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風力エネルギー、地下の火山岩に貯蔵 (National Geographic)にわかに信じがたいが、風力をそのまま閉じ込めるらしい。米国はすごい!

2013-07-06 20:26:20

アメリカ、ワシントン州バンテージで雲上に顔を出す風力タービン。太平洋岸北西部の再生可能エネルギー・ブームの一翼を担っている。気象に左右される余剰風力を管理するため、アメリカの科学者チームは、地下の多孔質の火山岩層に圧縮空気を貯蔵する手法を提案している。
アメリカ、ワシントン州バンテージで雲上に顔を出す風力タービン。太平洋岸北西部の再生可能エネルギー・ブームの一翼を担っている。気象に左右される余剰風力を管理するため、アメリカの科学者チームは、地下の多孔質の火山岩層に圧縮空気を貯蔵する手法を提案している。
アメリカ、ワシントン州バンテージで雲上に顔を出す風力タービン。太平洋岸北西部の再生可能エネルギー・ブームの一翼を担っている。気象に左右される余剰風力を管理するため、アメリカの科学者チームは、地下の多孔質の火山岩層に圧縮空気を貯蔵する手法を提案している。


春から初夏にかけて強風が吹くアメリカ太平洋岸北西部では、同時に川の水量も増えて、豊かな再生可能エネルギー源に恵まれている。しかしここ数年は、かえって供給過剰になっており、電力網の需要の増減と発電量のバランスをとるため、米国エネルギー省ボンネビル電力庁(BPA)は風力発電所のオーナーに出力を抑えるよう依頼している。

現在、この地域の季節的な変動に対する新しい解決策が検討されている。BPAとパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)の科学者チームの最近の調査によると、地下深くにある多孔質の岩石に断続的な風力を貯蔵、必要なときに再生可能エネルギーとして利用する方法があるという。

◆空気を圧縮して地下に貯蔵

研究チームは、ワシントン州東部の地下にある玄武岩層に注目し、「圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)」というシステムの実現可能性を調べた。石油探査で得られた地質学データを分析し、玄武岩などの火山岩層に毎月8万5000世帯分の電力供給に十分なエネルギーを貯蔵できる場所を2カ所特定した。

「地下水面よりはるか下に空気を貯蔵する。化石燃料が見つかるような深い場所だ」。非営利研究機関「米電力中央研究所(EPRI)」のエネルギー貯蔵プログラム責任者、ハレシュ・カマス(Haresh Kamath)氏は説明する。「天然ガスなどの資源も、同じような岩石層の高圧力下で何百万年も眠っている。地上ではだれも気づかないがね」。CAESプラントでは、余分な風力エネルギーを使って、地下の貯蔵槽に圧縮空気を送り込み、保管しておける。気温が上昇する夏の午後など需要の高い時期には、空気を取り出して加熱し、タービンを回して発電するという。

◆現代の“アイオロス”となるか

CAESは1978年にドイツ、1991年にアラバマ州で導入され、既に20年ほど商業規模で利用されている。しかし、どちらのプロジェクトも、溶解採鉱法で岩塩を取り除いたタンクのような空洞に空気を貯蔵している。これに対し、アメリカ北西部で検討中の手法では、多孔質で浸透性の高い、自然のままの火山岩層に空気を貯蔵する。似たようなアイデアは古代にもあった。ギリシャ神話では、神が激しい風を山の空洞に閉じ込めて、アイオロスという名の看守に監視させる。アイオロスは地面に剣を突き刺して、強風を解き放つ。

ギリシャの半神に力を借りることはできないが、現代の一般的なCAESプラントでは、地上に噴き出た空気を天然ガスで加熱、体積や速度を増加させてタービンを回す。一方、ワシントン州のヤキマ渓谷の候補地では、地熱エネルギーを取り入れた新しいタイプのプラントが設計されている。地熱エネルギーで空気を加熱するとともに、冷却装置の電源としても利用している。地下へ空気を送り込むエア・コンプレッサー(空気圧縮機)は冷却する必要があるが、その際の効率性を高めるというアイデアだ。オレゴン州ボードマンのすぐ北にあるもう1つの候補地は、コロンビア川に近く、天然ガスのパイプラインにも近いので、従来の手法が適しているという。

2つのプラントでは、エネルギー貯蔵モードと発電モードの切り替えが数分以内で済むという。この地域の、豊富だが“ムラ”のある風力を効率的に利用できるようになる。「発電事業者にとっては安心だ」とEPRIのカマス氏。地域の電力供給のうち13%(約8600メガワット)が風力発電で、原子力発電所8カ所分の出力に相当する。晩春には雪解け水で川の水量が増え、水力発電が増加。同じ時期に風も強まる傾向にある。

一方、アメリカ北西部を候補地に選んだ理由は、その地下部分にもある。ワシントン州、オレゴン州には、「コロンビア川台地」と呼ばれる鉤爪形の広大な溶岩平原が広がっており、大部分が1700万~1500万年前の火山噴火で噴き出た大量の玄武岩で覆われている。CAESプラントの最適地というわけだ。

 

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20130705002