売先
原発関連企業の主要販売先(各社5 社まで回答)を分析すると、関西電力や九州電力などの採用している
PWR(加圧水型原子炉)の製造元である「三菱重工業」が215 社(構成比9.5%)でトップ。次いで、東京電力や東北電力の採用しているBWR(沸騰水型原子炉)を製造する「東芝」、「日立製作所」がそれぞれ150 社(同6.6%)、146 社(同6.5%)と、トップ3 にはプラント系の企業が並んだ。

電力会社では、「東京電力」が128 社(構成比5.7%)、「関西電力」が101 社(同4.5%)。とくに東電を主要販売先とする128 社は、今回の福島第一・第二原発の事故を受けて直接的に大きな影響が出ると考えられる。その他「日本原子力研究開発」が90 社(同4.0%)、原発38 基の施工実績がある鹿島建設が78 社(同3.5%)となっている。

5. まとめ福島第一・第二原発の事故・停止と政府要請による浜岡原発の稼働停止、また活発化する全国
的な反原発の動きのなかで、日本の原発関連企業は大きな岐路を迎えている。5 月末には原発関連の管工事を手がける千葉県内の企業が、発電所内での受注見込み工事がキャンセルされた影響で倒産(破産開始決定)となるなど、経営に深刻なダメージを受けるケースも出始めている。
一方、佐賀県の玄海原子力発電所など、夏場の消費電力増加によって現在検査停止中の原発を急遽再稼働させるような動きも見られ、原発関連企業を取り巻く環境は依然混沌としている。なかでも、全体の3 分の2 を占める年商10 億円未満の中・小規模企業は、今後の原発を巡る世論や夏場の電力事情のほか、東電をはじめとする電力会社、原発事業を牽引する大手企業の動向など不確定な要素に大きく左右されることは間違いない。すでに確認できているだけでも、原発関連企業全体では100 社近く、年商10 億円未満の企業でも50 社程で震災および原発事故の影響が判明しており、各社の苦しい業況が伺える。今後、脱原発の動きが加速していくようだと、関連企業の大多数を占める比較的経営体力に乏しいこうした企業は、さらに厳しい経営局面を迎えることになりそうだ。

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p110607.pdf