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太陽光発電コスト 今後10年で半減、2020年には石油火力と同水準 (スマート・ジャパン)

2014-03-13 15:25:47

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日本で最も導入しやすい再生可能エネルギーは太陽光である。発電システムの単価が下がり続けて、全国各地で導入量が拡大している。2020年には電力1kWhあたりのコストが石油火力と同等の14円まで下がる見通しだ。太陽電池の性能向上に大きな期待がかかる。[石田雅也,スマートジャパン]


 

国内の太陽光発電は2009年に「余剰電力買取制度」が始まってから、導入量が右肩上がりで伸びてきた。2012年度末で累計700万kW近い規模にまで拡大している(図1)。発電能力だけで単純に比較すると、大型の原子力発電設備の約7基分に相当する。


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図1 太陽光発電の導入量と増加率。出典:NEDO(IEAの資料をもとに作成)



 さらに2013年度に入って「固定価格買取制度」(2012年7月開始)による導入量が一挙に増えて、2012年度の3倍以上のペースで伸びている。太陽光発電の市場が急速に広がるのに合わせて、発電システムの価格も安くなってきた。

 

 

2030年には「基幹電源並み」の7円に


 

住宅用の太陽光発電システムの価格は、2011年10~12月の時点では出力1kWあたり平均50万円を超えていた。それが1年半後の2013年4~6月には43万円まで下がった(図2)。資源エネルギー庁による直近のデータでは2013年10~12月に41万円になっていて、当面は年率1割のペースで低下していくだろう。


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図2 住宅用の太陽光発電システムの単価。出典:NEDO(資源エネルギー庁の資料をもとに作成)



 それでも太陽光の発電コストは再生可能エネルギーの中で最も高い。現在のところ風力や地熱の2倍以上で、火力と比べると3倍以上になる。今後も太陽光発電の導入量を伸ばしていくために、発電コストを10年間で2分の1の水準に引き下げることが国の目標になっている。

 

発電量が多いメガソーラーを例にとると、2012年の時点で電力1kWhあたりの発電コストは27円だった。これを2020年までに業務用の電気料金に匹敵する14円まで半減させる。さらに2030年に7円まで下げることができれば、現在の基幹電源である火力発電の平均コストと同等のレベルになる(図3)。

 

 


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図3 メガソーラーの発電コストの低減シナリオ。出典:NEDO




米国から10年以上も遅れている


 

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2009年に発表した「太陽光発電ロードマップPV2030+」には、2030年の発電コストを7円まで引き下げるための課題と対策がまとめられている(図4)。

 


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図4 2030年に向けた「太陽光発電ロードマップPV2030+」。出典:NEDO



 太陽電池のエネルギー変換効率を現在の2倍以上の40%まで高める一方、生産プロセスの改善やリサイクルの拡大などを通じてコストの低減を進めていく。それを先導するのがNEDOの「革新的太陽光発電技術研究開発プロジェクト」で、2008~2014年度の7年計画で高効率の太陽電池を開発中だ。

 

このプロジェクトを通じて、シャープが世界最高水準の変換効率37.9%に達する太陽電池の開発に成功している(図5)。現在のところ研究レベルだが、ほかのメーカーを含めて2030年までに変換効率が40%を超える太陽電池を実用化することは決して難しくない。

 


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図5 エネルギー変換効率37.9%の太陽電池セル。出典:シャープ



 海外に目を向けると、太陽光発電の年間導入量が日本の約2倍ある米国では、発電コストが日本の2分の1の水準まで下がっている(図6)。米国エネルギー省が2014年2月に発表した最新のデータによると、1kWhあたりの発電コストが11セント(約11円)になった。さらに2020年には6セント(約6円)まで引き下げる計画が進んでいて、このままでは日本は米国から10年以上も遅れてしまう。

 


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図6 太陽光発電コストの比較。出典:NEDO(IEAなどの資料をもとに作成)



 米国の中でもメキシコに近い南部では年間の日射量が日本と比べて30~40%ほど多く、その点が発電コストの差につながっている。国土の広さも違うが、それでも太陽光発電のコストを米国の2倍以内に抑えることは十分に可能だろう。まずは2020年までに14円の目標を必ず達成しなくてはならない。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1403/13/news015.html